その2
私の名前は生田 花蓮 県立I高校に通うしがない女子高生、最近の悩みは英語と私の部活の先輩。
そしてこれは私とその先輩の話。
ここは県立I高校、一番新しい校舎の三階にある化学講義室、広さは普通教室の1.5倍、プロジェクターのスクリーンは巻き取る機構が故障中、冷暖房は実装前、夏は暑く、冬は寒い、しかもドアの鍵は開け難い、化学の先生曰く、開けるのには真心が必要なんだ!なんて言っているが、ただ単純に壊れているしか思えない。
そんな教室なので、この教室を使う授業はそうそうない、専ら化学か物理の先生の教材の倉庫になっているか、少人数授業しか使わないので私は殆ど使ったことがなかった。
そんな事情からこの教室は私にとってある一種の好奇心の対象にもなっていた。
そして、今日も先輩の独特な歩調の足音が聞こえて来た。
「今日はなんでこんなところの使用許可を取ったんだ…」
と言って先輩はドアを開ける
『おそいですよ、先輩!』
「いや、だから、俺が遅いんじゃなくて、花蓮が早いんだよ…」
『今日は特別に遅れたことも許してあげます!』
「なんで俺が悪者になってるんだ…」
『私より遅いなんてダメですよ!寛大な私の心に感謝して下さいね!』
「なんか、本当に悪者になったな俺…一体どう言う理論なんだ…」
『それは簡単ですよ、先輩は男である、男は私に感謝する、故に先輩は私に感謝する!って理論ですよ!』
「唐突に意味の分からない三段論法を入れるな!せめてもっとマシにしろ!ってか、なんだ、その理論は!」
『いやいや、先輩、そんな褒めなくても…』
「褒めてない!」
『またまたぁ』
「今日も花蓮は暴走してるね、文学創造部としては良い事なのかもしれないけど、で、今日はなんでこんなところで部活をやろうと思ったのかい?」
『先輩……まだ気付かないんですか……?』
「いや、この時点で気づけたら恐ろしいわ、」
『実は…………』
「実は?」
『特に理由はないです。』
「お前なぁ……」
『先輩!待って下さい、待って下さいよ』
「全く、バカバカしいな、わざわざこんなところの使用許可を取って理由がないってなぁ…」
『いやいや、厳密に言えば理由はあるんですよ!』
「なら、そっちを言え!」
『待って下さい、怒らないで下さい。怒ったら先輩の魅力が3/1倍になっちゃいますよ!』
「ちょっとまて、減ったのかと思ったら増えてないか?3/1は3倍だぞ、大丈夫か?」
『バレましたか、てへっ』
「てへっ、じゃない!」
「やっぱり、なんか今日はデジャブを感じるな…だけど、なんでここで部活をやるんだ?」
『ふっふっふ、見て驚かないで下さいよ』
そう言って右指を鳴らす、するといきなり部屋の電気がきえた。
そして、自前ノートパソコンをバックから取り出すと起動する。
『先輩の為に用意しました』
『その名も猫のサラウンドシステム!』
するといきなり部屋の至る所に置いてあったタブレット端末から猫の鳴き声が聞こえてくる。
しかも、大半が子猫の鳴き声。
『どうです、猫好きの先輩には堪りませんよね!』
『いや…うーん、なんだろ、これだけ?』
『やはり、前回の部活で先輩の好きな動物は猫だと調べあげた上で猫の鳴き声を40台からなるタブレット端末から流す、しかも一台一台違う猫の鳴き声!………これぞパーフェクト!』
「俺の話聞いてないし…絶対技術の無駄遣い…しかもなんか、人が猫の鳴き声の真似してる感じの声も混じってるし…」
『にゃー』
「花蓮、お前か!しかもまたダンボール」
『先輩、私を拾ってくれませんか?』
「なんか、デジャブだな…だが、しかし答えは変わらん、却下だ!」
『先輩…いいんですか? こんなチャンスありませんよ』
「何回も同じ台詞言ってるような奴から言われても実感がないな…」
『酷いです、先輩……私、帰っちゃいますよ…』
すると、その時帰宅を示すチャイムが鳴り響く、
「結局、今日はなんでここに呼ばれたんだ…」
『細かいことは気にしちゃダメですよ!』
「じゃあ、今日は文学創造部としての活動はなんだったんだ…」
『先輩…いいですか、この世の中には知っていていい事と知らなくていい事があるんですよ!』
「やっぱり、なんか今日はデジャブを感じるな…」
『それより、今日も楽しかったですね、先輩!』
『っていう小説はどうでしょう、先輩』
「また、全部前振りだったのか…」
『いいじゃないですか、なんて言ったって文学「創造」部ですから、創造を無くしたら…』
「ただの文学部だからな」
『先輩、なんで私の言いたいことがわかったんですか?もしかして:運命ってやつですか?』
「昨日も言ってただろ、勝手に運命にするな!」
『またまたぁ、私は先輩と運命、感じましたよ』
「そんな運命なんか要らないわ」
『それより、今日ももう時間ですね』
「また例の2000字か、あれは一体なんなんだ…」
『だから、あれは作者の精神力と語彙力の限界の数字なんですよ…』
『それで、先輩、私と運命感じませんか?』
「…却下だ」
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