美少女魔女との決着。そして、新たなる旅へ
千年を生きる千年伯爵こと死の商人テンパの不老不死計画はテンパの死亡により終結した。
残るは、俺とこの魔女の決着だけ。
つまり、この女を殺す事だ。
魔力が切れた事により真紅の魔法銃・スペルガンから通常のハンドガンに変化する銃を構える。これまでの戦いで長く美しい黒髪は泥で汚れ、白い絹のような肌は無数の傷跡がつき、豊かな二つの乳房は若い女を主張するように生き生きと存在を示している。魅惑される桜色の唇を見つめ、魔女を抱いた夜を思い出しつつ俺は言う。
「……さて、死の商人テンパは死んだ。俺からの最大最高のプレゼントだ受け取れ」
「え? 何を? 受け取る物なんてあったっけ? 愛の言葉かな? かな?」
「不死の魔女なら必ず俺が殺してやる。その約束を果たす」
言いつつハンドガンを構え、自分のマントが消滅して俺のボロボロのブラックマントを着る魔女に向けて叫ぶ!
「次はお前だ魔女!」
「!? もう弾丸も体力も魔力も無いのに何を撃つと言うの!? 命!?」
「そうだ。俺は撃たないとならないんだよ俺達の為に」
「撃つのはノーマルブレッド? スペルガンでも魔女は死なないわよ。そろそろ、今までの勇者のように私の不死の糧になって貰おうかしら。勇者の魔力は甘く蕩ける蜜のようにとても美味しいのよ……とてもねぇ……」
長い黒髪の毛先が唇に絡みつく魔女は、俺の命を欲しいようで悪魔のように嗤う。
ククク……と俺も魔王のように笑ってやる。
「ようやく正体を現したな魔女め。殺しがいがあるぜ。そういうお前だと殺すのに躊躇いすら感じない」
「私は死なない……魔女は不死だからね」
「黙れ魔女」
俺はそんな言葉も気にせずハンドガンの弾丸を撃った――空砲である弾丸を――。
虚しく銃声が響き、魔女は唖然としたまま立ち尽くしている。
「……? 本当に命でも撃ったつもり? 何も起こらないわよ?」
「さぁな。だが、これでお前が死ぬのは確実だ。俺と共に死んでもらうぞ魔女」
「だから、魔女は同じ運命に組み込まれた悪魔のような存在としか死ねないのよ。その存在であったテンパは死んだわ……だからあの女の望んだ不老不死は私が持ち続けることになるの。今まで通りね」
「お前、本当にそんな戯言をぬかしてるのか? 俺達の人生はこっからが本番だ。前にお前にくらわせ、今回テンパを始末したブレイブリュシフェルは俺の寿命の半分を込めた弾丸。お前の不死の運命は勇者魔王の因果律で打ち消してやるぜ」
「寿命の……半分? きゃあきゃあ!?」
感覚が鈍っていた魔女の神経がようやく反応しやがった。
恐ろしいほどの心臓への痛みが魔女を襲う。
ビクビク! と全身を痙攣させる魔女はヨダレを垂らし、地面を這いずっている。そして失禁までしてやがるな……いい光景だぜ。ガッ! と俺は足で地面に倒れる魔女の顔を上げた。
「寿命の半分を使うブレイブリュシフェルの意味は、お前の心臓と俺の心臓をリンクさせる事だ。これでお前に死が訪れる。テンパに俺が話した事を忘れてたのか?」
「まさか……前にブレイブリュシフェルを使った時に……」
「そう、その時にお前は俺の運命に組み込まれたんだよ。魔女」
「……」
「ブレイブリュシフェルは心臓がリンクした者通しなら、相手の心臓の寿命を使える。だからこそもう一度、ブレイブリュシフェルを使えたのさ。不死であるお前じゃなきゃ死ぬだけの一撃だからな」
「魔女の不老不死を利用するなんて……やってくれるわねコウハイ君」
「当然だ。俺は魔女をゴミ袋のように使い倒してやるんだからな。それにさっき言ったよな。お前は勇者魔王の魔力が欲しいと。そして不死の糧になって貰おう……と。つまり、お前はあるはずの不死がいつか無くなる可能性に薄々恐怖し、今まで数多の勇者や魔王を利用して来た。そう、お前は実は死にたくなんてなかったんだよ」
「……!」
いい顔をしてやがる……。
この顔の魔女を抱いたら最高に気持ちいいだろうな。
男の征服欲をくすぐる絶望的にいい顔をしてやがるぜ。
流石は俺の魔女だ。
俺は魔女の前にひざまずき、顔にかかる黒髪を払い魔女の頬に手を添えて言う。
「生物には必ず死がある。イレギュラーは勇者魔王が許さん」
「……」
「お前が死の商人に利用されてたのも所詮は道楽だろ。死の商人はこの剣と魔法の世界に新しい風を吹き込んだ。お前は新しいモノを見たかったから死の商人に使われてたんだ。そしてお前はそれを利用して自分の運命から逃れる為に、俺を今まで存在したことの無い特異点となる存在。勇者魔王にした」
「……」
どうやら魔女もお疲れのようで声も出ない。
生と死の狭間で揺れ動く俺達死がある人間より、常に生しかない魔女という生き物は絶対的な安全圏にいた為にちょっとしたキッカケですぐに壊れやがる。生きるという事に対して苦しまない魔女になったってのに、このリアクションは無いぜ。なーのーで!
「吐け! 悶えろ! 苦しめ! 今まで数多の勇者や魔王を利用し、苦しめて来た魔女を狩るのは今の勇者魔王である俺の勤めだ。俺が魔女を終わらせてやる!」
まだ俺とのリンクが激しく効いてるのか魔女は全身を痙攣させ、アヘ顏でヨダレを垂らしてやがる。オマケにさらなる失禁と来たか……まるでSMプレイだな。俺はその無防備な女のアゴを人差し指で上げた。
「感じちゃってるな魔女よ。これでお前は新しい魔女になったぞ。俺の魔女にな」
「あ、新しい魔女……? 魔女は魔女。不死の呪いから逃れられないわ……」
「そんなのは誰が決めた? これからはこの世界のルールは俺だ。俺は勇者魔王だからな。逆らうヤツは消し炭にする。今度の勇者は今までのようなお人好しのまま利用されるだけされて、全てをむしゃぼり尽くされて死ぬような優男じゃない。これからこの世界はそれを知り、身を千切られるような恐怖から初恋のような憧れ、そして神を崇めるような人の心の柱となる羨望に変わって行くんだ。魔王のようにな」
「それは正しく勇者魔王ね」
「そうだ。それが魔女が望んだ存在。勇者魔王だ」
「……そうね。そうかもしれない。私は貴方を求めていたのね……」
「新しい勇者と魔女の、始まりだ」
昇り行く朝日が、俺達の始まりを祝福しているようだ。魔女はかつてないほど穏やかな顔をしてやがる。それを直視出来ず、上り行くまぶしい朝日に目を細める俺は、
「……これでお前の不死を殺した。これからはお前は死ぬぞ。死の恐怖に怯え、生きて罪を償うという覇道を生きろ。安易な死は魔女には許されない。それが勇者や魔王を殺し続けてきた歴代の魔女の呪われた人生だ」
「貴方という勇者魔王が生んだ呪い……ね……」
魔女は今度は朝陽を見上げたそがれてる……。
泣いてやがるのか?
……時間が惜しい。
俺は旅立つとしよう。
とりあえずこの世界の賢者と出会い、最悪は倒してでも現代に戻る安全なワープゲートの事を聞かないとならんからな。俺の旅立ちを急かすように生温い一陣の風が流れ俺は髪をかきあげた。
「悪くないじゃない。新しい魔女も」
何か魔女がつぶやいたようだが、俺には聞こえなかった。そして、
「貴方の死に様を拝んであげるわよ。魔女として」
「フン、いい覚悟だ。俺達は死ぬのは一緒だ。不死を殺せないなら、俺がお前を殺す。俺が死ぬ時にな」
互いにリンクした命である限り、俺と魔女は同じ日に死ぬ。
この女の運命の全てはこの勇者魔王オーマが司るんだ。
そして、二人はテンパとの戦いにより完全崩壊する黄金都市ゴールドキングダムを見つめた。
「朝日に照らされると、この国の崩壊がよくわかるわね。経済都市で美しかったこの黄金都市も、今はただのガラクタのように朽ちてる……」
「この国の復興はお前の役目じゃないのか? 元はここの国に属する人間だろ? 少しなら手伝うぞ?」
「……やめとくわ。私は魔女として、この国の人間には好かれる事は無い。魔女は所詮、この世界の闇でしかないから。呪われた存在なのよ。だから争いを望む者にしか必要とされない」
「なら、どうする?」
「この呪われた運命を勇者魔王と共に過ごす事にするわ」
「フン、俺が呪い殺せるとでも思うのか? 魔女など使い倒して呪いじゃなく過労で殺してやるぜ」
「呪いで死なない魔女か……それは伝説になるわね。ところで一つ聞いていい?」
「ん? 何だ? まさか腹が減ったって事なら――」
「ラブラ・ブレイブリュシフェルって何?」
「ほへ?」
「ほへ? じゃないよ。何なの? ちゃんと答えて」
じっ……と俺の両目を見据える魔女は真剣だ。
この真剣な態度には、俺もそれなりの気持ちで答えないとならない。
この一秒、一秒は――俺の人生の中で一番長く感じる一秒かもしれん。
こんなに真剣な魔女の顔は、反則的にかわいいぜ……。
(……けど、今の状況で言える気持ちじゃ……くそっ――くそおおおおーーーっ!)
この問いに答えられない俺は、ただ魔女を抱きしめた。
チキンな俺を許してくれと言わんばかりだが、今の俺に勇気は無かった。
勇者なのに、こんな時には勇気が出ないもんなのか……。まぁ、俺には魔王の要素もあるからな……って、魔王なら簡単にそんな言葉が言えるのか?
(今は、この抱擁が答えだ……魔女)
少しの間、俺は魔女を強く、強く抱きしめた。魔女も俺の腰に手を回し、互いの体温を感じ合う。俺達は互いの永遠を感じていた。
と、そんなこんなで! とにもかくにも、千年伯爵・死の商人テンパは勇者魔王オーマと魔女の一撃により倒れた。
これで、魔女の利用される運命と復讐が終わり、今度は勇者魔王である俺の運命の中に組み込まれた。俺はこの美少女魔女をゴミ袋のようにこれからの冒険に利用してやるのさ!
と、完全な廃墟と化すゴールドキングダムの都市をながめながら俺と魔女は城の残骸に座っていた。体力も魔力も底をつき、もう立つのも辛い状況だ……が、魔女はいつの間にか眠りこけていた!
コイツは……流石だな。
寝顔だけはカワイイが、いつまでもこのままここにいるわけにもいかん。何せ、勇者魔王と魔女が来なければこのゴールドキングダムはこんな廃墟になる事は無かったんだからな。
「そろそろ起きろ魔女。身体がキツイのはお互い様だがそろそろズラかるぞ」
「ムニャムニャ……ニャムーい……Zzz……」
「起きろ魔女」
「ほえぁ!?」
ビヨーン! と魔女の頬を左右に伸ばした。
うーん……これはいいな。鼻の穴が広がり、目も垂れた感じになり口元はアイーンって言ってるようで面白い。痛みに耐えるMな感じでいい顔をしてやがる。ネコのように俺の手を引っ掻き、魔女は俺から離れてまた近づく。
「おはよう魔女。とりあえずおんぶしろ」
「はぁ!? やだよ! センパイだってすごーく疲れてるんだからね! プンプン!」
「何がプンプンだ。ぶりっ子してもうけねーぞ魔女」
泣きベソをかき仕方なく魔女は俺をおんぶしようとするが、とある黄色い制服を着た一団がそれを阻止した。テンパの部下の魔術師達だな。
「……今更何の用だ? テンパを散らした勇者魔王オーマへの復讐でもするのか?」
「そんな事はしない。テンパ様は素晴らしい人間だったが、人間ではなかった。我々魔術師は最後に我々を裏切ったあの方の復讐は出来ない」
「魔術師は魔を扱うクセに魔物などには寛容じゃないからな。まぁお前達らしい結論だ。で、何の用だ?」
俺と魔女もかなりの疲労だ。
これ以上戦うのはナンセンス。
魔王の魔手を使ってコイツ等の魔力を吸収すればまだ戦えるが、これ以上魔手に短期間で栄養を与えると俺自身が魔手に精神も肉体も呑み込まれそうで怖くもある。故に、ここは会話だけで終わらしたい所だが……。
と、考えているとテンパ魔術師の一人が言う。
「勇者魔王オーマ。これからこのゴールドキングダムを再興させたらお前の支配下に置くつもりか? ならば我々は……」
「は? つーか、何で俺がこのゴールドキングダムの次の支配者にならないといけないんだ? 俺は自分の世界へ帰りたい異世界から来た勇者魔王。ただの旅人だぜ?」
何かこの魔術師達は勘違いしてやがるな。
俺は自分の国とかハーレムとか猿山のテッペンにいるのが嫌いな一匹狼タイプなんだ……けどまぁ、ハーレムにはちょっと興味あるけどな。俺も男の子だし。カワイイ子好きだし……って、魔女の奴また寝こけてやがる! ここで戦闘になったらどうするって緊張感が無いようだ……なんで軽く頭をどつく。ひゃ! と魔女が辺りをキョロキョロしながら目を覚ますと、怒り心頭の魔術師達は騒ぎ出す。
「経済都市だったこのゴールドキングダムをここまで破壊して……何もしないだと?お前は勇者魔王だが魔王の要素しかないじゃないか!」
「そうだ! 貴様はこの世界の経済というものをも壊したんだぞ! 倒すならテンパ様だけにすれば良かったんだ!」
「テンパ様は貨幣制度というモノを上手く利用してこの世界を便利にしてくれた神のような人だった……それに加え、お前はただの破壊神でしかないな勇者魔王!」
……あー、ウルセー奴等だ。
マジで散らそうかな?
「……言っておくがここの都市の壊滅はテンパがやった仕業だ。そしてテンパはこの世界を力による支配をしようと暴走してたから始末した。勇者の要素はあるだろ? 奴を倒さないと、お前達も奴のエサになっていた所だったんだぜ?」
『……』
「それに、ここが経済都市ならまた立て直せるだろ。経済は生活に潤いが出て人間を活性化させるが欲をかき過ぎる奴が現れなければどうにかなるはずだぜ。まぁ、またヤバい奴が現れて俺の邪魔をするなら俺が散らすがな」
『……』
「行くぞ魔女」
「オッケー!」
そして、俺と魔女は崩壊したゴールドキャッスルの城下街から離れ、都市から近い広い草原に来た。ここの緑が豊かなのもテンパの経済都市計画の一環なんだろうな。テンパは悪だが、経済都市を作るのに多くの自然や緑を犠牲にしなかったのは褒めてやれる所だ。
少し遠くに見えるゴールドキングダムの都市を背に、俺と魔女は心地よい緑の風を感じる。
俺はさっき魔女を抱きしめた事で無性にこの魔女を抱きたくなっていた。うーん! と伸びをする魔女の白いワキが気になる。
「お前……テンパにワキを舐められてただろ? 俺にも舐めさせろ」
「え!? まぁ……ちょっとならいいよ?」
「い、いいのか?じゃ、じゃあ……」
「目をつぶってくれる? 恥ずかしいから……ね?」
わかったと言う答えは目を閉じる事で答えた。
俺は魔女のワキを自分の舌で汚してやる……。
テンパに汚された汚れは、俺の唾液で消毒する。
(……にしても、テンパはしょっぱいワキと言ってたがやけに甘いぞ? まるで蜜の味だな。魔女のワキは蜜の味……)
と、俺は子供が母親の乳に吸い付くように必死になって魔女のワキを舐め続けた。ハタから見るとかなりヤバイ光景だぜ……。うむ。
「あ、ありがとよ魔女。これでお前のテンパの汚れも消えただろ。これでお前は俺のモノだ。身も心もな。フハハハッ!」
「そだね。身も心も栄養満点ですな。フハハハッ!」
「黙れ魔女。真似すんな。それに……お前、何だそのハチミツの小瓶は?」
「ワキを舐められる前ににワキにハチミツを塗ってたのよ。しかし、案外単純に引っかかるねコウハイ君。そんなんで現代に帰れるのかしら? かしら、かしら御存知かしらぁ?」
と、テンパの口癖をしつつ魔女は微笑む。
……やってくれるじゃねーか魔女!
「てなわけで!」
「ほ……え?」
俺は魔女を地面に寝かせた。もう許さんぞ!
「ちょ!? 何するつもり!? 寝バックの体勢で変な事するの!?処女ですか!私の処女が欲しいのですか!?」
「誰がお前の処女など欲するか!行為の最中に呪われたら嫌だからな」
「じゃあ何を? この体勢の馬乗りされたら、女の子は子作り行為としか思わないよ?」
「だから違う。飛べ。飛んで次の都市まで俺を運べ。
「マジ過労死するから! だいたい飛行は新聞紙の絨毯使ってもそんな長時間出来ないし!」
「呪いで死なないだけマシだろ。行け! あの希望の太陽に向けて!」
そう俺が朝日に向かって指を射すと、何故かゴールドキャッスルの残骸から数発の花火が上がる。ボボボンッ……とまだ暗い空に散る花火の光に、俺達は見とれた。そして、魔女は俺にまた最悪の問いをして来た。
「ねぇコウハイ君? ラブラ・ブレイブリュシフェルって何?」
「お前が好きって事さ。魔女」
小声で呟いた俺は魔女の新聞紙のステッキで白いケツを叩いてやり、新聞紙の絨毯を加速させた。波乗りウェイブライダーのようで気分がいいぜ。勇者と魔女は、次の都市へ向けて威風堂々と荒野の大地を飛んだ。何故か魔女の新聞紙の絨毯はテンパとの戦いよりも早い加速で俺を次の都市へ運んで行く。
さて……勇者魔王の新たな旅の始まりだ!




