死の商人・金髪巻き髪美女テンパ
「……パッパッパッ。アーラ久しぶりね勇者魔王オーマちゃん。そして魔女。このテンパ様の宝物庫に何の用かしらかしら、御存知かしらぁ?」
光り輝く金髪を巻き髪にし、気品とゴージャスさを兼ね備えた美女は黄金の豊かな胸元が大きく開いたスーツのような衣装の上に金の毛皮のコートを羽織っている。その足元は大きなダイヤが埋め込まれる金のハイヒール。金、金、金――。
と、全ては金で買えると言わんばかりの金づくめの女はこれまた黄金色の扇子で扇ぎながら黄色い瞳を向けて来る。
それに対し、俺はそのテンパに答える。
「ここに魔力秘宝の宝玉があるかどうかは御存知だぜテンパ」
「そう。どうせ魔女に聞いたんでしょ? 私の目的とか、その他諸々もね」
「あぁ。聞いたさ。どうなんだテンパ? この魔女の言う事を信用していいのか?」
フフフ……と笑いつつ金の扇子をパチリと閉じるテンパはその扇子の先を魔女に向けた。その魔女は冷酷な瞳でテンパに言う。
「テンパ。貴女は私の不老不死を手に入れる為に宝玉の力を利用するのは本当でしょ? いい加減本当の事を話しなさいよ」
「不老不死にはなるわよ。私は魔女の言う通り、千年伯爵とも言われる千年を生きる女。他者の全てを利用し、他者の全ての金を吸い取り今まで生きて来た。そして、今度は最終目標であった不老不死を得るのよ。これでもう、他人の身体に転生する必要の無くなる人生になるわ」
俺と魔女は本音を語る死の商人テンパの言葉を聞く。確かに、俺の知るテンパと目の前のテンパはまるで別人だ。野心を隠さない女というのは、男以上に生気に満ちた存在になるようだな。まるで天龍のような気高さだぜ……。そして、自分の豊かな左胸に触れるテンパは、
「他人に自分の魂を転生させるのは大変なのよ。最低でも十年は相手に魔力を与えて、自分の魔力と相手の魔力を合わせないとならなきのよん。それだけの時間をかけてやっとこさ転生してからも他人の身体というのは違和感ありまくりで、いきなり血を吐くことも多いの。私自身も顔を自分の顔に変えないと生活が出来ないからそこにも魔力を使う。だーかーら……不老不死を得るのはこのテンパ様にとって、最高のイベントなのよぉ。この世界を支配者となる為のねぇ……」
アハハ……とヨダレを垂らしながら自身の欲望を語る金色の美女に対し魔女は表情を変えず、俺はマンガのような展開だなと溜息をつきつつ、
「自分が他者に転生する面倒を不老不死によって解決するのか。結構な事だ。だが、お前はここで死んでもらう。不老不死なんぞ、ロクなもんじゃないのはこの魔女を見てよくわかる。そして、野心と力のある不老不死者など、どの世界でも癌にしかならん。支配者となる夢も、全て終わらせてやるぞ」
「勇者の力があるとは言え、この世界の人間じゃないオーマちゃんが命を賭けて私に抵抗する意味があるのかしら? ここで手を組んで魔女を始末する手伝いをしてくれた方が、メリットが大きいわよ? だって、私は商売で莫大な金と人を動かせるんだもの。私といれば人々も勇者として簡単に認めてくれるわ。それでも、魔王のように世界の主になりたいのかしら? 私のように」
「俺は勇者であり魔王。どちらでもあり、どちらでもない。俺は元々別世界の人間だからな。勇者として悪しき者を倒す振る舞いをしなくていいし、魔王として世界を恐怖で支配しなくてもいい。俺は俺のやりたい事をこの勇者魔王の力でする。その目的の中に、お前のような奴の指示を受けるような生き方は存在しないのさ」
ククッ……とテンパは瞳孔が開いた金色の瞳を嗤わせた。同時に、隣の魔女のテンパへの殺気も増す。突如、テンパは金の扇子を上空に投げた! 何かの攻撃か? と思い俺は金の扇子を見据えつつテンパを見る――が、すでにテンパは移動していた。魔女の背後に――。
「パッパッパッ。随分と髪が傷んでるわね。魔女」
何と! 目にも止まらぬ速さで動いたテンパは魔女の長い黒髪を舐めていた。コイツ……そういえば、俺も出会った時に舐められたな。そういう趣味か?
「あんまり反応してくれないのね魔女。不感症なの? それとも汗ばんだ貴女の柔らかいワキでも舐めた方が良かったかしら? かしらご存知かしらぁ?」
「知るか!」
ブンッ! と魔女は新聞紙のステッキでテンパを攻撃するが、避けられる。
そして、上空に飛ばしていた金の扇子を受け取る。
激怒する魔女は、
「本当にここでテンパにつかなくていいのコウハイ君? あの女の言う通りにした方が楽だよ? それでも、魔女である私の意見を聞いてくれるんだね?」
「別にお前の意見などどうでもいい魔女。俺は、俺の気いらない奴を始末したいだけ。俺はゴチャゴチャと鬱陶しい女が嫌いなんだ。女が世界を動かすとロクな事がないからな」
「じゃあ頼むよコウハイ君。センパイを立ててくれてありがとう!」
「お前も鬱陶しい女の一人だ魔女。俺は俺の上に立とうとする奴は女であろうが、子供であろうが始末する。世界は俺によって回ればいい。いや、俺が世界を回すのさ」
そうだ。
天下人とは一人でいい。
故に、邪魔な出る杭は全て潰す。
二度と現れないようにな。
そして、その俺の最大の障害になる金色の美女はバッ! と自慢の扇子を開き言う。
「残念ねぇオーマちゃん。でも宝玉ももうすぐで私の身体の一部になるわん。だから、ここでお別れよ」
「お別れはお別れだ。テンパという存在がこの世界からのお別れだ!」
瞬時にブラックマントの前の隙間からすでに握っていたサブマシンガンを射撃する。
先手必勝だ!
いくらテンパでも実弾にはまだ対抗策は無いはず。身体は防弾チョッキみたいな装備をしてたとしても、顔面は無防備。俺の射撃技術は一度のトリガークイックで全ての弾丸を相手の顔面に着弾させる。
一気に仕掛けようとする俺を魔女は止めた。
それはテンパから、宝玉の魔力を感じたからのようだ。俺のレーダーにも、テンパから魔女並みの凄まじい魔力の高まりを感じている。おそらく、魔女が止めてくれなかったら、致命傷を受ける傷を負ってたかもしれんな。そして、その死の商人は悪魔のような声色で言った。
「死なないわよ……もう、何度もこの宝玉を私の体内で慣らしていた時の膨大な魔力が身体の再生力を向上させてるからね。来たければまた、明日にいらっしゃい。明日、私は宝玉と完全融合し、この世界の覇王・テンパ様になるのよん♪」
すると、テンパは何かの魔法を使った。
ズズズ……と俺と魔女の床が黒いゲートとなり二人は呑まれる。
すぐに反応する魔女は俺に手を伸ばし、
「あらあら。ワープゲートね。捕まって!」
「お、おう! また来るぞテンパ! 次はお前を散らす!」
「パッパッパッ。えぇ、楽しみに待ってるわよん。もう宝玉の力はこのテンパ様の支配下になるんだからねぇ……」
金の扇子で扇ぐテンパを睨みすえ、俺と魔女はテンパの罠により、どこかの場所へワープさせられてしまった。




