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魔女と勇者魔王の誓い

 馬小屋での魔女との熱い夜が明けて朝になった。


(……少し疲れて眠り過ぎたな。まさか憎き魔女を抱いて、抱かれて眠るとは)


 腕に隠れて見えないが、白い乳房が俺の全身の神経を活性化させる。

 ふと、その邪魔な腕をどかして眠る魔女の上に馬乗りになった。

 睫毛の長い魔女の横顔に見とれる俺は、気絶させられた桜色の唇に欲情してしまう。

 そして、その下の二つのモノ。男が永遠に求める豊かな生命に溢れる物体を両手で揉み解し、意識が血を求めるように魔女の首筋に噛み付いた。あっ……と艶めいた魔女の吐息が俺の横顔にかかり、そのまま舌先を首筋から鎖骨――そして胸の中心へと這わせる。


(この女は……俺が殺す……俺の全てで殺す……)


 いつの間にか俺の左手は魔女の唇に触れ、右手は茂みの無い下半身の聖域に置かれていた。

 まるで左の魔王の魔手が魔女の魅惑の唇を煽り、右の勇者烙印の右手が魔女の秘所を守るような動きをしていた。そんな中、唯一俺の思い通りに動く舌先が俺の欲を体現する。


(テンパの前に……お前の全てを殺してやる……)


 その欲望のまま魔女の乳房に吸い付こうとする――。

 一向に起きない魔女はされるがままの状態でただ仰向けで寝ている。

 もう俺の欲は止まらない。


(お前の乳房を噛み千切ってやる――)


 ――俺の耳に、馬の鳴き声が聞こえた。


(……俺は何をやってる! 寝てる女を手篭めにしようなんて最低だ!)


 ハッ! と我に返る俺は呆然と魔女に馬乗り状態で興奮していた自分を恥じた。

 くそっ……。

 俺もヤキが回ってきたか?


「でも……女の肌はいいもんだ。まさか不眠になった俺をキスで気絶させて眠らせるとはな。コイツは案外いい奴だ。魔女だけど」


 夜明け前に起きてここを離れる予定だったが、気が緩んでたのかもな。

 俺はまだ眠りこけてよだれを垂らして寝てる魔女の頬に優しく触れた。


「夜、眠れた事は感謝する。おかげで今までになく身体の調子もいいし、魔力の制御も安定して行えそうだ。これならテンパだって余裕で勝てそうだぜ」


 異世界に来てからかつてないほどの身体の調子の良さに俺は興奮していた。

 同時に、ムニャムニャと寝顔だけはカワイイ魔女の頬を叩いて起こす。


「痛いっ! コウハイ君! いきなりなんて事するの! このカワイイ私の頬を叩くなんて神でも許されないのよ!」


「黙れ魔女。さっさとフードマントを着ろ。全裸を他人に見られたいのか? 当然ながら見せるなよ」


「……あーそういう事か。なら着よう。でも私の裸を独占したいなんてコウハイ君も男の子だね」


「だ、黙れ魔女!」


「はいはい勇者魔王」


 スッと立ち上がる魔女は白い白磁のような身体にフードマントを着てVサインをした。

 それを無視する俺は、首と手をコキコキと鳴らしながら衣服をつけた。

 互いにいつもの状態に戻り、朝日が差し込む馬小屋の窓の外を見る。

 俺の研ぎ澄まされた感覚は、この馬小屋の周囲を囲む者達を知覚させたんだ。

 このラルク大陸の支配者となる金色の悪魔が魔力秘宝・宝玉の力で覚醒する朝、俺達のいる馬小屋はムーンライト村の村人達に囲まれていた。





 馬小屋から出て周囲を囲まれる俺と魔女は、槍や棒などを持ったムーンライト村の村人達に警戒されながら立ち尽くしていた。


「どう考えても歓迎ムードじゃねーな……。最悪、戦闘になるかも知れん。覚悟はしておけよ魔女」


「えぇ、わかってるわ。今日の目的は宝玉で覚醒する前のテンパを始末する事。邪魔するなら散らしていくのみ」


「俺のキメ台詞を取るなよ魔女」


 言いつつ、俺はここの村人達の共通する一つの紋様を見た。まるで勇者烙印の五芒星のような紋様だが、あれは現代にある紋様……。


(手の甲にバーコードのタトゥー? 右手に多い所を見ると、大体の人間の利き手の甲にあるという事は魔力に関係するのか……?)


 そんな事を考えていると、俺に対し怒る村人達は言う。


「お前達が勇者魔王と魔女か。とっととこの村から出て行け! 世界の罪悪が!」


「この村にいた時は普通の少年だと思ったが、まさかいくつもの町や村。そして大きな都市すら消し去る勇者魔王だったとは思わなかったぞ。助けてやるんじゃなかったぜ」


「勇者魔王ってより、ただの魔王だな。とても勇者の要素があると思えない存在だ。このエセ勇者が!」


「……」


 俺は村人達の言葉をただ受け止める。

 そして、俺達の前に立つ長老は一つ咳をしてから言う。


「変わったなオーマよ。ここに来た時は普通の少年だったが、もうすでに勇者というより魔王のような大量殺戮をしている。ヘブンリーシティーの人間五万人を殺したのはここの村人全てが知っているぞ」


「だろうな。あの事件はこの異世界でもそうそう起こる事件じゃないらしいからな。まさに勇者魔王の俺だからこそ起こせる事件だ」


 魔女になれず歪んだ魔王になった魔女の姉を殺して、魔王の力を完全なモノにした時の事件だ。魔女の姉との決戦の時に次元が歪んだ狭間からブラックホールが生まれ本来なら都市の全ての人間である十万人が死ぬ予定をマジックウェポンで生成した現代でも禁忌の核弾頭を使って五万人まで減らせたが、それでも大量殺戮になった事は事実。俺が起こした最初の厄災だ。いや、大厄災か……。

 そしてまた咳をする長老は言った。


「だがこのムーンライト村の人間も鬼ではないぞ。この大陸の数多の村を壊滅させているゴールドドラゴンを退治してくれたら、ワシ等は勇者魔王を信じてもいい。人の心を持ち合わせてるならこの村を守れ、オーマよ」


「おいおい長老。あのゴールドドラゴンの目的は人体実験をする為の人間を得る為に、ドラゴンが村を襲って壊滅させているっていう事実を作ってるだけの事件。あれはテンパが飼ってるペットだ。テンパの意思で動いてる」


「信用出来るか! テンパ様はムーンライト村の支援者だぞ! この村には神がいると信じており、食料や仕事などを与えてくれる我々の神。それを主は侮辱するか!」


「神なら、自分の身体を人体実験させてもいいのか?」


 一瞬たじろぐ長老は右手の甲を出し、ツバを飛ばしながら喋る。

 どうやらテンパはこの村にも献金して懐柔させていたのか。

 人体実験のモルモット村として。

 それとも、俺の心を壊す為の人質として使ったか?

 まぁ、今はどうでもいい。

 長老の話を聞いてやろう。

 欲に目がくらみ、村を壊滅させる事にも気付かぬ老人の話を。


「この右手の甲の聖痕はテンパ様から得た魔力を高める魔力源。我々はテンパ様から得たこの力で強い魔術師として目覚めたのだ。だからこそテンパ様は神。神なのだ」


「そうか……お前達ムーンライト村の人間も人体実験材料にされたか。残念だが、お前達の余命は長く無い。おそらく寿命を消費するかなにかして強い魔力を得てるんだろ。元々魔力がほぼ無い人間が、そんな簡単に魔力が手に入るわけないだろ? 騙されたな長老」


「黙らっしゃい! 我々の神テンパ様を愚弄するなよ勇者魔王!」


「なら魔眼でお前達を見てやるよ……」


 左目が真紅のダイヤモンドのように怪しく、まばゆく輝く魔王の魔眼で見る。

 そのバーコードは死んだ時に人体実験のデータを回収する為のものか。だから普通の人間よりもお前達は魔力回路がおかしい。金も手間もかかる折角の人体実験被験者のデータを失うわけにはいかないからな。それを俺はここの村の頑固な長老に教えてやる。


「……のようだぜ?」


「嘘じゃ! ワシ等はテンパ様の信頼が厚い新たなる魔術師じゃ!」


「だから言ったろ? そのバーコードは選ばれた者の聖痕ではない。ただのモルモットの管理ナンバーだって」


「……っ! 者共、この勇者魔王は世界の悪。テンパ様を邪魔する存在には死を!」


『テンパ様を邪魔する存在には死を!』


 村人達は一致団結して言い放つ。

 それに対し俺は口元を笑わせ、


「俺の邪魔をするなら殺すぞ。まぁ、その身体でムリはしない方がいい。おそらく、テンパの計画が最終段階な以上、お前達も用済みだ。つまり、もうすぐ死ぬ」


『テンパ様を邪魔する存在には死を!』


「もう何を言ってもムダだな。やるぞ魔女。覚悟はいいな」


「邪魔者は散らす。それだけよ。かつての仲間でもそれは変わりないわ」


「ならいい」


 ったく無駄な事をする村人達だ。

 やれやれ……と思いつつ近くにある馬小屋の入口の木の柵にある風車を手に取った。

 村人達は魔法を使おうとする。

 しかもスペルガンの弾丸シリーズと同じ大魔法をだ。

 しかし、俺は流れる朝の心地よい風を感じつつ何もしない。

 そして村人達は大魔法の詠唱が終わり、魔女の瞳が細くなる。


「この風車が如く廻り、そして死ね」


 俺の言葉と同時に、村人達はバタバタと倒れ出す。

 目を細めていた魔女の顔も多少動いたが、冷ややかに村人達を見ている。


「やっぱり死んだか。元々魔力が無い人間が魔力を得ても大魔法を使うには無理があるわ。魔術師ならわかるけど、普通の人間はわからないのね」


「それが人だ」


 村人達は必要以上に使おうとしていた魔力回路の暴走が起こったんだ。このまま、ここの村人達は魔力回路の暴走で死ぬんだろう。おそらく、ここの人間が死んだらテンパが死体を回収してバーコードの情報を読み取る。だが……。


「もう、ここの村人は用済みなんだろ。すでにテンパの宝玉を扱う為の力は完成させられてたようだからな。テンパを神とし、テンパに利用され、そしてテンパに忘れられて死ぬ。哀れとも言えず、滑稽なだけだ。同じ村出身ならそう思うだろ魔女?」


 ヘヘッとわざとらしく笑いながら俺は魔女に言う。

 倒れた村人達は、身体が紫色に染まり完全に死んだ。

 しかし――魔女は動いた。

 他人の死を全て楽しみ、悦に浸るはずの死を喜びとする魔女が動いた。


「何をしている? すでに手遅れだ。魔法が万能じゃないのはお前が一番知ってるはずだ魔女」


「ウルサイわね! そんな事は知ってるわよ!」


「やけに感情を出すじゃねーか。魔女には人の死は喜びじゃなかったのか? どうなんだよセ・ン・パ・イ」


「……」


 魔女は答えず、茫然と死に絶える村人を見ていた。

 これは心境の変化が起こったとしか思えない変化だ。

 普通ならそう思うだろうが、俺はそうは思わない。

 そして呆然とする魔女は全ての理想を失ったような哀れな少女のように呟いた。


「これは……人の死に方じゃない」


 これがテンパのやり方か……。

 人の心に付け入るように物を与え、信頼を得る。そうやって与えて、与えて、与え続けて人の心を籠絡して操り人形にする。

 そうやって、人の命を弄んで不老不死を得ようとしてる。不老不死なんてくだらない昔のゲームでありがちな目的で陳腐だと思ってたが、ここまで他人の血を流すやり方には反吐すら出ない。

 これはもう、勇者や魔王云々じゃなくて、一人の巨大な力を持つ者として許す事は出来ない。死の商人テンパは人間にとっての厄災だ。奴は俺が散らす。


「心の奥にある大事な場所へワープする魔法をテンパは宝玉のある宝物庫で使った。……つまり、テンパの奴は俺達の心を壊そうとしてここにワープさせたって事か……」


 魔女は茫然と、村人の死に絶えた姿をながめている。

 うーん。

 素晴らしくウザいな。


「さて……テンパの野郎は生かしちゃおけん。ド派手に散らしてやる! 行くぜ魔女!」


 しかし魔女は立ち止まっている。

 まるでテンパを倒す目的をうしなったように。

 俺のイラ立ちは増す――。


「どうした? 魔女は泣けないんだろ? 笑えよ? これだけの人間が死んでるんだ。人の死を喜びとする魔女にとっては最高のシュチュエーションだろう? どーした! どーした! 大笑いする所で笑えないなんて最低だぞ! 何なら俺が笑ってやろうか!」


「少し、黙っててくれるコウハイ君?」


 ジロリ……刺すような視線を魔女は俺に向ける。

 それは怒りに満ちた感情を秘めていて、他者の死を喜ぶ魔女に相応しくない瞳と感情だ。

 俺はこの女に無理矢理に勇者魔王にされた以上、それを否定する。


「すでにお前の故郷だったムーンライト村の村人は魔女になった時点でお前を知らない、関係無い。ここにいても時間のムダだ。……まさか、悲しいのか?」


「まさか……私は魔女よ? 悲しい感情は無いのよ」


 そう言いつつも死んだ村人を見据えつつ、かすかに震えているのを見逃さない。

 俺は胸のホルスターからハンドガンを引き抜く。


「センパイ。悲しいのか?」


「悲しくない。嬉しいわ。だって他者の死を喜びとする魔女だもの」


 そう、能面のような感情を消した顔の魔女は言う。

 俺はハンドガンを魔女の腹部に撃つ。

 じわっ……と魔女の腹部に血が溢れうずくまる。

 目に見えた嘘を言わなくなくなるまでは銃を撃つ。回避行動すらしないこの女に。


「魔女よ。お前、内心はテンパには勝てないと思ってるだろ。なら諦めろ。この先、何人の人間が魔女の不老不死の謎を解き明かす為に死のうがお前は笑ってなきゃならない。どんなに理不尽な状況でも、お前は魔女なんだからな」


 俺はハンドガンを魔女の右肩に撃つ。


「だから……私は魔王の因子を持つ貴方に勇者の力を与えて、存在するはずのない特異点としての活躍を期待した。千年を生きる死の商人テンパを倒す存在として」


 俺はハンドガンを魔女の左肩に撃つ。


「そう、俺はテンパを倒せる存在だ。勇者と魔王の力を持つ異世界の特異点。魔女が生み出した清濁合わせた覇王になる存在。例えテンパが半不老不死だろうが、俺の敵じゃないさ」


 俺はハンドガンを魔女の右足に撃つ。


「敵じゃないというその、根拠は?」


 俺はハンドガンを魔女の左足に撃つ。

 簡単な質問をしやがる……。


「俺が全世界の覇王となる勇者魔王! オーマだからだ!」


 血みどろの魔女の奴は驚いてやがる。

 そして魔女の額にハンドガンを撃つ。

 その血は、鮮やかに顔面に流れる。


「答えになってないわ……。一万もの人間を殺して得た宝玉の魔力を感じたでしょう? あれを扱うのはもう、人間じゃないわよ。神……としか言いようが無いわ。勇者も魔王も魔女も……神には勝てない」


「一万の人間が死んだなら俺は二万の人間を殺してテンパより強くなる。テンパが三万殺すなら俺は六万殺して更に強くなる……俺は全世界の人間を殺してでもあのテンパを散らす。そして、それを魔女は笑って見ている。それが魔女だ」


「……」


 俺はハンドガンを構えたまま言う。

 これが最後の問いだ。

 返答次第では、テンパの前にコイツを殺す。

 どんな方法を使ってもな。


「センパイ。もう一度言う。悲しいか?」


 壊れたガラスを包み込むような優しい微笑みで、その魔女は微かに言った。


「悲しい……」


「当たり前だ!」


 俺はハンドガンを撃つのをやめ、ホルスターに収める。


「お前は自分の心の痛みを消す為にわざと俺に撃たれてるな? もう、俺はお前に撃たない。俺は魔女の慰め役じゃないからな」


「ゴメン……ゴメンなさい……」


 俺が与える死の痛みを懇願するような歪んだ顔で魔女は言う。

 しかし魔女の瞳からは涙は出ない。

 それが魔女の運命だ。


「悲しいのは当然だ! これだけの事をされて悲しくないわけがねーさ。新たな悲しみを拡げない為に、奴を……テンパを倒しに行くぞ」


「えぇ……テンパを倒す……けどあの女は勇者魔王以上の強さを秘めてるかもしれない……」


 はっきりしない女だ。

 だが、俺は魔女を諦めないぞ。

 憎しみと愛は表裏一体だ。


「たとえ世界が滅んでもお前は魔女。お前の運命が死の商人と関わってるなら、ヤツが死ぬまで生きてられるだろ。魔女は運命によって導かれた、大きな欲望を持つ者が生み出す呪いによってしか死なないからな」


「そうだよ! だから私と関係ないなら消えてよ!」


「黙れ魔女」


 バシッ! と素直にならない魔女の頬を叩く。

 そして俺は目を丸くしたまま言葉を発しない魔女を無視してマジックウェポン・火炎放射器を生成し、村人の死体を焼き村自体も焼く。


『……』


 朝日に照らされる二人はそれをただ眺める。

 魔女という呪いにより涙ぐむ事も出来ない魔女の真横で、燃え落ちる村を眺める。この人体実験村を捨てたとなると、死の商人テンパは宝玉の使い方をマスターしたんだろ。それでいいさ。どんな存在も、この勇者と魔王の力を秘める世界の得異点・勇者魔王には勝てないんだからな。


「ムーンライト村ももうすぐ焼け落ちるな。……笑えよ? 魔女になれず、堕ちた魔王になって俺が殺したお前の姉は最後まで笑ってたぞ?」


「……」


「さっきからどうした? やけに感情が乱れてるな。魔女は悲しまないんじゃないのか?」


「人間が悲しまないわけないでしょ!? アンタもいずれ殺してやるわ! 貴方が殺した姉さんだって死ぬ間際まで笑ってるわけないでしょ!」


 激烈な感情のこもる瞳と言葉を魔女はぶつけてきた。

 やっと本心を話したな魔女め……。


「心が泣いてるなら、十分悲しんでるだろ。涙など流す事は無いってのは自分が言ってたはずだ」


 さっき額を撃ち抜いた血が、魔女の両目から血の涙を流しているような光景になっていた。

 魔女はそれに満足するように微笑むが、それを笑う俺は、


「流れてるのは、涙じゃなくて血だ。魔女は涙は流さない」


「そう、その通り。自分の村が滅んで喜んでたのよ」


「……死の商人を倒したいか?」


「倒したいんじゃないわ……ぶっ殺したいの! 火であぶり、水責めにして、風の刃でミンチにし、土に埋めてから、雷で裁きを与えてぶっ殺したいの! 魔術師の全属性をこれでもかっ! ってほど浴びせて殺したいわ!」


「いい答えだ。なら誓え。勇者であるこの俺を魔女であるお前は全身全霊で誠心誠意サポートする事を」


「誓ってやるわよ勇者魔王!」


 やっと元の魔女らしい調子を取り戻した魔女は欲望のまま言う。


「テンパを殺したらは私の不死を解く奴隷としてコウハイ君を死ぬまで利用してあげるわ。覚悟しなさい!」


「あぁ光栄だ。そんな魔女を更にこの勇者魔王オーマ様が利用してやる。ゴミ袋のようにな! それに俺は今までの勇者のようにはいかないぞ。せいぜい俺の役に立てよ。魔女」


「えぇ勇者魔王」


 俺は魔女の両目から流れていた血の涙を拭ってやる。

 そして、俺は二人の決意の言葉を昇り行くまばゆい朝日に告げる。


「……ならば復讐劇の始まりだ」


 そして俺達は同時に叫んだ。


『ド派手に散らす!』


 ムーンライト村を焼いて、俺達はテンパの都市・ゴールドキングダムへ向かう。

 村人の死体をテンパやゴールドドラゴンにこれ以上弄ばれるわけにはいかねーからな。

 お前達の受けた理不尽な苦しみは俺がテンパに味あわせてやる。

 勇者魔王として、必ず死の商人テンパを散らす!


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