いざシュトレイヌへ(まだ中には入らないよ)
ということがありながらもその後は敵などに出くわすことはなく森を抜けた。
そうして少し遠くに街が見える。
たぶんあれがこれから向かう街シュトレイヌだと思う。
距離でいうところの三キロくらいだろうと思うのでどうやらこのあたりが暗くなる前に街につきそうだ。
道に出たため見渡しはいいので警戒を少しとく。
そうしてレイラさんと並んで少し話しをしながら街へ向かう。
「あの、レイラさんのその剣ってどうやって覚えたんですか?」
「あれですか?
前の王女様に教えてもらいました。
足が動かないはずなんですけど上半身だけで太刀筋がものすごくて、私は勝てたことがありませんね」
「そ、そんなにですか?」
「はい、そうですよ」
どうやら現在のレイラさんの剣のルーツになったのは先代の王女らしい。
それにさっきの話しを聞いてみる限りではその先代の王女様というのはどれほどすごかったのか、逆に知りたくなる。
「それじゃ、先代の王女様ってどんな人だったんですか?」
「そうですね。
私としては、かなり憧れの方ではあるのですがそれだけではありません。
私はあの人のことを本当に愛していました。
あの人間性に志も……
全て尊敬しておりました。
そんな方です。
といってもこれではただの私の感情論にすぎないので他の人からの言葉を借りると、聖女の王女や発展の王女と言われていました。
それは私と出会ってから、私を使いながらいろいろな書物などを書かれ、それが全て国の発展に役立てられたのですからすごい人なのです。
でも本当にすごいのはその書物を書かれているときの生き生きとした表情が綺麗だったことでしょうか……
ってまたすみません、また私の感情論が混じってますね。」
「いえ、僕にはそういうものになるのは無理ってわかりました」
この話しを聞く限りでは、僕には到底追いつけそうにない遠い相手であるようだ。
それはそうだ。
僕のことが生まれ変わりであるなら、年齢的にいうと三年前はまだ一二歳ほどだ。
そんな少女が、剣の腕、頭の良さなどをおいても一級品だったのはそれこそ血のにじむような努力をしてきたというのがわかった。
すごいという言葉しか頭の中に出てこなかった。
でも気になることが一つあった。
「それじゃ、そんな優秀な先代の王女様はなんでレイラさんをそんなドМな人にしたのですか?」
そう、唯一の疑問を聞いてみると、レイラさんは苦笑いを浮かべながらその内容を教えてくれる。
「それはですね。
私と先代の王女は二人でよく徹夜などをして書物を書いていたりしていたのですが、そんなときにたまに変なテンションで王女様が私にいろいろ命令して、私も変なテンションだったのでそれを実行しているうちに気づくと命令などを聞くのが好きな人に……
そう簡単に言いますとドМになっていました。
普段は普通なんですけど、テンションが上がったり、その手のスイッチが入るとあんな姿になってしまうのです。」
「そ、そうでしたか……」
「ええ、でももしマヤ様さえよければ、いじめてくださいね」
「うん、頑張ってみるよ」
うん、なにやってんだ、先代王女。
めちゃくちゃ尊敬はするよ、でもなんでドМにしちゃったの?
このせいで僕がいろいろと損しているようにしか感じないよ。
なに?
いじめたらシステムのことを教えてくれるとか、どんなギャルゲーなのですか?
僕はそんなゲーム要素なんか望んでないよ。
そんなことを考えながら僕とレイラさんはシュトレイヌの街についた。
街門をくぐる前でも街そのものが活気づいているのがわかる。
そしてこういう活気が久しぶりな僕はワクワクしながら街の中に入った。