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魔女との決戦

 俺は魔女の痕跡をサーチレーダーで辿り、城の内部を駆ける。

 ふと、さっきから魔力の反応が無い事に疑問を感じて立ち止まる。

 この世界の時刻に合わせ魔力で生み出したデジタル腕時計で時刻を確認した。


「この城に侵入してから15分ちょいか。早く魔女にたどり着いて奴を始末……」


 デジタル腕時計の透明なガラス板を見つめている俺の瞳が違和感を感じた。明るい場所であるのにデジタル文字の文字盤が読みづらいんだ。そして、ガラス板には人間の姿が微妙に映し出されていた――。


「――真上か!」


「もう遅いぞエセ勇者!」


 頭上から二本のナイフを持った魔術師が俺の首を落とそうと落下して来ていた!

 あえて魔法を使おうとせず、魔力サーチに引っかからない状態を保ちながら、意外な所に敵が現れたな。


(俺のサーチ能力を知って、魔力を使わないで警戒してやがるのか。だが――)


 俺はその敵を無視してすでに歩き出している。


「俺はこの異世界に来てからの三カ月間、様々な戦闘を繰り返して来た。サーチ能力をかいくぐる奴なんてザラにいたさ。特にこの世界はミストジャマーという霧の天然ジャミングがあるからな。魔術師殺しと呼ばれるスペルキラーをなめるなよ」


 そう、背後の死体に振り返らずに自分のナイフで殺された魔術師に手を振りながら俺は先へ進む。頭上から奇襲をかけて来る奴にはこっちも飛んで距離を詰めれば相手もビビリって攻撃のタイミングがズレて隙が生まれる。魔術師が肉弾戦なんてやろうとするから、中途半端な事になるんだよ。さて……。


「ミラーステルスを使うか」


 周囲の景色を自分に写して進む。

 魔力消費が大きいが、今は勇者と魔王の力が覚醒してせめぎ合ってるから魔力を使わないとやってられん気分だ。


「ここはミストジャマーも多いな……利用するか」


 ミストジャマーを利用すると、通常は消せない体温なども消せる。

 敵から受けるダメージはデカくなるがな。

 その鏡の反射のような身体の色になるミラーステルスモードで俺は城の奥までたどり着く。

 そこには赤黒い重厚な大いなる扉が見えた。

 ここは一本道だ。

 時間も待っちゃくれん。

 迷ってる場合じゃない……。


(ここの先に魔女はいる……。奇襲で一気に始末したいが、この城にはまだ兵がいるかもしれん。また逃げられるかも知れないから、ここは慎重な作戦に賭けるか……)


 周囲を警戒しつつ、全身からしの気配を放ちながら一気にその扉の左横まで駆ける。

 一筋の汗がツツー……と流れ、カラカラの喉の奥に唾液を流し込む。

 跳ね上がる心臓の音を落ち着かせ、スッと赤黒い扉に手をかけた――。


「!?」


 突然、目の前の扉が開いた。

 ズズス……とその羅生門のような赤黒い重厚な扉は開いて冥界に誘うように開いて行き、俺は瞬きをせず全神経をその場所へ注ぐ。


(……)


 どうやら中の人間が開けたようだぜ。

 その中の人間とは、あの魔女以外あり得ない。

 決着の時だ魔女。

 激情を抑えないままハンドガンを先制して射撃しつつ、俺は内部へと侵入した。





 そして、俺はとうとう魔女を追い詰めた。

 夜の闇の中で笑う三日月の見つめる古城の屋上の一角に冷たい風が流れる。

 この異世界に転生してからの苦汁を舐めた三カ月の日々を思い、目の前の新聞紙の魔女へ言葉を紡ぐ。


「……異世界に魔王勇者として転生させられてからの三カ月間、俺は魔女を殺す事を目標に強くなった……ここで、俺達の関係に終止符を打つ」


「え? まだ関係は始まってないよ? キミの告白は聞いてないからね! センパイはちゃんと告白してくれないと困るよ!」


「いつまでそのセンパイ面が出来るかな?」


「どうやらこの城の魔術師は全員殺されたようね。やっぱり現代兵器は魔法よりも殺人に向いてるねオーマ君」


「黙れ魔女」


「魔女じゃなくて先輩! でしょ? それに、マントの下でコソコソシコシコと武器をいじるのやめようね。アソコをかいてるって勘違いされるよ? かいーの、かいーの、オーマイガッ!」


「散れ」


 すかさず身体を包むマントの下で再装填していたハンドガンを連射する。

 直撃してもすぐに傷口が塞がる魔女は涼しい顔で言う。


「刺客で放った魔法少女達もこの三ヶ月戻ってないけど、始末したの?」


「魔女の下位互換の魔法少女じゃ、もう俺には勝てないだろう。それだけ俺は強くなったからな」


「まぁ、刺客を放ったのは私じゃないんだけど。自惚れてると、死ぬわよ?」


「勇者魔王がそう簡単に死ぬか。この異世界での戦闘方法はもう身につけている」


「この異世界の人間に、呪い殺されるわよ。持っているスペルガンだって、呪われてる魔法銃なんだから」


「確かにな……」


 この異世界しかない希少種の秘宝魔法銃・スペルガン。

 俺はこの三ヶ月の間にとある戦いで、魔女になれなかった魔女の姉を殺害して手に入れた。

 この魔法銃は所持者の死によって他者に渡る呪われた物。


(俺は魔女の関係者に呪われてるのかもな……)


 俺はハンドガンを構えたまま動かない。

 それをじっ……と見据える魔女は、


「弾切れなの? それとも、撃ちたくないの?」


「……黙れ魔女」


「魔女じゃなくてセンパイって呼んでね!」


「ん? 何だ魔女?」


「センパイ!」


「おう、俺がセンパイか。当然だな」


「ち、違う! わたしが! センパイ!」


「わたしの? センパイ?」


「貴方が? センパイ? アレ?」


「俺様! センパイ!」


「センパイ! パイパイ!」


「このやりとりさっきしたよな。散れ」


「わかったわよコウハイ君。君の名前は確かシュユウ……?」


「オーマ」


「イガッ!」


「! 殺すぞ魔女?」


「って、もう撃ってない?」


「殺すつもりだから撃っただけだ。泣きべそをかいても俺はお前を散らす」


「悲しくても泣けない。それが魔女よ」


 そして勇者魔王と魔女の一騎打ちが始まった。




 俺はバズーカを二個マジックウェポンで生成し、ダブルバズーカを乱射する。

 凄まじい爆音が上がり、視界が砂煙で死ぬ中を飛び込む。魔王の魔眼を使い、赤い左目で左右をキョロキョロとする魔女を補足した。そのまま魔女の頭を吹き飛ばそうと背後からダブルバズーカを構えトリガーを引く。すると、両手のバズーカは魔女の新聞紙により弾丸の射出口が塞がれていた。その爆発を浴び、俺は上空に舞い上がる。


「迂闊ねコウハイ君。魔女の視力は魔力が見えるんだから。魔女の反撃開始よん♪」


「くっ! 魔眼に似た力か――」


「ニュースペーパーアロー!」


 百を越える新聞紙の矢が魔女の頭上に舞う俺に注ぐ――。

 背中のヒートソードを手にした俺はそのまま流星のように魔女に斬撃をかまそうと落下する。

 二人は同時に叫んだ。


『――あああああああああっ!』


 しかし、ニュースペーパーアローは全て光の壁によって弾かれた。

 その絶対防御の光の壁に驚きと喜びの顔をする魔女は言う。


「弾かれた!? まさか勇者の聖なる力。ライトシールド!?」


「ご名答」


 勇者の力の一つ。光の防護壁のライトシールドで魔女の攻撃を防いだ。

 体力の消費が激しいが、勇者烙印の五亡星は守りに強いんだ。

 そして、魔力余熱を熱エネルギーに変換したヒートソードで魔女の首を飛ばした。

 チャンス! と思う俺は胸のホルスターから真紅の魔法銃・スペルガンを引き抜こうとする――同時に、魔女は飛んだ自分の首を両手でキャッチしていた。俺はそのままスペルガンを放とうと構えた。引き金を引くと同じタイミングで、魔女は自分の頭と身体をくっつけた。


『……』


 辺りに静寂が満ち、血の滴る音が鳴った。

 スペルガンをホスルターにしまい、勇者烙印がある五亡星を見る俺は赤い血が流れる感触を感じつつ、


「……まさかスペルガンの引き金が引けないように新聞紙の矢で俺の右手の甲を刺していたとはな。やってくれるな魔女」


「こっちも剣を使うと思わなかったからね。驚いたよ。成長してるねコウハイ君」


「剣はカッコイイが、あくまで非常時用だ。俺は剣も魔法もロクに使えない勇者魔王だからな。それに射撃で始末した方が早いからな」


「じゃあ、ブラックマントの下に隠してある腰の剣は飾り?」


「そうだ飾りだ。接近戦は嫌いでな!」


 両手首の鉄甲からアサルトアンカーを射出する。

 すぐさま魔女は新聞紙のステッキでその二つのヘビを弾いた。

 俺はポイッ……とハンドガンを上空に投げ、あれ? という魔女の顔をよそ目に、即座に両手にサブマシンガンを持ち一斉射撃を開始する。あわわ! と魔女はひゃー! って感じで回避してやがる。


(無駄口を叩いてると奴のペースに乗せられる。ここは一気に仕掛けて切り札の一撃で奴を散らす!)


「相変わらずだねコウハイ君! じゃあコウハイ君のこの三カ月の成長をセンパイが見てあげましょう」


 涼しい顔になる魔女の殺気にゾクリ……と冷や汗が流れる。瞬きをした瞬間に、新聞紙のステッキから放たれるビーム魔法でサブマシンガンを潰され、すぐさま生成したダイナマイトを三個投げつけた。ズゴーン! という爆発が上がり、俺はそのまま魔女に組み付いてしまおうと煙の中を突っ込む。魔術師は白兵戦に弱いというのは、この三カ月間で学んだ事実だ。特に、魔力が巨大な奴なら尚更だ――。


「――散れ!魔女!」


 と、勢いに乗る俺は動きが止まる。

 魔女の奴は氷の結界の中で微笑んでいた。

 確かに絶対防御のような強力な氷結魔法でバリアを張っている――が、


「バカが」


 と言いつつまたダイナマイトを投げる。


「学習能力な無いのかなコウハイ君? 私にダイナマイトは効かないよーん♪」


「黙れ魔女」


 フッ……と笑いつつ、戦いの初めに上空に投げていたハンドガンを受け取る。そして投げたダイナマイトを撃ち抜き爆破させる。そのダイナマイトは火炎魔法を濃縮したファイアパラダイスという特殊なダイナマイトで、魔女の氷の壁は破壊された。


「あひゃー! 私のバリアがーーー!」


「黙れ魔女」


 あたふたしてるであろう魔女の声で、その場を離れていないのを知る。

 視界が死んだ中を、宿敵の相手の魔女めがけて俺は突っ込んだ!



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