魔女のワキを舐めるテンパ
もうすぐ夜明けを迎えるラルク大陸・黄金都市ゴールドキングダム。
その地域の主である死の商人テンパの居城・ゴールドキャッスルはすでに崩壊し、ただもうすぐ太陽と入れ替わる丸い満月がそこで戦う俺達をかすかに照らしていた。
そして、俺とテンパのデスソウルパニッシャーVSデスソウルパニッシャーの対決の勝敗は――。
「……互角か。だが、ここまで力を使いきればもうエンディングだぜ。今のデスソウルパニッシャーを放った衝撃でテンパの額にある宝玉に相当ヒビが入ったからな……。これなら勝機はある!」
死霊の大砲の撃ち合いで互いの身体は大きく後方に吹き飛んでいた。
まだ気絶している魔女の寝顔だけはカワイイ顔を確認し、俺は胸と陰部を金髪の毛で覆うだけの裸のテンパを見た。自慢の美しい顔も髪も泥まみれで、見るも無残な落ち武者のようになってやがるぜ。いい光景だ。
「どうだ? 兵器が完全に魔法を上まるわけではないんだよ。それを身をもって知っただろうテンパよ」
「要は兵器と魔法は相性の問題ね。敵の能力に合わせて使い分ければいいだけよ。それをこの戦いで学ばしてもらったわ。貴方が私の命により魔女の謀略で異世界から無理矢理転生し、現代の知識を私に教え、そしてまた死にゆく敗北者としての本来なら魔王になりはずの存在。魔王オーマ」
「俺は勇者魔王オーマ。確かに俺は魔王にいずれ転生する運命の一人であったが、魔女によりお前を倒す為の得異点として勇者の烙印を押され勇者の力も得た。それで相反する力に悩ませられながらもここまでの力を手にした……貴様と魔女により仕組まれた運命は、自分の手で変えてやる。貴様を始末してな」
「魔女が勇者烙印を勝手に仕込んだ効果がこんな風に現れるとは思ってなかったわ……そこは後悔してる点ね。それにいまは戦っていても私達は相性がいいはずよ? だって私が貴方を助けた時、ゴールドキャッスルの私の寝室で泣いていた貴方はこの私の身体を求めたじゃない。幾度と無く私の身体を求め、何度もイッた貴方はあんな呪われた魔女よりも私を求めるべきだわ……私の子宮の方が気持ちいいわよ……?」
「お前に求めたのは胸だけだ。男は乳が好きなんだよ。乳がなきゃやってられねーんだ。第一に、相性がよいってのは相手が恋愛的に好きと思われがちだ。共通の好きは仲良くなるきっかけにはなる。だが! 本当に相性がよいってのは、嫌いなものが一致していたり、相手の欠点を許せる関係なのだと思う。俺と魔女はお前を倒したいという一点で相性がいいんだよ!」
「人の執念……ウンザリするわね」
チッ……と舌打ちをし、テンパは自分の顔の泥を払う。
俺も上半身裸の肌のあちこちに深い傷があり、そこに泥が入って痛くてしかたねぇ。
だが、その痛みだって俺を動かすエネルギーの一つだぜ。
「テンパよ。お前は今の魔力秘宝・宝玉を得た力で大陸戦争を仕掛け、この世界を支配するお前の目的はただの支配なのか? もう十分に金はあるしこのまま行けば経済面での支配は可能だろう?」
「パッパッパッ。これから大陸戦争を始める理由は金よ。死の商人は金が目当てなの。そして、快楽で人を殺す私は死の商人ではなく、死を貪る商人なの。死は生に一番近いもの……生は金で買えるモノなのよ……だから金がもっと必要なの。更なる千年を生きる為にねぇ……」
「更なる千年は地獄で求める事だ。勇者魔王の力は貴様の運命を終わらせる得異点。それは魔女の祈りであり、俺の希望だ」
「そう? それよりも、その胸に烙印がある以上呪われているという事。魔女の呪いね」
「?」
とうとう俺の左胸に十字の烙印が浮かんだか……。
これで魔女との運命はテンパじゃなく俺にある。
魔女を殺す約束を果たせるな。
「これは魔女の呪いじゃない。俺が魔女に撃ち込んだ呪いだ」
「へぇ……何の十字烙印だか知らないけど、魔女とリンクする呪いなんて信じられないわ。まぁ、私のこれから支配する世界にいない二人だから関係ないけどねぇ」
「これからお前は俺から得た知識で現代兵器を製造し各国に売りさばく予定だろ? ここで一つ教えといてやる。現代平気は魔法と違って熟練も詠唱も必要無い。トリガーの引き金一つで子供でも魔術師を殺せる物だ……」
「つまり、何を言いたいの?」
「お前は自国の利益と共に、他国から殺される手段を売ることになるって事さ」
「……」
ゆっくりと、やさしくテンパは微笑んだ。
この女の優しい笑みは相手が的外れな事を言った時に見せる顔。
どうやら、テンパはそんな事には動じていないようだ。
流石は千年を生きる死の商人。
逆にその金髪の悪魔は俺に問う。
「私はこれから私の魔力で管理された武器を売り、他国に戦争をさせて利益を得る。オーマちゃんの世界の武器は人間を殺すのにシンプルな答えを出しているねわ。正に、君そのものだよん♪」
「どういう意味だ?」
答えはわかってるがあえて聞いた。
「キリングマシーン。という事よ♪」
「……俺は人を殺しすぎてる。反論はしないさ。ほめ言葉として受け取ってやる。一つ言うがその武器で他国が一丸となり、お前を滅ぼすとしたら? 武器を手にすれば相手もそれを解体して更に強い武器を開発する。そうすればいくらお前でも敵わない敵が現れるはずだぜ?」
「パッパッパッ!」
「!?」
「言ったでしょう? 私の魔力管理された武器を売るのよ。反旗をひるがえす勢力が攻撃しようとしてもその武器は使い物にならない。何せ魔力管理しているからねぇ。私を殺そうと引き金を引けばそれは自分を殺す弾丸になるのよん♪」
「よく考えるものだ。死の商人よ」
「褒めても、命は助けないわよ?」
「黙れ。命乞いをするのはお前だ。外道」
俺は左手の魔王の魔手を使い魔力回復する事にした。
かすかでも魔力が回復するなら何でも利用してやる。
このまま俺を殺したい魔手が自我を持って暴れるなら、もうそれも良しだ。
全ての状況を俺が利用するだけさ……。
すると、俺の黒い歪な魔手から血管が蠢くのを見て暴走しそうだとテンパも感じ取ったようだ。
「あれま。あまり魔手に頼ると、その意思を持つ魔手が力を持ちやがてアナタから離れるわよ。アナタを殺して肉体を奪う復讐鬼になってねぇ」
「魔手は確かに自我があり、魔王として完全に自分が制御しないとまた新しい魔王の成り手の腕にくっつくようだからな。でも魔手がこのまま俺を殺す復讐鬼になられるのは勘弁だが、貴様を倒すなら俺は何でも利用してやるさ」
「いいわよオーマちゃん。この世界の狂気に染まってるわん……。でも、すでにアナタ達二人がこのゴールドキンダムエリアに侵入してから四時間以上経つわ……長期戦だと君の体力は持たないのよ。いくら強くても、まだまだ魔力についてはチェリーボーイね。オーマちゃん♪」
「俺はチェリーボーイだ……だからどうした!チェリーにはチェリーなりのプライドがあるんだよ!」
俺の激情に反応するように意思を持つ左手の魔手が暴れる!
あまりもの暴走具合に、俺は地面をのた打ち回ってしまう。
ブブブッ! と左手の魔手から黒い血が噴出し、死の激痛が俺の全身を焼くように襲う。
瞬間――額の赤い魔力秘法・宝玉を使うテンパに魔手を握られ、魔力を奪われた!
「油断大敵よオーマちゃん! 砕けかけている宝玉をこの魔王の魔手で再生させて、アナタを殺して魔女も殺す。もうエンドロールは始まってるのよ! パッパッパッ!」
ガスッ! と無慈悲に何度も何度もケリを入れられ俺は地面を転がった。
「ぐうっ……確かに……かなりこの魔手の暴走の痛みはキチーな……!?」
魔手から力を得たテンパの奴は気絶して倒れていた魔女を抱きかかえ、殺しそうな顔でまじまじと見つめていた! 欲にまみれた男が女を襲うように魔女を裸にし、その舌先で魔女の柔らかく白い肌を汚そうとした――。
「ねぇオーマちゃん。まだこの女を抱いてないのかい? この塩分たっぷりのワキの味は、下のお口も同じ味なのかなぁ? なのかなぁ? パッパッパッーーーー!」
「キキキキキキッ! 貴様ぁ!」
ベロベロベロベロ! とテンパは魔女のワキを舐めて、舐めて、舐め尽してやがる! 未だ激痛に苦しむ俺は魔手に翻弄されている。
「今度は鼻の穴をペロペロ……鼻汁もしょっぱくて最高だわぁ! アハハッ! 鼻の処女はもらったわよーーー! パッパッパッーーー!」
「ヤメロー! それは俺のモノだーーーっ!」」
体力を使い果たしてる魔女は長い黒髪を乱したまま苦しい表情のまま逃げられない。
永遠に続くようなテンパの舌先の責め苦は魔女だけじゃなく、俺の感情を燃やし尽くす!
この野郎だけは……この野郎だけは……許さん!
「勇者の力も魔王の力も尽き果て、マジックウェポンを使う魔力も無い。そして根本的に剣も魔法もロクに使えず、すでにスペルガンすら無いアナタに、一体何が出来るのかしらぁ! かしらかしらご存知かしらぁーーーー!」
「黙れ」
「次は下の二つのお口の前と後ろ、どっちを舐めようかしらぁ? 生命が生まれる蜜に溢れる前かしらぁ? それとも全身を刺激する全ての排出口の後ろかしらぁ? それとも、交互に舐めるのがいいのかしらぁ? 勇者魔王はどっちが気持ちいいかご存知かしらぁ……?」
テンパは気づいた。
俺が左手の魔手を制御して落ち着かせ、無言のままハンドガンを構えている事に。
「ほぼ魔力が切れたのに、ハンドガンだけは残ってるの? 限界ギリギリで具現化させているのか……豆鉄砲では私は倒せないわよ」
俺は無言のまま実弾を叩き込む。
しかし、テンパの額の赤い魔力秘法・宝玉に当たっただけで無傷だ。
「ほれ。豆鉄砲よんオーマちゃん」
「次はそうはいかんぞテンパ」
「……!」
ズブオッ! と白銀のハンドガンが魔力解放されて真紅の魔法銃・スペルガンになった!
「ハンドガンがスペルガンに? 魔力変形なの!?」
「ご名答」
「どこにそんな魔力が?」
「俺の魔力を使ってるなら、逆にハッキングすれば俺も使えるって事だ。現代には色々とお前の知らない事があるんだぜ? 博識ぶってんじゃねーよテンパ野郎」
「そ、そんなバカな!」
「今度は俺がお前の魔力を使ってやるさ。今まで与えた分を返してもらうぜ」
テンパは自分の魔力が減り、更なる狂気の瞳に染まる。
それは俺も同じだった。
その二人の魔力の高まりを邪魔する黒髪の女は新聞紙の剣を持ち躍動する――。
「二人で盛り上がってないで私も混ぜてよ、混ぜられるだけね」
「ま、魔女!? 意識を取り戻していたの? それに私の髪を――」
スパッ! と新聞紙の剣によりテンパの自慢の金髪が切られた!
それにより怒り狂うテンパはくらいつくように魔女に迫る――。
「じ、自慢の巻き髪がああああっ! おのれクソ魔女―――!」
「巻き髪じゃなくてただのテンパでしょ? テンパだけにねぇ? パッパッパッ!」
「人のキメ台詞を取るなぁぁぁっ! クソ魔女が――」
「――クソは貴女よテンパ」
怜悧な魔女はひらりと身を翻し、流れる黒髪の煌きと共にテンパの額の宝玉に、魔女の渾身の拳が叩き込まれた!
「魔女の力を舐めないでもらいたいわねテンパ」
ガアア……と額の崩壊寸前の宝玉を押え、テンパは苦しんでいやがるな。
ボロボロになる俺のブラックマントで魔女の裸を隠してやる。
この美しい肌は俺のモノだからな。
テンパなんぞにやらせはせん。
「もう体力も無いのに無茶しやがって……でもお前らしいぞ魔女。よくやった」
「へへっ……センパイなんだから、コウハイ君にはいいとこ見せなきゃね」
「そうだな。大センパイ!」
「!? 大センパイ!? ヒャーーーー!」
魔女は大感激した!
大センパイと呼ばれてメッチャ喜んでるな。
どこからか取り出した天晴れ! という扇子を広げ踊ってやがる。
やはり魔女は上げて、落として、おだてて使うが吉!
そして、俺達の方に禍々しい殺気を放つテンパは再び動く。
「……つくずく魔女というのは目障りねぇ。この私の求める不老不死を持ってるだけでも許せないのに、このテンパ様の自慢の髪を切り、そして拳で殴るなんて……どうかしてるわよ……クソがぁ!」
「諦めろテンパ。もうお前の負けだ。いい加減成仏しろよ」
「私の千年は諦めない千年だった。だからこそこうしてこの世界で活躍している。それはこれからも続くのよ。宝玉の力で魔女を喰らい不老不死を手に入れて、永遠にね」
「残念ながら俺にはまだ魔力がある。現代ではバッテリーってのがあるんだよ。予備のエネルギーだ。どうやら、マジックウェポンにもそれがあるようだぜ」
「それはさっきの話でしょ? もう予備バッテリーは使ったはず。残る魔力は無いわ」
「魔女も俺のパーツの一つさ」
魔女の残り少ない魔力を俺に還元させた。
唖然としたままテンパは短くなった金髪を掻き毟る。
崩壊寸前の額の宝玉の最後の力を振り絞るようにテンパは叫ぶ!
「そう! けど宝玉がある限り、どんなパワーを使おうがムダだよ」
自分の魂の一部を使い、死霊の大砲デスソウルパニッシャーをテンパは放つ。
だが、再度の対決はあっけなく俺の勝利で終わる。
俺は不死身の魔女を人間魚雷として放ったんだ!
その衝撃で凄まじいダメージを受ける魔女はまた地面に倒れるが、大センパイという言葉の効果が効いたのかまだ元気なようだ。笑顔でVサインをしてやがる。使える言葉だな大センパイ。俺もお前に負けるわけにはいかないぜ大センパイ。
すると、もう宝玉のパワーも残り少ない魂の欠けるテンパは口から血を吐き、その白い肢体を血に染めながら死を吐き出すように呟く。
「ゲホッ……まさか魔女魚雷からデスソウルパニッシャーを相殺するとはねぇ。しかし、スペルガンの残弾はいくらあるのかな? こっちは魔女の今まで殺した部下の彷徨う魂がウジャウジャしてるから弾切れは無いわよ。さっきのワキ舐めは死を司る魔女から死の魂をもらうためにしたのよぉ……パッパッパッ!」
「魔女も覚悟を持ってお前を殺しに来てる。どんな痛みがあろうが復活するんだから、人間魚雷として使うのも一興だろ」
「勇者のクセに非道な事をさせるのものだわねぇ」
「確かに思いついたのは俺だ。それをやるかどうかは魔女の判断。言ったはずだ。俺達はお前を殺す」
「……」
「逃げられないぞ死の商人テンパ。今日、ここでお前は死ぬ。勇者魔王と魔女によってな」




