拠点防衛用第三オーマスーツ・ブラックアンボビウム
ブオオオオオッ――! と凄まじいスピードのギガバーニアンモードでテンパのゴールドキャッスルまで飛行し強襲をかける俺と魔女は夜空を切り裂く鳥になる。両肩のブースターポッドは調子が良く、この勢いに高揚する俺とは対照的に魔女は絶望的な声で言う。このスピードだと聞き取りづらいがな……。
「は、早いよコウハイ君! このままだと後十数秒でゴールドキングダムに到着する――より前に、加速のGで死にそう!」
「大丈夫だ。お前は不死身。それより落ちるなよ魔女。落ちても拾わんぞ」
「か、顔が歪むー! ヒョェーッ!」
「黙れ魔女。お前はカワイイ」
「そ、そう? そうだよ……ヒョェーッ!」
と、加速のGに耐えられない魔女の見苦しい叫び声と共に一つの流星のようにゴールドキングダムの空域に侵入し、その先にあるゴールドキャッスルを見据えた。物凄い風圧で俺の視界も非常に悪く、目が半開きだが、俺は感じる。この飛行の先にいる悪魔を。この金色に彩られた都市を支配する、魔力秘宝・宝玉の力をほぼ手中にした金色巻き髪美女――テンパを――。
「パッパッパッ。こんなボスまでの過程をすっ飛ばしてショートカットするオーマちゃんと魔女にはお仕置きしないとねぇ。飛行物体を落とすのは簡単なのはかしら、かしらご存知かしらぁ?」
「耳に直接響く? 魔力で音声を飛ばしてるのか? 野郎!」
そう思う俺は、ゴールドキャッスルの天守閣とも言える最上階のベランダで部下の兵に自分を扇子で扇がせつつ、金色の扇子を俺達に突き出し何かを呟いていたテンパの行動に気付かない。
それは、テンパ専用の黄金魔法。敵を金の鉄で破壊するゴールドサウザンド――。
それにいち早く反応する落下寸前の魔女は叫ぶ。
「コウハイ君! 何か来るわ! 金色の光!」
「何っ! ゴールドサウザンドか!? このスピードじゃ回避は不可能――」
「え? マジ!?」
「なわけなーだろーーーがーーーっ!」
ギガバーニアンの両肩のブースターポッドを真上に向け、一気に下降するように進路を無理矢理変えた。
雲の中を飛びつつテンパのゴールドサウザンドは回避出来たが、新たな敵がその空域には待ち構えていた。黄色いカラスのような浮遊物体が俺と魔女を光る目で見据えていた。
「コウハイ君! 前方に新手よ!」
「テンパの航空戦力!? いや、ただのカラス型の自動魔法砲台か……ならば!」
魔法防壁すら突破する実弾兵器ショットライフル。サブマシンガンのように派手な連射は出来ないが、一つ一つ敵を駆逐するには威力と精密射撃に向いた高速戦闘用の兵器だ。
「全てショットライフルで散らしてやる!」
ギガバーニアンに吸い寄せられるように群がる金色カラス共をババババッ! とショットライフルの実弾で撃ち払う。左眼の魔王の魔眼の赤い輝きが、敵の動きを右腕に伝えその反応そのままに俺はショットライフルのトリガーを引き仕留めていく。
いくら空中高速戦闘とはいえ、魔王の全てを見透かす魔眼も併用すればこんな事態には対処は出来る。魔力が今は三倍になってるから、色々な事が出来て便利だせ!
これこそがゲームやアニメでいうチートか!
正に勇者魔王そのものだぜ!
「俺がチートだ!」
「私もチートね!」
「黙れ魔女。舌を噛むぞ!」
「それは痛いーーー!」
と、無駄口を叩きながら俺は黄色いカラス型の浮遊自動砲台を落としていく。
それをテンパは口元を笑わせながら金の扇子を構え見据えていた。
「あらやだん。オーマちゃんは強くなってるわねぇ。まさか魔女とイヤラシイ関係になってしまったのかしら? かしらかしらぁん?」
ブワッ! と白い雲を突き抜けた俺と魔女の前に、テンパの金魔法・金の鉄で破壊するゴールドサウザンドが迫っていた――。
『あああああああああっ!』
テンパの魔法により、左側のブースターポッドが破壊され、ギガバーニアンがゴールドキングダムの城下街に落とされてしまった! それを笑うテンパ金の扇子で自分を扇ぎながら言う。
「直進しか出来ないなら、普通の攻撃でも数倍の威力に跳ね上がるわん。飛行する物体は目が良くないとダメなのよ。そう、貴方の魔眼のような目があっても生かせないならただの飾りよん♪」
そう、テンパが魔力音声を飛ばしてきたのを聞いた。
(確かに奴の言う通りだ。ギガバーニアンモードに慣れて、魔王の魔眼も同時使用出来るようになったが完全に有頂天になっていた。俺の罪か……)
だが、特に大きなダメージも無く城下街に着地出来た俺は、飛行機酔いをしてるような魔女に言う。つか……吐くなよ?
「テンパのいるゴールドキャッスル最上階には強襲できなかったがまぁ、ここまでノーダメージで来れば問題無い。ここからが本番だ魔女。例の作戦通りに行くぞ」
「ねぇコウハイ君……ゴミ袋ちょうだい……ちょっとヤバイかも。いや、かなりヤバイね」
「おう……ってまだ吐くなよ? 吐くなよ――」
俺が腰のバックパックからゴミ袋を取り出そうとしつつそう言ってる間に、魔女の青ざめた顔は更に悪化し――。
「うおえぇぇぇ……」
と、胃の中の物を全て地面に戻した。
そうだな……確かに吐くよな。
すまん魔女。
そして一応の介抱だけはして魔女をお姫様抱っこをしたまま駆ける!
すでに城下街は寝静まってはいるが、敵の黄色い制服を着た魔術師達は俺達を待ち構えている。
故に一気に城下街は突破しないとゴールドキャッスルまで辿り着くのが遅れる。
ズババババッ! と現れだす魔術師達の攻撃を回避し、ひたすら駆ける。
何とか嘔吐からの回復を見せる魔女は、俺の腕に抱かれたままの姿で言う。
「お姫様抱っこして駆けるなんてやるねコウハイ君。やっぱ私はアイドルだね!」
「お前は俺の囮だ。死にたくなければ敵を倒して目立て。それが世界を革命するアイドルになる事だ。わかったな!」
「イエス! オーマ!」
と、言ってる間に女の魔術師達が行く手を阻む。
チッ、邪魔な忙しいのに邪魔な奴等だ。
待てよ……コイツはゴミ袋のように使えそうだ……。
「ピンチだな魔女よ。女のライバルにアイドルへの道を先越されるかもな。アイドルとは最強の女だ。人々から尊敬され、崇拝され、全てにおいて喝采される神とも呼べる世界を革命する存在。それがアイドルだ。だが、この異世界でそうなるには目立たねばならん。魔女の名とルックスを拡める必要もあるからな。なわけで、囮となれ」
「ほへ? ヒャー!」
俺は魔女を上空にブン投げた!
それを目の前の女魔術師達は唖然と見据える。
「魔女も愚民も俺の掌で踊れ」
サブマシンガンを連射し、敵の魔術師を一掃する。
そして、俺達はとうとうテンパの居城・ゴールドキャッスルの金色の門前に立つ。
この門の先には数多の敵がもう待ち受けてるのはレーダーによってわかる。
こいつは派手な戦いになる。
すると、上空の空に魔力映像でテンパが話しかけて来た。
「魔力秘宝・宝玉はもう私の支配下にあるわ。もう時間は無いわよん♪ ここの魔術師達を倒してここまで辿り着いたら、相手をしてあげるわオーマちゃん♪」
「一方的な魔力映像だぜ。……それに、最上階へはやはりアンカーを使うだけじゃ登れないようだな」
俺はレーダーサーチで城の魔力反応を探る。
テンパへの最短距離のゴールドキャッスルの外壁は登れないな。
所々にワープフィールドが設置してあって、もし触れてしまったら完全にアウトだ。それに、ゴールドキャッスルの窓枠全てに魔術師達が待機してやがる。奴等の攻撃を受け、ワープフィールドを回避してからテンパに辿り着くのはかなり厳しい選択肢だぜ。というわけで、
「魔女よ。これは二人だけの戦争だ。増援は無い。だが、お前は不死身だ」
「……つまりは?」
ニンマリ……と俺は白い歯を輝かせ微笑んだ。
「よし、死んで来い」
「うきゃーーー!」
魔女をゴールドキャッスル門の先の敵陣にブン投げた!
これで、俺は影のように敵陣の中枢に進入出来るぜ。
せいぜい囮として役に立てよ魔女。
俺が死の商人を倒して、全ての運命から解放してやる。
両手の鉄甲に仕込んだアサルトアンカーで門を一気に上り、そこからケツを打ったらしい魔女に指示を送る。
「魔女よ。新しい力を授ける。これはオーマスーツ第三の機動兵器・機動弾薬庫とも言えるブラックアンボビウムだ」
左手の魔王の魔手と右の勇者の勇者烙印に全神経を集中させ俺は、一気に全ての力を解放し――拠点防衛用機動兵器ブラックアンボビウムを生み出した。
機動兵器オーマスーツ
1・強襲用〔ギガバーニアン〕
2・核弾頭使用用〔ジギタリス〕
3・拠点防衛用〔ブラックアンボビウム〕
の三種類がある。
ブラックアンボビウム武装装備――。
近くの敵を始末するビームガン。
周囲の敵を倒し、爆破しつつ牽制もかけるハイパーバズーカ。
敵を巻き取り爆破する爆導索。
基本は三つのリーダーから発する三角形の電磁波で敵を結界内に封じ込め、焼き払うプラズマリーダー
広範囲の敵を蹴散らすミサイルポッド。
対人兵器・フラッシュニードル。
白兵用のハイパビームソード。
そして虎の子である一撃必殺の威力を誇る、五メートルの砲身の大砲・ギガビームキャノン。
そのブラックアンボビウムの外見は、両肩に大型の武装コンテナが有り、右に五メートルの砲身の大砲・ギガビームキャノンがその存在を否応無く示す。左側には魔力を貯蔵する魔力タンクがあり、魔力防御シールドを展開させるジェネレータの役割も果たしている。中央にはそれをコントロールするステイレディが存在する、黒薔薇描かれた出来た巨大な戦艦ともいえるブラックアンボビウムが姿を現した。
その使い手ステイレディである魔女は、両手を広げ、ブラックアンボビウムの存在感を周囲の魔術師達に知らしめる。
『……』
圧倒的な存在感を放つブラックアンボビウムに敵の魔術師達は攻撃することすら忘れ、絶句している。まさに悪魔というほかに無い質量と魔力だ。魔女は魔力と血を代価に威力を高めていく黒薔薇模様が美しいギガビームキャノンを構えさせるコントロールをし、左右を確認し、撃った! ギュオオオオオオオッ――という黒くブ厚い閃光が敵の魔術師とゴールドキャッスルの下層階を消滅させた。突然の異常な攻撃に焦る敵共はゴールドキャッスルに激震が走る事でパニックになる。いいザマだぜ。だが、ギガビームキャノンは連射は出来ない。今の内に魔女と最後の会話をしとくか。
「魔女よ。お前はアンボビウムを動かす兵器・ステイレディだ」
「へ?」
「へ? じゃない。お前もスーツのパーツの一つだ魔女。ちなみに俺が操ればステイマン」
「最悪アンボビウムが破壊されてもアンボビウムをパージすればステイレディのみで活動出来る。そんな安心設計だ。素晴らしいだろ?」
「ちょい、ちょい待ち! 何故、ブラックが追加? これはただのアンボビウムだよね? 名前が変わってるし、これが黒くなるのは魔女だから?」
「腹黒いから」
まぁ、これは魔女をからかう嘘だがな。
こんな状況だからこそ、冗談の一つでも言わないとな。ブラックアンボビウムのカラーは基本は黒だが、勇者のパワーを注ぎ込めば白くもなる。それは俺が使ってもあまり白くはならないからブラックアンボビウムという名にしたんだがな。
すると激怒する魔女はとんでもない事を言い出した!
「! 言うわねコウハイ君! ムーンライト村で朝、私を手篭めにして襲おうとした事を宣伝しちゃお! ここには沢山の人がいるからね♪」
「お、お前! あの時、起きてたのか!? ふざけんな! 言うなバカ!」
「バカとか言うと言うからね! このセンパイがコウハイ君の欲を知らないとでも思ったの? この童貞オッパイ星人が!」
「男は皆、オッパイ星人だ! そして童貞だ! ってそれは違うか。今はそんな話はいい!」
「自分で私を怒らせたくせに」
「黙れ魔女」
このまま、この魔女のペースにはまるのはマズい……。
俺の……勇者魔王の名誉に関わる問題になる話しだしな。
ったく危険な存在だぜ魔女は。
そしてパニックから立ち直る敵の攻撃を受け続けるブラックアンボビウムはとうとうその巨体を動かした――が、
「ほえ? 真っ直ぐにしか進まないよ?」
「当然だ。人生にバックギアは無いからな。ただ進軍あるのみ」
「ならやってやるわよ! だって魔女は輝きに溢れるアイドルだから!」
「よく言った! 流石は魔女だ! 愛してるぞセンパイ!」
「あ、愛の告白!? こんな状況を利用するなんて、恋の駆け引きに長けてるじゃないコウハイ君! センパイはとっても嬉しいよ! 天晴れ!」
浮かれるステイレディこと魔女は攻撃を開始せずに攻撃を受けたままだ……。
いくら魔力防御があってもブラックアンボビウムも無敵じゃない。
ステイレディの頭を冷やしてやるしかないな。
じゃないとアンボビウムが役に立たん。
「アイドルが丁寧に扱われるなんて勘違いするなよ。俺は、今までの勇者と違って甘くないぞ。頼んだぞ魔女!」
「あいよ! って、センパイでしょ! センパイーーーッ!」
「魔女! 魔女! 魔女―――っ! 作戦成功したらセンパイっていくらでも言ってやるさ!」
「それを信じるわよコウハイ君! よっし。いっちょ、やったろーじゃないの! このアイドル魔女がね!」
ウインクするする魔女にドキッ……と心打たれてしまう俺は微笑む。
ステイレディである魔女は大きく手を開きアンボビウムの左右にあるウェポンコントローラーを握る。
ズバババババッ! と魔女は両肩のウェポンコンテナからミサイルポッドを連射した。ゴールドキャッスル門前は一気に爆発と火の海になり、死の世界になった。
今回のゴールドキャッスル突入作戦の概要はこうだ。
魔女に新聞分身で黒いフードコートを着た存在を作り、敵に勇者魔王オーマだと思わせる。
俺はその作戦にて、大混乱のゴールドキャッスル門前から抜け出し、ゴミ袋ステルスにてゴールドキャッスルに侵入した。目指すは、美しき欲望にまみれた金髪巻き髪美女。千年を生きる千年伯爵の死の商人・テンパの首一つ!




