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ポニーテールは笑わない。  作者: 藤和春幹
第一章
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第3話 NOT堀内

 私は今朝委員長に言われた通り図書委員会に赴くことにした。場所は二階にある図書室。


 鞄を肩に掛け、教室を出た私はまっすぐ下の階に向かった。間違いは無い。場所も把握しているし、時間も余裕で間に合う。問題なし。


「……ねえ」


 私は後ろを振り向いてそう声を出した。


「ん?」


「なんであんたがここにいるの」


 廊下を歩く私の後ろには、安達奈々の姿があった。


「堀内さんに言われたんだ。私、なんか図書委員になったらしくて」


 堀内。そう聞いて真っ先に思い浮かんだのはプロ野球OBの堀内投手だったが、すぐに頭から消し去る。


 堀内投手にNOT記号を付け、再検索をかけてみる。ヒットはゼロだった。


「堀内って誰」


「え? えっと……クラス委員長の人だけど」


「ああ」


 彼女か。そういえば、そんな名前だった気もする。


「私、転校生だから役員決めに参加してないでしょ? でも何もやらないのは不公平だから、一人しかいない図書委員に加わってくれって言われたんだ。相方はあっちゃんだし、良いかなって」


「あっちゃん言うな」


 大体の事情は理解した。なので、必要最低限の突っ込みだけを返す。


「はあ……」


「どうしたの?」


「なんでもないわよ。別に」


 図書室に着いた。中に入り、本に囲まれたテーブルの一つに腰かけた。彼女は当然のように隣に座ってくる。


 時計を見ると、まだ委員会開始までは時間があった。


 暇潰しに、立ち上がって本棚を適当に見歩く。彼女も、物珍しそうに本を物色していた。


 私は一冊の本を手に取り、その場でパラパラとページをめくってみる。すると、彼女が正面から覗き込んできた。


「何読んでるの?」


 別に読んではない。


 だが、いちいち言うのも面倒なので、とりあえずカバーを見せてタイトルを教えてやる。ちなみに、カバーには『クローザーの野球観(著:上野智美)』と書いてある。


「ふーん」


 上野智美は、今日本で最も有名な女性プロ野球選手の一人だ。


 すでに現役十五年を迎えていて、高卒でプロ入りして、現在でも先発から抑え投手にコンバートして活躍し続けている。


「この選手、好き?」


「同じ女性投手として尊敬はしてる」


「私も好きなんだ。この人」


 流し読みしているうちに時間が来て、図書委員会が始まった。特筆すべきことはなく、十五分程度で会はお開きになった。



 午後の授業が終わり、私は鞄を持って急いで教室を出た。当然、行く場所はグラウンドだ。


「あ、待って」


 彼女も同じようにエナメルバッグを肩に掛けて私についてきた。


「部活に出るんだよね?」


「まあね」


 私は振り返らずに答えた。


「私もついてく」


「入部届け出したの?」


「見学。一応見とかないと」


「別に見る所なんてないと思うけどね」


 所詮公立高校の野球部だ。名門校のように良い設備があるわけでもなく、良い選手が集まるわけでもない。


 普通のグラウンドで練習し、並の部員が集まっているだけの野球部だ。


「でも、あっちゃんのピッチングは見てみたいよ」


「あっそ。あと、あっちゃん言うな」


 下駄箱に着く。靴を履き替え、グラウンドに向かった。


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