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魔女との決戦2

「もらった!」


 ダガーで俺は魔女の両肩を突き刺し、その瞬間魔術師の魔法を特殊な弾丸に詰め込み放つ事の出来る、血の色より魅惑な色をかもち出す深紅の銃・スペルガンをホルスターから引き抜き、魔女の腹に突きつけた――。


「――俺の怨みの全てをくらい、派手に散れ!」


「……!」


 瞬間、俺の超直感が何かがおかしい事を告げていた。腹に突きつけたスペルガンの感触がおかしい……。すると、ニタァという笑みを浮かべる魔女は新聞紙になり消えた。


「新聞紙の……分身?」


「そう、新聞分身よん♪ どーれが本体でしょうね?」


 ブワァ……と目の前には無数の魔女が存在した! それは俺の周囲を取り囲むように存在している。しかし、冷静に対処すれば問題は無い。


「黙れ魔女」


 勇者の能力の一つ、超直感が俺に魔女の本体を教えてくれる。ダブルハンドガンに切り替え、俺は本体であろう魔女を射撃し続けた。だが、無数のビーム魔法を俺は浴びた。


「ぐっ! くはっ!」


「扱い辛いけど、ビーム魔法は便利ね。魔力を弾丸に出来ないなら、ビームとして放てばいい」


「俺の世界で見たビームの映像を魔力に変換して放ってやがるのか。クソがー!」


「あれれー? カッコつけてるけど当たらないわねコウハイ君?」


「くそっ!」


 完全に本体を狙撃してるにも関わらず魔女は新聞紙になり消える。超直感で本体が特定出来るのに何故か魔女の本体に攻撃出来ない……。


(感覚的にあれが本体だったはず……。いや、確信が必要だ。ここまで超直感が外れるなら奴には何かトラップがあるんだ。……超直感よ、真実を教えてくれ!)


「よーく感じてみなさいな。私の存在を」


 瞳を閉じる俺は無数に存在する魔女のステッキ攻撃をかすりつつも流水の動きで回避しつつ超直感を意識的に解放し、その感覚を知る事に集中した。すると、全ての答えは解けた。


「!? まさか……」


「わかった? ならセンパイと答え合わせね。答えをどーぞ!」


「新聞分身は分身を目まぐるしく本体が移動するから、敵に本体だと思わせておいて攻撃させた隙を突く事が出来る。それが答えだ」


「正解正解ー♪ おめでとう! コウハイ君! 今夜はセンパイとパーティーね♪」


「お前が死んだらな。そして俺にはお前の本体を見抜く力がある」


「むむむ? まさか、まさか魔王の力?」


「そんだ。魔王の力である魔眼なら新聞分身のどれに本体がいるかわかる!」


 左目の魔眼を展開した俺は、大魔法が詰まる深紅の銃・スペルガンを引き抜いた。


「くらえ魔女!」


 この弾丸は炎系最強魔法・マグマドラグーン。

 ブフォオオオオ! と魔王がマグマの塊のような灼熱の炎竜が放たれた!

 赤き竜が全てをその高温で溶かすように城の内部を溶かす。

 そして衝撃波が城全体に響き渡る。

 その赤い竜は壁を突き破り、闇夜を駆けた。

 フゥ……と息を吐く俺は、視線を目の前の人物に向けて言う。


「……もう再生してやがるか。流石は魔女」


 何と、魔女はすでに傷が完治し無傷で微笑んでいた。

 ……見た目だけはいい女だ。

 魔女だけど。


「マグマドラグーン……いい魔法だけど、魔女には通用しないわよん♪」


「大魔法クラスの魔法を入れた弾丸のスペルガンで消すのは無理か。でも、俺には勇者と魔王の力がある!」


「そう、それよ。それを見せなさいな」


「お前が俺を勇者にした本当の理由は何だ? どうにもお前の言動はおかしな事だらけでよくわからん」


「それは死の商人テンパに勝つ為よ」


「何故テンパの話になる? あの金髪巻き髪女はこの異世界で俺を助けてくれた援助者だ。武器で商いをしているだけで、悪ではないだろ」


「あの女の目的は不老不死を手にする事。私はソレを防ぐ為に、魔王になる因子を持った他世界のコウハイ君を勇者の因子を無理矢理ねじ込み今までの歴史に無い新たな存在・勇者魔王を生み出した……これならあの別名、千年を生きた怪異、千年伯爵と呼ばれる死の商人テンパに勝てるはず」


 いつの間にか、魔女は目の前にいた。

 俺達は瞬時にとっ組み合いになる。


「勇者の力は勇者を殺した者が勇者烙印を受け取り直接引き継ぐ。自然死の場合は数多の世界の誰かに宿るけどね」


「それを、お前はこの俺に押し付けたのか。定められた掟を破ってまで……勇者と魔王の力を宿した者がどういう存在になるかもわからないのに……その人間の苦しみも……」


「キミが勇者と魔王の力を使いこなし、新しい存在として覚醒したなら私はキミの欲の全てを受け入れてあげるわ。ただの奴隷でも性奴隷でもキミの望む存在になるわ……だから、覚醒しないな」


 コイツ……何を言ってやがる?

 と思ってると不意にキスされた。

 あまりにも柔らかい唇に、俺の全身がかつてない感覚で震え上がる。


(これが……女の唇……)


 恥じらいと驚きのあまり、俺は魔女を手放してしまう。

 動揺を隠せないまま俺は、


「まさか……キスをするとはな。そんな手でこの状況から逃げるとは思わなかった」


「キミの覚醒を望んでるのよ。私を殺す切り札があるんでしょ? 使ってみなよ」


 魔女から俺の切り札を望むとはな……。

 相変わらずよくわからん女だ。


「最後に一つ確認するわ。コウハイ君が完全な魔王の力を持っているのは、つまりコウハイ君がこの世界にいる残りの魔王を殺したからね」


「あぁ、残りの魔王はお前の姉だったようだがな。あの女から魔王の魔手の残りのエネルギーを吸収してから殺してやったさ……」


「そう、それは良かった」


「良かっただと? 悲しみの無い魔女は他人の死は喜びだとでも言うのか?」


「苦しみから解放されて良かったって事よ。誰もかれもが支配者の力を持ちたいわけじゃないわけじゃないわ」


「……そうか。俺はお前の姉を個人的な理由で利用し、殺した。お前とは共闘は出来ても仲間にはなれないだろう」


「元々魔女は呪いと死の運命の中で生きてるわ。魔女の力を欲する誰かの大きな欲望に巻き込まれて死ぬ。貴方が元の世界に戻るには、魔女の力が必要。私の死の運命を貴方に託すわ。そうすれば、新しい魔女として呪われた運命さえ断ち切る大魔法を生み出せるかも知れないからね」


「姉の復讐は直接せず、俺を利用するか。姉に似てるな」


「復讐なんてしてもしょうがないわ。言った通り、魔女の死は一つの運命の中に組み込まれてる。そして、姉さんは魔女としては私に敵わず、落ちぶれた魔女になれない力で魔王になるしかなかった。彼女はすでに終わってたのよ」


 この会話中に、次の一手を考えないとならん。

 もう体力的にも魔力的にも切り札を使う必要がある。

 そう、戦いはクライマックスだぜ!


(死の商人テンパからもらったスペルガンの弾丸……。さっきのは最後の一発だった。スペルガンの弾切れの為に再装填は不可能だ。スペルガンの弾は大魔法を大魔術師が直接注入するから魔法をロクに使えない俺には生成する事は出来ない)


「魔王の呪いから解放されるには、死しか希望は無いって事よ。次の魔王の因子があるキミは先代の望みを叶えて、完全な魔王になれたのよ。そして、私のおかげで勇者にもなれたけどね」


「……お前、まさか姉を助ける為に……」


「雑談は終わりよん。スペルガンは私には効かない事がわかったでしょ?どうやら、私の思った通りの勇者にはなれなかったようね」


「お前の望みなんか知らん。俺は、俺の目的はキッチリ果たさせてもらうぜ」


 空の弾丸のままのスペルガンを構えた。

 それに気付く魔女は、


「スペルガンは正統な魔術師しか魔力注入は出来ないわよ。それも魔法少女レベルの人間か大魔導士じゃないと。そして、ここにはソレはいない」


「……だな。けど、勇者が魔女の前に立つ以上、策はあるさ」


「……この力は!」


 ズブォォォ!と勇者魔王の力を解放した。

 右手の勇者烙印の五亡星と、左手の魔王の魔手が互いを喰い合うように宿主の俺を刺激する。この古城全体が振動し、魔力の高まりに耐え切れない空間がガラスがヒビ割れたように共鳴し出す。高まり続ける俺の力の凄まじさを魔女は感じている。白と黒の魔力の粒子が身体全体から発生し、瞳を閉じる俺はこの異世界に来た三ヶ月間の思いを全てこの一撃に賭けた!


「魔力を糧にして不死身を得る魔女を殺す魔女殺しには魔力が必要。ならば魔女はスペルガンで殺す事が可能。スペルガンの魔力の中に自分の魔力を加え、魔女の魔力を侵食し内部から殺す。それがこの勇者魔王の力を全て解放した、俺の命の半分を組み込んだ奇跡の弾丸――」


 カッ! と閉じた瞳を見開き、開放した魔力の全てと命の半分をスペルガンに注ぎ込む。

 驚きと狂気の顔の魔女は口を開けたまま動けない。

 バサッ! と俺の背中に天使とも悪魔とも言い難い白と黒の翼が生え、縦横無尽に羽ばたいた――。


「ブレイブ・ルシフェルーーーーー!!!」


 光と闇の極限の光が闇夜を貫き、闇の空を真昼のように照らし出した!

 この凄まじい衝撃で、古城は半壊する。

 スペルガンを撃ったままの状態で俺は、羽ばたく白と黒の羽と共に宙を舞う。

 そしてスッ……と着地すると共に、その羽は消えた。

 全ての戦いが終わった半壊した古城に、本当の静寂が訪れる。

 ブレイブルシフェルの一撃の光が消える夜空を見上げ、俺は呟く。


「魔女は消滅させちまったか……」


 寿命の半分を使い、全ての力が抜けた俺は地面に座り込む。

 全身の疲労が、俺を殺しそうだが勇者烙印も魔王の魔手もエネルギーを使い果たしたから勝手な動きが出来ないようだ。久しぶりに自分の身体の開放感を感じながら、大きく溜め息をついた。俺の魔女への復讐はここで終わったんだ……と。


「……魔女が消滅したのは仕方ないな。違う方法で現代に戻るすべを探すとするか。使える奴はゴミ袋のように利用してやる」


 東の空から昇る夜明けの朝日を見ながら、宿敵の魔女を始末した俺は新たなる旅立ちを誓う。


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