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ゴールドキャッスルの地下を駆けるオーマ

 メスパーとの激戦の後、すぐに追撃を受けた俺は襲い掛かる魔術師達に狙われている。

 死の商人テンパの宝物庫への道があるであろう地下道にて、俺は追っ手を始末しつつ駆けていた。

 突如、俺の全身に電撃が走る――。


「――!? ぐおおおおっ!」


 ズバババッ! と更に爆撃魔法を浴びて地面を転がってしまう。メスパーとの戦闘の疲れで隙が生まれていた俺は意識を失いそうになりつつ、目の前に現れた魔術師達を見た。口元に薄笑いを浮かべる魔術師リーダーの男はすでに勝ったような口調で言った。


「我々はこの機会を狙ってたんだよ。魔法少女だろうと、どうせメスパーは勇者魔王には負けると思ってたからな。だが、魔法少女としての意地でそれなりにダメージを負わせると踏んでたが、想像以上だったようだ」


 すると、その魔術師達は俺の周囲を取り囲むように動いた。突然の奇襲により全ての武器を奪われた俺は、溜息をつきながら周囲を見渡す。


「……どうやら、囲まれたようだな」


 身体が痛くて動くのも、反応するのも面倒だ。

 魔術師リーダーの男は言う。


「君の武器は便利だねぇ。これで殺害してあげるよ。銃というのは栗の実のようなサイズなのに殺傷能力に優れてて感心するね。せめてもの情けだ。これで君を殺してあげよう」


「やめておけ。お前達魔術師が銃なんて使えるわけがないぜ」


「このトリガーを引けばいいだけだろう? 使い方はテンパ様から聞いて知っている」


 チャキ……というハンドガンの音がし、俺を取り囲む魔術師達は銃口を俺に向ける。絶対的な自信を崩さない魔術師リーダーに対し、堂々と言ってやる事にした。バカは死んでも治らないからな。


「なら撃ってみろ。残念だが散るのはお前達だ」


「この状況はもう死が確定しているんだよ。今の貴様には弾丸を回避出来る体力も魔力も無い。死を受け入れろ。そしてテンパ様の宝玉の糧となるのだ」


「女の尻に敷かれて楽しいか? お前達は女の靴を舐めさせられて喜ぶ家畜だなぁ、おい?」


 ヘラヘラと笑う俺の瞳に激昂した魔術師リーダーはブチキレて叫んだ。


「減らず口を! 撃てぇー!」


 魔術師達は構えたハンドガンを一斉に撃った。瞳を閉じる俺はその音を全て聞いた――。

 全身に鉛玉を浴び、死のダンスを踊る俺は存在しなかった。

 スッ……スッ……とスローモーションのように無駄の無い動きで全ての弾丸を回避した。そして、周囲の魔術師達は一斉に倒れた。そう、自分達の撃った弾丸を浴びてすでに絶命してるんだ。自分の魔力で生み出した銃の癖を知ってるから全ての弾丸を回避し、同士討ちにさせてやったのさ。

 運良く生き残った魔術師リーダーは床にうずくまりながら腹部から溢れる血と痛みに絶望しながらこの状況を呑み込めてないようだ。面倒だが説明してやる事にする。

もっとコイツには苦しんで欲しくなったからな。


「……というわけだ。だから言ったろう? 魔法を使ってる奴が、銃を使えるかバカが」


「ぐあぁぁぁ……自分の銃の癖を知ってるから同士討ちなんてさせるとはな! やってくれたな勇者魔王オーマ!」


「人の武器を勝手に使っておいてそりゃねーぜクソ魔術師が」


 弾丸が直撃した腹部に蹴りを入れてやる。

 魔術師が五月蝿く絶叫し、のたうち回ってやがるな。

 鬱陶しい限りだ。

 その魔術師に俺の武器に対する考え方を教えてやる。


「一度魔力で武器を作ればすぐに使えて便利だ。けど、銃も弾丸も重みがある。あまり装備が重くて機動力が下がったらこっちが魔法で蜂の巣にされるだけだ」


「……殺せぇ! そして殺されろ! テンパ様は勇者魔王といえども勝てはせぬ! 宝玉を扱えるテンパ様こそ最強なのだ! フハハハハッ!」


「そうか。なら散れ」


 俺はその半狂乱で笑う魔術師の脳天をハンドガンで撃ち抜いた。

 そして、ダミーバルーンのゴミ袋勇者魔王を魔力で作成し、地上に向かって打ち上げた。

 これで俺が地下から脱出したと思うだろ。

 これで俺のステルスゴミ袋作戦が発動出来るぜ。





 俺は十八番おはこのゴミ袋を利用したステルスモードでテンパの城・ゴールドキャッスルの地下道を進行していた。

 今の目標は現代に戻る為のゲートを生み出す為の魔力を得る為の秘宝。魔力秘宝の宝玉だ。

 魔女に近い凄まじい魔力のある宝玉だけ盗んで自分で使い、現代に戻るゲートを開いて戻ればいい。そうすれば異世界の魔女とも死の商人テンパとの関係も無くなり、俺は現代にて勇者魔王としてヒャッハー! な覇王になりハーレムを形成し、地球全土の支配者となるのだ! 俺、最強!

 と、そんな妄想をしつつ俺はいつも通り、敵地でのステルス移動でひたすら進む。

 黒いゴミ袋で移動しては止まり。移動しては止まりを繰り返す。

 ゴミ袋に目を二つ開ける分の視界しかないが、俺はダルマさんが転んだの要領で上手く移動と停止を繰り返し敵地をステルスで進む。停止する場所も道の真ん中とな変な場所に停止出来ないから、これはかなりの神経を使う常人では不可能なステルス技法なんだぜ。


(流石に迷路のように入り組んでやがるな。もしもの時の対侵入者用の地下施設だな。まぁ、俺はただ宝物庫目指して進むだけだ)


 すると、途中の道で白服の異様な雰囲気の魔術師達を見かけた。

 この連中はこのゴールドキャッスルに来る前のミストジャマーの森で見かけた――。


(ここに魔女の不老不死を研究する異教魔術師か……。地上にはいない異教魔術師がこの地下エリアにいるとなると、やはりテンパは異教魔術師達との繋がりがある。奴等の魔女研究のスポンサーって事か。となると、魔女の言ってたテンパの〈不老不死計画〉もどうやら本当のようだな……)


 異教魔術師なんて相手にしてられるか。

 あんなキチガイ共を相手にしてたらこっちもおかしくなるぜ。

 異教魔術師なんて変な宗教団体と同じでロクな連中じゃねーよ。


(……)


 そして、じっと待機して異教魔術師達が去るのを見届け再度、俺は宝物庫があるであろう奥のエリアへと進む。そろそろどこかの部屋に入りここのフロアマップを見つけないとならん。実際、あるかどうかはわからんがせめて何かこの地下エリアに関するものを発見してから移動しないと目標も無く闇雲に進んでるだけになるから、目標を持つ事で精神の減りがダンチで違ってくるからな。


(……ん? あそこの扉が開いたな。異教魔術師が出てきた。よし、あそこに入ろう)


 俺は一人の異教魔術師が出てきた一つの部屋の中を確認し、中の人間の不在を確かめるとその室内に進入した。そこの机には少し前までいた異教魔術師の一人が書いていたメモがある。そこには、この地下エリアへの侵入者が現れたからいつも通りに過ごしつつ泳がせ、侵入者を始末出来る瞬間にだけ魔力を解放して始末せよとの魔力通信がされていたようだ。


「侵入者……俺の侵入がバレてたか? 侵入した場所が場所だけに見つかるもの早かったのか? クソが……」


 自分が異教魔術師達に泳がされている屈辱感を感じつつ、俺はいつ攻撃されるかわからない状況を脱するには先制して仕掛けるしかないと思いつつ、ハンドガンを構える――と、


「魔王の左手がやけに疼くな。まるで強力な魔力が近くにあるかのような反応だ……異教魔術師達に反応してるのか? いや、この魔王の魔手は魔女レベルに近い存在じゃないと反応はしない……魔女に近いレベル?」


 ふと、俺の思考に憎き魔女が浮かぶ。

 同時に、魔女のいた痕跡を探し出す。

 魔女が触れたであろう場所を魔王の魔手を探知機のように使い、反応が強い場所を探した。


「……見つけた。魔女は冷凍箱に長い時間振れていたようだ」


 そこは冷たい物を保管する冷蔵庫の簡易版・冷凍箱だった。これも俺が暖かい物しか食べない異世界の人間に冷たい物も美味いと教えると同時に、食品の保管場所として使えると認知させた物だ。


「ここに魔女のいた痕跡がある……だと?すると、次に魔女を見つけた場所が宝物庫という事になるな。そして、やはり魔女は食いしん坊だな。ククク……」


 微笑みつつ、勇者烙印の五芒星の力を解放し、勇者の能力の一つ・超直感を使い魔女の通ったであろうルートを感覚で探す。ステルス移動と超直感のダブルで神経を削る事をしなきゃならないけど、やるしかない。何せ俺は勇者魔王だからな。

 と、次の瞬間、俺のいる部屋の扉が開いた!


(マズイ! 隠れろ!)


 俺は黒いゴミ袋で全身を隠し、ただのゴミ袋として部屋のオブジェのように動かなくなる。二つ目ののぞき穴から見ると、さっき出て行った異教魔術師が帰って来た。どうやら小便だったようだな。


(……さて、どうするか?)


 ここで侵入者としてバレてない俺が動いたら侵入者が二人という事になる。そうすると、おそらく異教魔術師達は魔女を泳がせる事を辞めて一気に勇者魔王と魔女を始末する為に決戦となるだろう。まだテンパとの協力関係は壊れて無い。奴との関係の良さをゴミ袋のように利用するには、ここはひとまず待機してた方がいいか……)


 と、無理に異教魔術師を始末せず、あくまでテンパとの関係も壊さないように宝物庫に侵入して宝玉だけ戴く作戦を優先した。無意味に敵を作るのは今は辞めた方がいいからな。

すると、最悪な事に、一人の異教魔術師が手に袋を持ちながら俺の方向に近づいて来やがる。


(!? おいおい、完全に気配を消してる俺に気付いた? それとも……)


 ツツー……と冷や汗が流れる俺はハンドガンでいつでも反撃出来るようにゴミ袋の中で構える。

 すると、その白服の異教魔術師は上で結ばれるゴミ袋を広げ出す。

 どうやらゴミを捨てるようだ。

 ゴミを捨てて、チャチャッとゴミ袋を上で縛るとそのまま通り過ぎた。


(……ふぅ。中をちゃんと見ないアホな奴で助かったぜ)


 ゴミ袋の中の俺はほっ……と安堵する。

 ちなみにゴミを捨てられて身体が汚れたと思われてるかも知れんが、実はそうじゃない。

 俺のゴミ回避方法はこうだ。

 ゴミ袋に入れられたゴミを氷結魔法を纏う左手の魔手でゴミを受け取り、そして敵がゴミ袋を閉じた瞬間に火炎魔法で燃やし尽くす。こうすれば俺の被害は、焦げた匂いだけだ。まぁ、焦げた匂いは辛いけど侵入がバレるよりはマシだ。

 そして俺は魔女の痕跡を超直感で感じつつ、魔女の向かった先であろう魔力秘宝の宝玉がある場所へと進む。



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