ノスタイルの街は
慌てて立ち上がった僕にその茂みから出てきた人物が抱き着いてきた。
「マヤ様ー」
それを僕は無我夢中で背負い投げる。
「うわぁー」
「へぶぅ……」
盛大に腰を強打するレイラさんに投げた後で気づいて、駆け寄る。
「ご、ごめんなさい」
「いえ、私が勝手に抱き着こうとしただけですから投げられるのも仕方ないです」
そしてそんな僕とレイラさんを見下ろすようにして呆れた顔をしたエリンがこちらを見て
「何?
コントでもやってるの?」
そう言うので僕は思わず何も言えなくなるがレイラさんはこちらにしなだれかかってきて
「そうですよ。
愛情のコントです」
とだけ言って、それをまた呆れたようにエリンがやれやれと首を振った。
それを見てニコニコと笑っていたシズエはこちらに手を差し出して、僕もそれを取る。
そしてしなだれかかっているレイラさんを無視してシズエは僕を立ち上がらせると、前を向いて言う。
「そろそえお行こうー」
「うん」
僕もそれに同意して、その後はそのまま四人で前に進んだ。
なんというかよかったのだけど、その石畳の上を進んで行くと、森の外に出ていた。
草木の匂いや肌の擦れから解放されて少し嬉しそうなエリンと、敵と戦闘になったときから思っていたけれど、実は戦闘が好きなシズエが森を出て安全になったことで少し残念がりながらも次の街に向かうのに嬉しそうだったり、森を出てすぐに嬉しそうに伸びをするレイラさんがいたりしてとうとう僕たちは新しい街の近くまでやってきた。
ノスタイルと呼ばれるその街はそれなりに近づくとその街の雰囲気がすぐにわかった。
それは鉱山都市と呼ばれるものだった。
金属などで作った街並みや外壁も金属の金網の塀に囲まれていた。
「すごいね……」
「そうですね、私もこれまで見てきた街のどの外観とも違うわね」
「うん、ほんとになんだか近代化した都市みたいで、魔法の世界って感じがしないね」
「……」
そしてそれぞれがそれを見た感想を言っている中でレイラさんだけが無言だった。
それを僕はおかしいなと少し思ったのだけれど、でもすぐにこちらの視線に気づいてなげっキッスを飛ばしてくるレイラさんを見て、なんだか少し考え事でもしていたのかな?
なんてことを思っただけだった。
それにしてもここからどうするかだね。
そう既に結構時間がたっているので、一度ログアウトした方があとあと楽に冒険に向かうときにいいと思う。
ということでノスタイルの街に入ろうとしたが……
「追い返されたね」
「そうですね、なんででしょうか?」
「許可がいるっていってたね。
許可証か何かなのかな?
どこでとれるんだろうー?」
そう追い返された。
何か許可証が必要だとかで……
もちろんそんなものを持っていなかった僕たちは入れなかった。
なので現在はノスタイルの街のすぐ横にあった集落の宿を借りていた。
そして僕たち一同はログアウトした。