さぁ街の中に入っていきます
街の中に入ると、予想はしていたがかなりの活気があり、プレイヤーなどがやっているような露店もあった。
「すごいですね」
その姿に圧倒されながらそう口にすると、レイラさんも笑顔で頷く。
とりあえずこの人ごみの中であまり動きまわるのも得策ではないのでまずは宿屋をとることにする。
「うーん……
どのあたりの宿屋がいいですか?」
「そうですね、それなりに不便でないところがいいですが、この人だかりですから、それも厳しいかもしれません。」
そう言われて考える。
確かにこれからこの街でいろいろ情報収集を行うにあたってそれなりにいい位置に拠点になる宿をとることで、これからの冒険をしやすくするのだ。
といっても僕たちがやってきたのはこのゲームが実装されてからもう一週間がたとうとしている。
そんな遅れてきた僕たちにはこういう活気のある場所ではあまりいい場所はとれないだろう。
そう思っていたときだった。
NPCかプレイヤーか、今はまだ僕には見分けはつかないのでなんともいえないがその女性と思われる人が宿屋と思われる場所から人を追い出しているところだった。
「出ていきなさい。
ここはなんといっても男子は禁制です。
部屋があいていようと、無理ですよ」
そう言ってプンスカしている。
へー、男子禁制か……
まぁ、僕はリアルが男だしこういう宿に泊まることはできないよね。
そんなことを考えて通りすぎようとしたとき、後ろにいたレイラさんがその女性に近づいた。
「あの、私たちを泊めてもらえませんか?」
「うん?」
ってちょっとー……
僕男だって……
などという願いもむなしく、レイラさんは男装ように着ていたローブを脱いで、さらに頭につけていた特殊な魔法ウィッグを(アイテム)を装着しているのも外すとそこからポニーテールの髪が伸びる。
それに一瞬見惚れる。
そうレイラさんは残念な美人ではあるが、髪はポニーテールで綺麗に整えられていて、目はきつめとかではなくて少しタレ目でどちらかというとぽわぽわとしたような雰囲気だが体のラインは引き締まっていて出ているところはでているというすごいスタイルがいい。
そんなレイラさんが女性ということを確認した宿の女性はこちらにも目線を向ける。
これは僕も男装をとかないといけないみたいだ。
ここで男装といってしまうのは正直なところ不本意なのだけど、それもこの際は仕方ないということだ。
ということで僕も着ていたローブ風の上着を脱いでウィッグを外す。
すると肩甲骨下あたりまで髪がばさりと伸びる。
「おお……」
そしてそれを見た宿屋の女性は何故か唸ると何度か頷いて
「それじゃ、お二人ともどうぞ」
そう言って中に通してもらった。
脱いだ服は小脇に抱えつつその宿屋の中に入ると少し甘い香りがするのは気のせいだろうか?
この女性特有の空気や匂いは苦手であるが自分も現在は女であるのでなんともいえない。
そんなことを考えつつ部屋に通してもらった僕とレイラさんは、これからのことについて話しを始める。
「それでここからどうしましょうか、マヤ様?」
「うーん、とりあえず情報収集がこれからの目的と考えて、まずは街にでませんか?
というよりも街に出てみたいです」
そう正直にいうと、もう宿もとれたのでここからは自由に街の中を歩きたいのだ。
それは今まで散々一人でいたのでこういう人が多いという場所に飢えているのだ。
それに今は自分であって自分ではないのだ。
それだけで僕はなんとなくやっていけそうな気がした。
そうこの空気の中に飛び込めそうな気がした。
そんなキラキラと目を輝かせた僕を見たレイラさんはやれやれというように苦笑いをすると
「いいですよ」
と言ってくれた。