ゲームの世界へ
キーボードとマウス、更にゲームパッドも駆使してディスプレイ式と呼ばれる現在は時代遅れな画面を見てのゲームをしていたボクはその手を止めた。
そして少しガッツポーズを取る。
それは画面の中で僕が使用しているキャラクターがモンスターをダメージを受けずに完封して勝利を収めたからだ。
そのモンスターはそのゲームの中での現在のイベントの中でも最強のモンスターである黒龍なのでなおさらだ。
一応自分で考えたセオリーで戦っているので大丈夫だとは思っていたがこうもうまくいくとは思わなかった。
そして黒龍を倒すシーンを見ていた一部の他のプレイヤーたちから驚きのコメントが飛び交うのを感じながら僕はゲームをログアウトした。
背伸びをして椅子の背もたれにもたれかかる。
「疲れた……」
そう自分にごちてなんとなく部屋の隅に置いてあったダンボールに目を向けた。
ちょうどその時部屋をノックする音が聞こえる。
といっても僕は返事何かを返したりはしない。
それはドアをノックした相手が誰かわかっているからだ。
だから返事を返せないというよりも返したくない……
そういうものだ。
そしてその人が離れていくのを感じながらも僕はまた部屋の隅にあるダンボールに目を向けた。
そこに入っているのはダイブギアと呼ばれるゲーム機だ。
名前の通り頭に装着して起動することによって仮想世界にダイブできるという代物だ。
そのダイブギアを睨みつけながら僕は思案する。
このゲームをやろうかどうかを……
そしてまたそのダイブギアから視線を外した僕は机の上に置いていたあるゲームを見た。
そこにはクリエイティブオンラインと書かれた一つのゲームがあった。
様々な風景が描かれたパケージに入っているのは専用のゲームファイルだ。
だけれど僕は悩んでいた。
そうこれはディスプレイ式と違ってこのゲームは名前の通り仮想世界にダイブし、その仮想世界でゲームをするのだ。
といってもこういった仮想世界に潜るゲーム、通称”ダイブゲーム”は発売から一年がたっているのでもう目新しいというものではないのだけれど今回のゲームは違う。
このクリエイティブオンラインという名のパッケージにはそう色々な風景が描かれているところでわかるかもしれないがゲーム自体に色々世界があるのだ。
一つのゲームで色々なゲーム世界をいけるというのは魅力的ではあった。
だけど問題点がある。
それはこのゲームがダイブゲームということだ。
ディスプレイ式ゲームでは相手の表情なんかはあんまり見えずにただ自分のプレイをして、そしてほとんどがソロでも活動していけた。
それに対してダイブゲームとはリアルと同じで自分の思考でそのまま自分のキャラを今と同じように自分自身がその世界に入ることによってプレイできるため、現在リアルが引きこもりの僕はその仮想世界でうまくやっていけるかどうかが不安なのだ。
というのが僕の中に浮かびあがっていたため現在はそのクリエイティブオンライン正式に始まって一週間がたった。
この乗り遅れた今ならコミュ力がない僕にはいいタイミングだ。
でも決心は決まらなかった。
そんな時パソコンに一通のメールが届いた。
なんでこんな時間に?
誰からのメール?
そう現在は早朝の時間帯なので普通に考えればこんな時間に送ってくるメールの主とは誰なのかが気になる。
そのため最初にその主を確認……
知らないメールアドレスだ。
僕はすぐに作っていたファイルでメール自体に何かが仕掛けられていないのか調べる。
何も仕掛けはないね。
僕は本当に疑問を思いつつもそのメールを開いた。
差出人不明のそのメールにはこう書かれていた。
あなたもクリエイティブオンラインで遊んでみませんか?
本当のあなたを見ることができますよ
そうこのゲームはあなたのリアルになる
それではお待ちしております
……?
よく分からないメールだった。
内容はどこから見てもクリエイティブオンラインの宣伝メールだがなんで僕のメールアドレスに届いてきたのか意味が分からない。
うーん?
ってそっか間違いメールに違いない。
そういえばこのクリエイティブオンラインはゲームのホームページに登録することでいろいろな情報をメールで送ってくれるとか……
そのメールアドレスを誰かが間違えて送ったのだろう。
だから僕に届いた。
でもうん、読んで決心ついた。
やろう、このゲーム。
あなたのリアルになるということはかなり本格的に違いない。
それにこのゲームは、ダイブゲームを開発したノアという会社が出したものなんだ。
そのダイブゲームを知り尽くした会社が一年ぶりに出した新作ゲームなんだから。
それにこのゲームはゲーム内容をネットに流してはいけないという取り決めがあるためゲーム内に入らないと中の様子が分からないのだ。
よし……
僕は覚悟を決めるとそのままダイブギアを頭につけてベッドに寝転んだ。
ボタンを押して起動すると音がする。
それを確認した僕は目を閉じた。
「システムグリーンです。
ようこそダイブギアへ」
機械音声でそう聞こえたのを感じた僕は目を開ける。
そこには自分のいろいろな設定を打ち込むようだ。
例えば年齢と生年月日的なものだ。
後は名前も入力すれば性別や慎重はリアルにより近づけるために同じにしてあると説明が流れていたので名前はマヤと入力しておく。
よしこれでログインだ。
「ようこそクリエイティブオンラインへ
始まりの世界Fで開始いたします」
F?
聞きなれない言葉を聞ききながらその世界にやってきた僕はベッドの上に寝ていた。
これは現実から仮想世界に来たときの違和感をなるべくなくすためだといわれている。
とりあえず体を起こした僕はそのまま自分の体を上から眺めた。
そこであることに気づく……
なんだろう、僕にはついていないはずの双丘が僕についているのだ。
もしかしてこれって……
触って本物だとわかると床に倒れた。
「これって、これって……
これって運営がミスってるー!」
そしてそう叫んだ僕はそのままその部屋のマットになった。