新しい街へ
「ここを行かないといけないの?」
そして森を前にしてエリンが少し嫌そうに言った。
それもそのはずで、この世界はリアルにより近いように作られている。
それは物の形や匂いだけではなくて痛覚を除いたほぼ全ての感覚が再現されているため、草木が肌をこするたびにちょっとこそばゆい感触が太ももの絶対領域や服から出ている場所にあるのでこういう場所を通りたくないのだろう。
といっても例外は存在していて、僕は男だからそのくらいのことは気にならないし、シズエもそういうのを気にしないのか、どんどんと進む。
そしてそれに釣られて、レイラさんが僕の後ろから
「ああ、でもこのこそばさも、マヤ様にやられていると思うとすごくイイ!」
と小さな声で言っているのを聞いて更に僕は速く歩いていると諦めた様子のエリンがついてくる。
そういう構図になって少し進んでいると、下にムニュリとした感触がする。
それはどうやら隣を歩いていたシズエも同じだったらしく、僕たちは顔を見合わせて下を見て……
悪夢と出会った。
そこにあったのは恍惚な表情で上を見上げる顔だった。
ナニコレ?
え?
「きゃぁーーーーー」
「ま、マヤやん?」
そしてパニックを起こした僕は隣を歩いていたシズエの手を握りしめて前に全力で走りだした。
何?
なんなのあれ?
ほんとになに?
頭の中がぐるぐると混乱の渦で埋め尽くされるのを感じながら走り続けていると背中を強く叩かれた。
そこでようやく自分が誰かの手を握っているのを思い出した。
そして慌ててその握っていた人であるシズエに頭を下げる。
「ごめんなさい、シズエ」
「ううん、仕方ないよ。」
「でもボクが驚いたりしなかったらあんなことにはならなかったから……」
「うーん?
あたしだって驚いたんだから、それくらいは気にしなくても大丈夫だよ。
それよりもこれからどうするかだよー。
どうやってみんなと合流しようかだね」
そうシズエに慰められて僕はなんだかどちらが男なのかがわからなくなる。
そう思いながらも周りを見渡す。
どうやら結構な奥の方まで来てしまったらしく、どこにもエリンとレイラさんの姿はないので完全にはぐれてしまったようだ。
もしかしてと思い地図を開いて仲間の場所を確認しようとするが、さすがリアルオンラインと言われるだけあって、リアルな冒険をするとき、得に山や森などに入ったときなんかは圏外となることがあるけれど、それと同じ状態になっているらしく、全員の場所は記されていなくて自分の場所ですらここであっているのかが不安になるような位置に記しがついている。
でもどうやってこういう機能をやっているのだろうか?
リアルに近いといってもこの世界には衛星なんかないのに?
なんて関係のないことを考え始めたところで、やっと考えが脱線していることに気が付いて、慌ててもう一度周りを見渡したところで周りの草木などがざわついているのに気が付く。
「敵?」
「そうみたいだね」
既に大剣であるバスターソード風の剣を抜いていたシズエは周りを警戒している。
僕も剣を抜いて周りを見た。
そこでは木の魔物と思われる、よくいる木のお化けのようなモンスターがいた。
それもかなり集団でいるらしく、既に周りを囲まれていた。
そしてその木のお化けたちの攻撃手段は、もうよくあるあの触手のような木の根だ。
「この数はあたし絶対無理なんだけど……」
「えっとそれじゃ、これはどうするの?」
「うーんと……
ここはあたしのお色気でなんとかするよ」
「え?
ということは……」
「うん。
あたしはここであの触手が体を蝕むのを耐えるよ」
「そんな、シズエ……
ボクも一緒に戦うよ」
「ううん、大丈夫。
あたしにまかせて。
それにあのヌルヌルの触手に可愛いマヤの裸体が蝕まれるのは見たくないよ」
そう言ってシズエは木のお化けの方を見ると、触手が自由自在に動いているのが見えた。
僕はその触手の動きに鳥肌をたてつつもシズエが捕まったときのことも考えた。
そう、シズエは僕と違って仕草とかでわかるけど女の子だ。
そしてこういうことを考えるのはあんまり好きじゃないんだけど巨乳だった。
そんなシズエが捕まるとほんとにこれはRPGゲームなのか?
エロゲーにもなりえるんじゃないのか?
などのことになりそうなのだ。
そうなったら嫌だ。
そう感じた僕は剣を強く握りしめた。