第六話 修行 Lv.3 ~呪文と時空~
二ヶ月ぶりの更新です。
今回はそこそこ長い(でもまだ短い)ので、楽しんでいただけると幸いです。
メルさんと出会ってから数分。どうやらこの木造のレトロな家ががメルさんの住処らしい。
「さぁ、中に入るんだ」
そうメルさんに促され、俺はその家に足を踏み入れた。
歩けばギシギシと音がなり、所々に穴が開いている。隙間風がこの暑い日には心地よい。窓は大きく、とても住みやすそうな家だ。
「遅くなったが名を名乗ろう」
そう言うメルさんに対し、俺はあることを確認した。
「自己紹介……ですか?あなたはメルさんじゃ……?」
「いや、さっきの名は省略形だ。俺の本名はシャローリンス・リパ・ザ・メルス・リヴだ。名前が長いからメルと名乗っている」
なるほど。二回目の自己紹介の訳が分かった。その後に、メルさんはこう付け足した。
「“この時空”ではアメガに次いで強いと思う。お前はアメガから基礎知識は教えてもらったな?」
基礎知識……か。どこまでが基礎知識なんだろうかとぼんやり思いながら、俺は「はい」と答えた。
「そうか。ならば“呪文”は唱えれるな?」
呪文?もちろん俺はアメガさんからそんなことは教えてもらっていない。教えてもらったのは魔法の使い方だけだ。
「その反応ならまだ呪文は知らないか。そりゃ当然だ。呪文は“この時空”では俺しか使えないからな」
やっぱりある単語が頭に引っかかる。なぜメルさんは繰り返しその単語を口に出すのか。その単語を繰り返し口に出すということは、この俺が生きている“時空”の他に、別の時空があるということだ。その仮説が正しいのか迷った俺はメルさんに問うことにした。
「この時空ってどういうことですか?」
そうすると、驚くべき回答が帰ってきた。
「じゃあ先にそっちを説明しよう。実は……この世界は3つに別れている。ひとつはお前が少し前までいた人間界。いわゆる現実世界だ。そしてお前が今いるのが光界。それと最後のひとつが闇界だ。光界と闇界はリンクしていて、互いにいわゆるパラレルワールドになっている。」
ここまで聞いてもまだ回答が出てこない。おそらく、この世界はとてもややこしいのだろう。
「そして別の時空と言うのは?」
「実は光界と闇界は複数の時空からできている。お前が今いるのが光序時空。そしてそのパラレルワールド、闇界側の時空が闇終時空だ。こちら側の光序時空が“全ての始まり”なのに対して、闇終時空は“全ての終わり”だ。そしてこれ以外に光第一別時空だったり闇第百三十別時空真だったりがある」
あまりにも話が突飛しすぎて、もうついていけないが、要は俺が今いるこの時空の他に、たくさん別時空が存在することなのだろう。
「おっと、話が脱線したな。セイイチは呪文は知らないんだな?」
メルさんは話を元に戻して俺にそう問いかけた。
「はい。なのでその呪文と言うのを教えていただきたいんですが……」
俺がそう聞くと、メルさんは
「じゃあまずお前がどれだけの魔法を使えるのかを調べたい。いいか?」
と答えた。もちろん、それを拒否する必要もないから、俺は
「はい。もちろんです」
と頷いた。