心の力とは
なんとなく気まづい雰囲気で教会の外に向かって歩いていると、不意にエリンが口を開く。
「この後、どうするの?」
「どうするって?」
捕まっていた女の子を解放しているマヤを見ながらシズエは聞きなおすとエリンも横に立っていたレイラを横目で見ながら懐から紙を取り出した。
「これなんだけど」
そう言って取り出したのは、マヤの似顔絵が書かれた手配書のようなものだった。
「ナニコレ?」
少女を解放した僕はその紙を見て目を見開く。
だってそこには完璧に今の僕が描かれていたからだ。
「すごい綺麗にかけているね……」
思わず驚いてそう口にすると一人、レイラさんんが舌打ちをしてから
「エイングめ、ここまでやっていたのか……」
そうボソッと口にしていたのでたぶん知り合いなのだろうけれど、かなり怒っている。
そんなレイラさんの方を横目で見ながらもミレーネちゃんを妹さんと会わせてあげてまた少し気まづかったけれどみんなの輪に入ると、レイラさんに手を掴まれて教会の入口の反対側に連れてこられた。
それをシズエはオロオロとしながら、エリンは何か言いたげな感じで見送っていた。
そして連れてこられたのはいいのだけれど、お互いに沈黙する。
えっとどうしようか?
二人を待たせているしここは何か言って……
そう思った時にレイラさんがギュッと抱きしめてくれて、そして泣かれた。
「どうして何ですか?
どうしていつも無茶ばかりするんですか?
王女様が生まれ変わって、もう無茶しないような人だと思っていたのに、なんで無茶をするんですか?
どうして私を置いていくんですか……」
「ごめんなさい」
それはレイラさんの心の叫びなのだろう。
たぶん心のどこかでわかっていたことだった。
前までの大好きだった王女様が死んで、そして次の王女様も無茶をして同じことになればそれは嫌なはずだ。
責任を感じるはずなのだ。
ホントにこのゲームはリアルに近いからこそ、わかることがあった。
そうして少しして泣きやんだレイラさんは、少し距離をおくと一瞬決心を決めたように目を閉じてから口を開いた。
「それでは、マヤ様。
先程のことを説明します。」
「先程のこと?」
「ええ、先程のマヤ様の体が思うように動かなくなってしまったことについてです。」
「え?
それに理由があったの?」
そう気にはなっていたけれど、あの現象がなんなのか正直なところ自分では全くわかっていなかった。
だけど、それをレイラさんは知っているようだ。
「あの、体が動かなくなってしまったのは、体が恐怖に駆られたからです。
ステータスの中に心力というものがあると思います。
これは本当に心の力を現したもので、これが低いほど、少しの心の動揺で体も心もダメになってしまうのです」
「それじゃ、最後の方にさっきの兵士に恐怖を感じたのって……」
「ええ、そうです。
マヤ様が少し不安に思っていたのがまず体に移り、次に心に移ったのです。
だから最後は恐怖に染まったのです。」
「そっか……」
でも納得はいった。
心力がないのは、引きこもっているせいなのでなんともいえないけれど、でもそれなら心力を強くしよう。
このゲームはリアルとほとんど同じだ。
だったらもしかしたらこの世界で少しでも心の力が強くなれば、元の世界でも強くなれるそんな気がするから……
だから僕は強くなろう。
そう決めて僕は両手を握り締めた。
レイラさんが嬉しそうでいて悲しそうに笑っているのを知らないまま。