Traction
後ろ向いてちゃ進めない
「断る。もう車で人を殺すのはごめんだ。」
眼光は鋭く、彼の決意を剣へと変える。
義弘はタバコをくわえてどっしりと構えていた。
「お前、なんか勘違いしてねぇか?」
わざとらしく首を傾げ、煙を吐いた。そして、とてつもなく重いその言葉はゆっくりと周りを包み、そして威圧した。
「勘違い?親父が何一つわかってないだけだろ?」
ガキの癖に生意気な口ききやがって
義弘はそんな心の声が聞こえてきそうな態度を取ると、また長い煙を吹きながら続けた
「それがお前がやることなのか?メカニック言うことなのか?」
いよいよ哲学論にたどり着いたようだ。流石に友樹も得体のしれない何かに警戒していた。
「メカニックとして車で人を殺さないってのは立派なこった。だから守ってみろよ。お前の武器で。お前の武器は言葉じゃねーだろ?お前が殺さない車を作るンだよ。お前がドライバーを守るんだよ。いいか、ドライバーってのはな、走り出しちまえば己を守ってくれるのは己が腕と車しかないんだよ。本人以外でドライバーを守られるのはメカニックしかいないんだ。まさか、それができねぇっつー薄っぺらな覚悟じゃあるめぇな?進め!前に!地を這い壁にもたれても前に!」
気圧が二倍にも三倍にも思える張り詰めた空気が漂う。
「俺がやる」
その空気を破り友樹が口を開いた。義弘は遠くを見ながら頷くだけだった。
「パーツを揃えるのに半年かかる。それまでに150万揃えとけ。」
気迫のほと走る友樹のその言葉は今まで聞いたことのない、そして自分のそれとはレベルの違う意志があった。頑なに死を拒む意志が。
「150万?半額で...済むのか?」
「阿呆。半分は俺持ちだよ。つってもお前の150万のうち80万は工賃だけどな?」
80万!?高すぎる。いくらなんでも高すぎる。
「ちょっと待てよ、高すぎるだろ(笑)」
「阿呆。金は責任への対価だ。でもなきゃ居眠りしてる政治家が金なんて貰えないだろ?(金もらってる以上責任果たせや)だから、80万は俺の持つ責任への対価だ。だからそれなりの車にする。そして、性能も保証する。ただ、1つ注文かある。いくらスバル車と言っても、事故車じゃ話しにならない。だから、半年間どこにもぶつけんじゃねーぞ?」
なかなかハードな注文だ。法定速度30km/hの所をトップスピードにして160km/hで駆け抜けてるんだ。そんな保証なんてできる訳が無い。だが...するより他は無さそうだ。
「わかったよ...」
半年後が待ち遠しい。
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title:招待状
差出人:株式会社メビウス
こんにちは。株式会社メビウスです。今年もLUCIORAを開催する運びとなりました。そして、ここにあなたの参戦権を認めます。
参戦される場合、下のJoinをクリックし、必要事項をご記入のうえ参戦してください。
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今年もこの通達が来た。LUCIORA、大手アフターパーツ制作会社メビウスが主催する非公式の公道イベントで、夜中の峠を蛍が飛び回るように縦横無尽に舞う走り屋達の祭りだ。選ばれた走り屋だけが出走を許され、最速を競う。
8/1の夜22:00。全国の公道で一斉に予選がスタートする。そして勝ち残りのトーナメント戦が幕を切るのだ。そして、チャンピオンシップ最終ステージはいつも同じ。箱根。その頂きに立たんがため、北海道から沖縄までの全国から選ばれた走り屋が走り出す。
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下記をご記入ください
氏名:神谷 蒼汰
性別:male
年齢:28
使用車種:02年式HONDA NSX
エンジン形式、吸気方式:3.2L V6 NA
最高出力:500PS
最大トルク:36kgf
乾燥重量:1000kg
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ようこそLUCIORAへ
なんか最近地味ですね。
次回からはバトルシーン入れます!(笑)