表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/68

ミニ魔女と死の商人の声

 俺はその後も自慢の黒いゴミ袋でテンパのゴールドキャッスルの地下をステルス移動してるが、突如現れた誰かがゴミ袋の中に小便をした! 捨てるのはゴミではなく小便だと!? 何とも言えない不快なアンモニアの匂いが俺の鼻腔を刺激するぜ! しかも敵はとても小さな手のひらサイズの存在だ。まさかモンスターか? いや、ここにはモンスターではなく人間しかいない。


(じゃあ一体何だ? 何で俺の入ってるゴミ袋にピンポイントで小便など……)


 アンモニアの匂いで頭がクラクラするがふと、俺はそんな奴がいた事を思い出す。

 そして、その憎き存在は俺の目の前で微笑んでいた。


「魔女……」


 俺は再び、テンパの地下エリアでミニ魔女と出会う。

 どうしてコイツはこうも当たり前のように現れるんだ……。


「何故、ここにお前がいるんだ……魔女」


 クルッと無意味に可愛く一回転した俺との戦いで魔力を大きく失ったミニサイズの魔女は、無意味にウインクしながら言う。


「だって、テンパの魔力秘宝・宝玉に用があるんでしょ? 私の魔力じゃないと、宝物庫の扉は開かないよん♪」


「正面扉以外から穴を掘って侵入すればいいんじゃないか?別にお前を頼らなくても方法はあるはずだ」


「そうしたら、テンパに侵入者がいるのバレちゃうよ? バカだねーコウハイ君!」


「! うっせ、散れ」


「ひゃ!」


 ハンドガンを威嚇で撃ち、ミニ魔女を黙らせた。

 相変わらずコイツはフワフワしてる割に冷静でいやがる。

 確かにこの魔女は何をしでかすかわからんが、魔女の魔力じゃないと開かないなら丁度いい。宝玉を奪おうとしてるなら、ここで決着をつければいいだけだからな。


(……使える奴はゴミ袋のように利用してやる。破れたらいつでも捨てられる便利なもんだぜ……?)


 そう、話していると近くの通路に人の気配を感じる。すぐに俺は黒ゴミ袋の中に隠れる。何故か魔女も入ってくる。魔女の体臭なのかいい香りがする……が、狭い。

 目が見えるだけの穴を開けて、外の様子をのぞいた。それは白服の魔術師の集団だった。

 その異教魔術師達はただのゴミ袋か……と思い異教魔術師達は通り過ぎて行った。



「……異教魔術師? 何で奴等がこんな場所に?」


「だから言ったでしょ? テンパは悪い奴等とはだいたい繋がりがあるの。だって死の商人だしね」


「確かにな。悪い奴等とはだいたい友達って事か」


 狭いゴミ袋を破いて脱出し、密着してくるミニ魔女にケリを入れた。肌の感触は女だから気持ちいいが、こんな奴と密着してたら何をさせるかわからん。まぁ、肌の感触は気持ちいいがな。


(テンパとは関わり合いがない筈の異教魔術師達がテンパの城の地下にいる。そうなると、本当にテンパは魔女の言う通り悪の枢軸なのか……)


 魔女の不死を研究する異教白服達に遭遇しテンパを疑う俺だが、


「異教魔術師も今はどうでもいい。とりあえず宝物庫に侵入するぞ。案内しろ魔女」


「アイアイサー!」


「叫ぶな」


「ほげぇ!?」


 ガスッ! とミニ魔女の頭にチョップをくらわし、泣きベソをかくミニ魔女に宝玉のある場所まで案内させた。

ミニ魔女に文句を言われつつ、少し歩くと真っ赤な薔薇が描かれた白い扉がある。どうやらここが地下の宝物庫の行き止まりのようだ。


「警備兵はいないな。罠がある可能性は?」


「無いわよ。ここに罠は必要無いから。入ればわかるわコウハイ君」


「なら、俺から行こう」


 ミニ魔女より先に素早く移動し、俺はその宝玉を守る扉に触れてみる。


「なるほどな……」


 押しても引いても、魔力を使っても開きそうにない。これは、魔女の魔力じゃないと本当に開かない特殊な扉。おそらく、宝玉の力と魔女の力がリンクしてるのかも知れない。


「……確かにここが宝玉がある部屋だな。外からは特におかしな点は無いが、中に入ると宝玉の力を感じるのかもな」


「そうね。んじゃ、行くわよん♪ コウハイ君!」


「叫ぶな。散らすぞ」


 もう一度ミニ魔女にチョップをくらわし、俺達は薔薇が描かれた白い扉をくぐる。

 室内は冷え冷えとした冷気が漂っており、全身に鳥肌が立つ。俺達の目線の先には真っ白な室内に一つの祭壇があり、その中央に赤い球体の玉が鎮座していた。それはとても途方も無い魔力を放ち、空間に影響さえ与えそうな異様な雰囲気を放っている。


「あれが……宝玉」


 人間の血を清めて、輝かせたようた美しい真紅の輝きに俺は見とれた。

 そして、口元を笑わせる魔女は言う。


「触れてみなさいコウハイ君。触れば宝玉の全ての謎が解けるわよ」


「……」


 まるで客を誘う娼婦のような艶めいた言い方をするミニ魔女に多少の興奮を覚えつつ、俺は真紅の玉に手を伸ばす。


「うわあぁぁぁぁっ! こ、これは――!?」


 人の悪霊が具現化したように、俺の周囲に湧き出した!いや、実際には湧き出してはいない。俺がこの宝玉から感じる魔力をそう思っただけだ……そう、魔力を悪霊だとな……。と思ってると、いきなり魔女が光り輝きだした!


「! 何だ魔女?」


 やがて、まばゆい光は晴れ、魔女は姿を現す。

 長い黒髪に人形のように整った顔。フードマントで見えないがスラリと伸びる手足に顔を埋めたくなるやうな豊かな胸。その美しき美貌の魔女は、ミニ魔女から覚醒したのか普通の人間サイズに戻る。自分の髪や手足をじっくりと触れながら確認する魔女は、


「どうやら宝玉に影響されてか減っていた魔力が戻ったみたいね。もしかすると、あの女が近くにいるのかも……」


「魔女よ。この宝玉は人の命で作った魔力の玉だな?」


「そうよ。人間一万人の命を使い生み出した魔力の玉・宝玉。この力を使って私も貴方の世界へワープする事が出来た。今は魔力が減って休眠してるけど、この宝玉の力は今の状態よりも更に高いわよ」


「……!」


 確かにこの宝玉には次元すら超えられる魔力を感じた。

 一万以上の人間の怨念がこもる魔の宝玉。

 ふざけるなよ……。

 これは、これは人間のする事じゃ……。


「……一万以上の人間の恨み辛みが魔力になって増幅されてやがる……だと? これが人間のする事か?まともな人間がこれに触れたら、発狂して廃人になるだけだな。だからこの宝玉の近くに警備兵はいないんだ。これは見るだけでも宝玉から発する魔力を感じてしまえば普通の人間なら精神が崩壊して廃人になり、一貫の終わりだからな」


 この宝玉には迂闊には触れられないな……。

 気を抜いて触れると、この宝玉に魔力だけじゃなく魂ごと吸収されそうだ。

 コイツはヤバイ代物だ。

 そして、こんなものを生み出すのは人としての行いを超えてやがる……。

 死の商人テンパが魔女の不老不死の力を手に入れ、この世界を支配する目的があるのは本当のようだな。

 そして魔女は、


「こんな力を秘めた宝玉だからこそ、宝玉とリンクするここの扉を開ける事が出来るのよ魔女は。歪んだ力を得るには歪んだ事をするしかない。それがテンパの全て。不老不死を望む悪魔の野望」


 冷徹な瞳を受けつつ俺は、今度こそ本当に触れてみようと覚悟を決めて宝玉に手を伸ばす――が、宝玉はそれを察するかのように真紅の発光を見せた。


「何だ!? 急激に光が発してるぞ!? これは――!」


「パッパッパッ!これは魔力秘宝・宝玉。世界を支配する存在が持つべき最高の秘法よん♪ オーマちゃん♪」


 どこかで聞いた事のある、俺をちゃん付けする女王のような甘ったるい口調の女の声が頭に響く。

 この声の主は……。俺は久しぶりに再会した、金髪の美しい巻き髪の美女を見た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ