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魔女の聖水作戦!

「このまま魔力秘法・宝玉を破壊してテンパのエネルギー源を絶つ!」


 俺と魔女はギガビームキャノンの直撃で真紅の魔力秘法・宝玉を剥き出しにしたまま動きを止めるビッグテンパに新聞紙の絨毯に乗ったまま空を切り裂くようなスピードで突っ込む! 瞬間――右のウェポンコンテナが突如破壊された!


(くっ! どういう事だ!? 背後からの攻撃? 敵の魔術師か――!?)


 すると、俺と魔女の背後に黒髪ショートボブの純黒セーラー服を着た黒縁メガネの似合う、クラスの委員長みたいな魔法少女・漆黒のメスパーが現れた。ほぼ無表情のままメスパーは薄い胸をアピールするようにネコ招きポーズをとっておじぎをした。


「呼ばれましたのでニャニャニャニャーン。どうも漆黒のメスパーです。よろしくお願いします。ぺこり」


「メスパー!? こんな時に!」


「私はどんな時でも貴方の金玉を狙っていますわ。魔女にクラスチェンジする魔力を秘めた二つの金玉をね」


「魔女! 俺のウェポンコンテナは前方にしか攻撃出来ない! お前が何とかしろ!」


「えー!? ちょっとそれはムリよ。だって今は新聞紙の絨毯を操るのに精一杯だし!」


 いきなり背後に現れた漆黒のメスパーの超能力魔法を俺達は浴びる。


『――あああああっ!』


 それをチャンスと思うビッグテンパは顔面の再生が完了し、俺と魔女を金色の毛に包まれる大きな手で掴む。俺達は巨大な拳に包まれ身動きが取れなくなった……。


「パッパッパッ! ここで現れるとはね魔法少女メスパー。コイツ等を倒していいわよ。別に私が倒さなくてもいいしねぇ」


「ありがとうごさいます。殺してから勇者魔王の金玉を頂いて魔女にクラスチェンジします。ぺこり」


「ぺこり、じゃねー!」


 くそっ! このままだとテンパとメスパーの挟み撃ちで殺される……。奴等はまだ魔力がありあまってるが、こっちはもう枯渇状態に近い。それにこのアンボビウム形態ではウェポンコンテナは前方にしか攻撃出来ない。それに今はメスパーの超能力魔法で――。


「勇者魔法と魔女の身体は私の超能力魔法で拘束され、更にビッグテンパの手により動かす事も不可能。そしてイージーアンボビウムのウェポンコンテナもこちらを向いていないのです。これは私の勝ちですね勇者魔王オーマ」


「最後に勝てば官軍ってか? 今まで俺に敗北しかしてねー奴が調子に乗るなよ」


「死に際の言葉にしては微妙ですね。では、殺して金玉を頂きますのでよろしくお願いします」


 高速で空を駆けるメスパーはここぞと言わんばかりの満面の笑みで俺に迫る! なんかいつも冷めた顔だから逆に怖いぞ! 魔女は自分の下位互換の魔王少女にやられるの!? という情けない顔をしたが、隣の俺を信じているのかそれはすぐに微笑みに変わる。魔女め……と思う俺はイージーアンボビウムに意識を集中し、前方を向いているギガビームキャノンを動かした。


「うおおおおおっ! お前は俺には勝てない!」


 ガコン! と五メートルの長砲身のギガビームキャノンが、ビッグテンパの指のスキマをくぐり下方から半月を描き真後ろに向いた。ハッ! とした驚きの顔のメスパーの新鮮な顔が、俺の瞳に焼きつく。特攻をかけるメスパーの身体は、ギガビームキャノンの砲身に直撃していた――。


「――グフッ!? 砲身が真後ろを向いた! ウソ!? ホント?」


「わからないなら答えを教えよう。ゼロ距離射撃でな」


「き、金玉はいずれ必ずいただきます――」


「やらねーよ。散れ」


 ズブオオオオッーー! というギガビームキャノンの零距離射撃を浴び、メスパーは閃光の中に散った。奇襲を仕掛けて来たメスパーを倒し、俺達は大きな手の中に拘束されたままビッグテンパと向き合う。圧倒的優位な状況には変わりないそのビッグテンパは言う。


「メスパーはやられたのね。でも役に立ったわ。こうして勇者魔王と魔女の二人を拘束できてろんですからねぇ。それに今の大砲もしばらくは使えないはずよ」


「確かにもうギガビームキャノンを使うまでにはエネルギー充電が足りない。だが、このままでもウェポンコンテナは使えるぜ?」


「? まさかこの状態でミサイルポッドや爆導索でも使うの? 真横で爆発したら大ダメージで死ぬわよ?」


「わからないのか? このままお前が俺達を握り潰せばこのウェポンコンテナのミサイル関係は全て爆発し、俺達だけじゃなくお前にもダメージがいく。だからお前は俺達を離せない。なら、俺が離せるようにしてやるよ」


「いいわねぇ……狂ってるわ勇者魔王」


「フン、お前ほどじゃないさ」


 狂気に染まる俺の瞳にビッグテンパも興奮してやがる。このままウェポンコンテナを自爆させてこの拘束から脱する。隣の魔女にも覚悟を問わないとな。


「死の痛みに付き合え魔女」


「いいわよ。魔女は不死身だし」


「了解。ウェポンコンテナ。自爆する」


 ビッグテンパの握られる右手の隙間から光が発して、イージーアンボビウムのウェポンコンテナは大爆発を起こした。





 左のコンテナを自爆させてビッグテンパに捕まれていた状態から抜け出した俺と魔女は、火の海になるゴールドキングダムの都市の中をさまよい泳ぐ魚のように新聞紙の絨毯で空を飛行する。すでにここの住人はこの都市の支配者であるこの金髪の毛の巨人を恐れて非難している。相変わらず嫌な雨が降り続き――俺達のピンチな状態の変化はまだない――。


「くっ! 魔女、反応が遅いぞ! カスッただけでもダメージはデカい!」


「血が吹き出ても死ななきゃいいのよ! それにテンパの反応速度が速くなってるわ!」


 顔面から血を噴出す俺は、片目を閉じながら魔女の言葉を聞きつつ飛行する新聞紙の絨毯にしがみつく。邪魔なハエを追い回すようなビッグテンパは、すでに幾度が俺達に指をかすらせた事で次は殺せる……と手ごたえを感じている。


「パッパッパ! 回避パターンは読めたわよ魔女ぉ!」


「ほぇ? ――あっ!」


 瞬間、鋭く伸びる毛触手が魔女に襲いかかる!

 新聞紙の絨毯をコントロールする魔女がビッグテンパの毛に絡まった!


「コウハイ君助けてー!」


「魔女! くっそ!」


 コントロールを失う魔女の新聞紙の絨毯は落下する。その間、毛触手に捕まる魔女はビッグテンパの胸元で大量の毛に締め付けられている。落下する新聞紙の絨毯は下界の火炎地獄に落ちる――。


「マズイな……俺にこの新聞紙の絨毯のコントロールは出来ない」


「その前に、死ぬから安心してぇ! パッパッパ!」


「チィ!」


 その火炎地獄に落ちる前に、目の前にはビッグテンパの不愉快な金毛の拳が迫っていた――。目を見開く俺は、咄嗟にスペルガンを引き抜き対魔女用に開発した切り札を使おうとする。


「……」


 が、俺の動きは完全に停止していた。

 粉々になるはずの俺の身体は五体満足で、新聞紙の絨毯も安定して飛行してる……。

 ビッグテンパの外れた拳の風圧が地上の火炎地獄を煽る。それを目に焼き付けつつ、俺は勝手に動く新聞紙の絨毯に対して思う。


「新聞紙の絨毯が勝手に動いた!?」


「私のコントロール下にあるんだからアタボーでしょ!」


 何と、ビッグテンパの胸元で毛に締め付けられる魔女はそこからこの新聞紙の絨毯を遠隔操作でコントロールしていた。やってくれるな魔女め……。


「フン。黙れ魔女」


 これで飛行しつつビッグテンパを攻撃出来るぜ!


「後の事を考えては戦えない……残る魔力で一回しか起動できないあの機動兵器を生成するか!」


 それに気付いたビッグテンパはすかさず魔女を縛る毛のパワーを上げた!


「させないわよーーーー!」


「ぐっ、目に血が――」


 さっきビッグテンパに受けた傷から噴出す血が俺の視界を塞いだ。

 毛の触手の直撃を受け、新聞紙の絨毯から落ちた俺は魔女の方向に向かって落下する。

 ――しかし!


「氷結魔法・フリーズブレイク!」


 氷結魔法で空中の一部に氷の塊を生み出し、そこに鉄甲に仕込んであるアサルトアンカーを射出して空中をワイヤーアクションのように自在に動いた。地面の無い空中を縦横無尽に動く俺はサーカスのショウをしているスターのような気分で叫ぶ。


「魔法がロクに使えなくても、魔法の使い方は攻撃だけじゃないぜテンパ!」


「パッパッパッ! じゃかしいわこのクソガキがあぁぁぁーーー!」


 ズバー! と空間を埋め尽くすような金色の毛が針のように展開し、俺は右腕を刺されて落下した。


「――ぐあああっ――むごぉっ……!」


 ズガッ! とビッグテンパの身体の毛の中へ着地する。

 やけに心地いい着地だと思いきや、白くなめらかな太ももが俺の視界を塞いでいた。

 魔女の下半身に顔を埋めてしまったようだ……。


「それに……お前は……ナシか?」


「え? この世界の女は基本ナシだよ? 知らないの?」


「そ、そうなのか? そういえば馬小屋の時に見たな……」


 って、想像するな。

 しかも魔女の下半身なんて……。

 そして、金色の毛の巨人ビッグテンパは天から降り続く雨を拒絶するように叫ぶ。


「この身体の中の毛に締め付けられてパッパッパしろー!」


「黙れ外道」


 考えろ!

 ビッグテンパを倒す方法を!

 切り札を使うのは魔女戦用だ。


(死ぬ瞬間までこれは使えん。だから考えろ……考えろ……)


 毛がナシ……。

 現代ならモジャモジャしてるのは普通。

 テンパの毛がナシ……。

 そもそも毛っていうのは何だ?

 毛の弱点は……。


「モジャモジャしてる毛。毛の弱点。火炎以外の毛の弱点は……。俺が主に毛に関わるのは風呂に入る時。風呂に入る時はシャワーを浴びる……シャワー……!」


 雨が降りしきるが、このビッグテンパの身体は何故か水滴の一粒も付着していない。

 ふと、俺は左目の魔王の魔眼を発動させた。

 赤く輝く宝石のような全てを見通す魔眼は違和感を覚えた。


(ビッグテンパは雨に対してフィールドを張っている? 何故だ? 雨に対してフィールドなんて張っても仕方ないだろ……濡れたくないのか? 濡れたくない――) 


 そうか!

 瞬間、魔女の下半身を見つめる俺は閃いた。


「そうか! テンパだ! 雨の日のテンパは酷い!」


「え? 何の話? よくわかんないよコウハイ君?」


「魔女! 魔力を使えなくても、水を出す方法はあるだろ! やれ!」


「ほへ? まさか! にょーにょー放尿!?」


「みなまで言うな! テンパの毛で身体が見えないからしても問題無い。やれ!」


「コウハイ君もしなよね! 見られても減らないし、縮まないでしょ!?」


「黙れ魔女。奴を倒すチャンスだ。さっさとしろ!」


「仕方ないなぁ。ほーい。尿意よ……私に集まれ!」


 ムムム……と魔女はなんとも言いがたい顔をして尿意を溜める。

 それに対し、金色の毛の巨人・ビッグテンパは憤りを爆発させる声で自分の身体の毛に絡まる魔女を排除しようと言う。


「貴様等にはモラルが無いのか!」


『オメーに言われたかねーよ!』


 俺達が悪魔の巨人に叫ぶと同時に、魔女の尿意が溜まった!

 魔女の尿を魔力で爆発させ、ビッグテンパの水に弱い身体の隅々まで濡らしてやったぜ!


「よくやった魔女! 毛の拘束が弱まった。脱出だ!」


「ほいな! 来てね新聞紙の絨毯!」


 魔女の聖水作戦で俺達はビッグテンパの毛から脱出した。

 しかし――すかさずビッグテンパの触手が俺達を襲う!


「くっ……万事休すか?」


 魔王の魔手を突き出し、金毛触手に対抗しようとする――が、どこかで見た事のある電撃の閃光がビッグテンパを包み込むようにまばゆい光を放った――。


「何だこの電撃は!? ……まさか、不発だったプラズマリーダーが作動したのか!?」


「ワオ! やったねコウハイ君!」


「あぁ……時代が勇者魔王に味方しているのかもな」


 時代が俺の味方をしているように最高のタイミングで、さきほど不発だったマジックウェポン・プラズマリーダーが発動し、ビッグテンパとビッグテンパの核である宝玉に一撃を叩き込む事が出来た。水という弱点をつかれ、更にそこに水と相性のいい電撃を浴びせられ額にある赤い魔力秘宝・宝玉にヒビを入れた事に俺は気付いた。これで、無限に思えた奴の魔力も漏れ出し限界もいつか訪れる。

 勝者はこの勇者魔王オーマ様だ!


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