戦闘の敗北
何が起こっているのだろう?
ホントに体が言うことを聞いてくれない。
先程のようにうまく動いてくれない体はガクガクと震える。
なんで?
どうして?
そしてこちらに男が近づいてくるたびに更に体はビクリと震え、何故か顔も恐怖に彩られるようになる。
なんで、なんで……
何度も自分にそう言葉をなげかけるが返ってはこない。
どうして体が動かなくなったとか、それがだんだんとどうでもよくなって、ただ目の前の男が怖くなってくる。
どうして?
怖い、怖い……
そして男が近くに来た時だったそれが飛んできたのは。
ビュんという音がして何かが飛んでくる。
兵士の男はそれをバックステップでやり過ごした時、勢いよく誰かが飛び出してきた。
バスターソードのような大剣を持って髪はショートカット、そしていつものように大きな胸だけどその横顔は憤怒に燃えていた。
それはまさしく怒っている表情。
話しをしていたときのような優しい笑顔をふりまいているような感じではなく、まるで紅蓮のような……
それに驚いたような表情をする僕と、新しい新手の登場に嬉しそうにする兵士の男の視線を受けながらシズエは前に踏み込んだ。
そしてすぐに上段から振り下ろし攻撃を放つがそれはすぐに男の剣で止められる。
だけどそれを乱暴に押し込みにかかるシズエだったが、兵士の男が滑らすようにそらすことによってかわされる。
だけどすぐに体勢を崩しながらもシズエは大剣を振り上げる。
普通に考えれば、大剣を目一杯の力で振り下ろした時に、人にかわされれば体制は崩れる、それも結構ひどく。
なので通常であればその後すぐに大剣を振り上げることなど不可能に近いのだ。
だけれど、シズエはその体の柔らかさで、引くように剣を持ち上げてみせた。
そうまさしくバク転をするような感じに振り上げた剣はだけどかわされる。
そしてシズエもそのままの遠心力で片手でバク転をホントにして後ろに少し距離をとる。
だけどすぐにまた突っ込んだ。
今度は横になぎ払うように振るうがそれは簡単に避けられて、すぐにバックステップをして距離をとられる。
そして男の兵士はこちらを見て、更に目の前で剣を構えているシズエを見てからすぐにまたこちらを見てやれやれといったように肩をすくめて
「どうやら、あなたのお仲間が到着するようだ。
さすがに俺としても多数の相手をするのは嫌いではないが好きでもない。
ホントにしたいのは強者一人との戦いのわけだが、どうやら今のお嬢さんは我を忘れてあまり強くない。
それに俺としては王女様、あんたともう一度真剣な戦いをしてみたいものだ。
だからこそ、ここで失礼しますよお嬢さん方」
そう言うと身を翻して走り去って行った。
そしてそれを見ていたシズエはそいつが見えなくなるのを確認してから僕の前に座り込んで、手で体の隅々まで触ってくる。
「怪我はない?
大丈夫?」
「うん、大丈夫」
そう何とか笑顔で言ってからゆっくりと体を起き上がらせた時にまた教会に入ってくる足音が聞こえる。
「マヤ様大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ」
慌ててこちらに近寄ってきたレイラさんにそう声をかけられてすぐにそう明るく返す。
パン……
だけどすぐにその音が辺りを支配して、更に目の前で泣いているレイラさんを見て、僕は叩かれたことがわかった。
後からやってきたエリンと、心配そうに見ていたシズエは共に少し両者を心配そうに見ていたが僕はすぐにレイラさんの顔から目をそらしてしまった。
そしてその後は少し気まづいままその教会を後にした。