レイラさんの闇
うう、恥ずか死ぬ。
そう思いつつも席に座りなおす。
「大丈夫ー?」
隣にいた女の子が心配してそう言葉をかけてくれるので僕はブンブンと首を縦に振って大丈夫ということを伝える。
といってもまだちゃんと話しをできていないのでどうにもできないけれど……
よし、ここは心を決めてやらないと……
僕はとうとう心に決めてスプーンをギュッと握り締めると横にいた女の子に話しかけてみることにする。
「あ、あの、お名前はなんていう、いうんですか?」
「あたしー?
あたしはシズエだよー。
君は?」
「あ、ボクですか?
えっと、まにゃ……マヤです」
か、噛んだー……
本当に恥ずか死ぬ。
「可愛いね」
するとそんなことを言われて僕は慌てて首を横に振った。
そんなことないんです、僕はリアルでは男なんですから!
そんなことを心の中で思っても言葉にはできない僕はあわあわとするだけだ。
それをシズエさんはニコニコと見ていてくれる。
どうすればいいんだろう?
そう思いつつもどうにもできないので僕はただあわあわとしているだけだ。
そんなとき、お店のドアが音を立てて開いて人が入ってきた。
それにみんなで注目するとその入ってきた相手はついさっきまで見ていた顔。
そうレイラさんだった。
レイラさんはこちらに気づくとずんずんと勢いよく僕の方に向かってくると僕の腕を掴む。
そしてそのまますごい勢いで腕を引っ張られて引きずられるようにして僕はそのお店から連れて行かれた。
「お金……」
お店からかなり離れてからやっとそう呟くことのできたけどレイラさんはまだこちらの方を向こうともしない。
どうしたんだろうか?
レイラさんらしくない行動だった。
レイラさんといえばいつもは頼りがいがあって、そして綺麗な人なのに、先代の王女様のことになると急に変な感じになってたけど基本的にはこうゆう無理やりなことはしないはずだ。
性癖もドМなんだし……
なのに今は掴んでいる腕にかかっている圧力も今はリアルではないのでセフティーがかかっていてどれほどのものなのかがわからないけれど、それでも相当に力を込めているのがレイラさんの手から伝わってくる熱でわかる。
本当にどうしたのだろうか?
そう思っているとレイラさんがこちらを向いた。
その顔は涙に濡れていた。
それを見てどうしたのとか、なんでとか頭に浮かんだけれど、それもすぐに頭から消え去る。
それはギュッと抱きしめられたからだ。
そして耳元に口を寄せてくると
「マヤ様、もう消えないでください。
私の前からいなくならないでください。
私にはもうあなたしかいないのです。
一人にしないでください。
もうあんな気持ちになりたくないんです……」
そう言われた。
そっか、それはそうだよね。
僕はレイラさんからすれば先代の王女様の生まれ変わりのようなものだ、そうなると普通に考えて僕のことを大事にするのは当たり前だ。
でもなんでここまで先代の王女様に入れ込んでしまったのだろうか?
それも知りたかった。
それでもそれを聞くのは今じゃないと考えた僕はただゆっくりとレイラさんを抱きしめた。
うん、決めた。
最初に僕がやることはこのレイラさんをもう少し強くするということだ。
そうだ、僕がやらないといけないことだから……
僕はギュッと拳を握った。