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自転車

作者: 新木吾妻

中2という設定でお願いします。

右も畑、左も畑、見渡す限り全部畑、民家もずっと先まで無い…そんな農道の真ん中で私はチェーンの外れた自転車と睨めっこしていた…


「も〜何なのよ〜これ〜」


日曜日の昼、部活帰りの私は緩い坂道を帰宅中に愛車(自転車)のトラブルにあっている


私の家は山の上にある、山の麓にある中学校まで遠い…バスもあるけど1日三本…とにかくとにか〜く田舎なのだ!


そんなバスを使っていられないので毎日チャリ通だ、ヘルメット着用でみっともない…慣れちゃったけどさ…


私の自転車はお母さんのお下がりで使用10年のご老体である、ちょっと油を差すのをさぼると直ぐに機嫌が悪くなる(チェーンが外れる)


さっきから頑張って直そうとしてるけど私には無理そう…


「どうしよう…」


ご近所さんが軽トラあたりで通りかかるだろうと思っていたが、日曜日は朝だけで畑を切り上げてしまう人ばかりなので期待出来そうにない…


放置して歩いて帰るしかないかと思っていると


「遠野じゃん」


「えっ?…げっ浅倉…」


同じクラスの浅倉がいた、私服に自転車、最悪…コイツ嫌いなんだよね…馬鹿だから


「げっ、とはなんだよ、お前は陸上部か?」


ご名答の訳は私が臙脂色のいもいもジャージを着ているから


「そうだけど…あんた何やってんのよ?」


「俺は釣りの帰り、沢まで行って来てた」


「ふーん…そう、じゃあね」


さっさと行ってほしいのでそう言って背中を向けてまた自転車と向かい合う


「………」


露骨に嫌がりすぎたかな…


「おっ、なんだ?チェーンか?」


うわっコイツ図太い…


「う…うるさいなぁ、見て解るでしょ?」


「ちょっと貸してみ?」


自転車を停めて私の隣に並びながら言う


「…えっ…固いし、汚れるよ?」


意外だった私は素直に遠慮してしまった


「いいよ、そんなの」


カチャカチャとチェーンをいじり始める浅倉


「…………」


何よコイツ…今日はなんか優しい…いつもは馬鹿な事ばっかりやって私を困らせるのに


「ほら、直ったぞ」


「えっ?うそ…もう?」


愛車を見ると本当に元通りだった、すごい


「楽勝楽勝」


「あ…ありがとう…」


コイツにお礼なんて初めて言ったかも


「おう、でもチェーン伸びきっちゃってるからまた外れるかもな」


「えー、駄目なの?」


「駄目っていうか…うーん…遠野ん家もっと上?」


上とは、更に山の上って事


「う…うん」


「じゃあ一緒に行ってやる」


「そ…そんな…悪いよ…」


「俺はいいって、また外れたら直せないだろ?」


「うぅ…ごめん…」


「よし、行こう」




そして農道を二人で並んで走っている、なんか調子狂う、今日の浅倉優しすぎ


「俺の婆ちゃん家もこの上なんだぜ、近所かもな」


「へぇー…そうなんだ」


あれっ…なんか嬉しい様な気がする



しばらく走って我が家到着


「何とか持ってくれたな…」


「…うん、あの…本当にありがとう」


本と〜〜に感謝していた


「……………」


んっ…浅倉動かなくなっちゃった


「どうしたの?」


「えーと…チェーン…修理してやるよ」


「えっ?修理?」


直ったんじゃないの?


「あぁ、チェーンって伸びたら外して切れば短く出来るんだ」


「そ…そんなの出来るの?」


「楽勝!」


結局お願いする事になって、さっきと同じ様な体制で並ぶ


「直りそう?」


何をやってるのか解らない私は聞いてみる


「大丈夫、何とかなりそうだ」


「…うん、頑張って…」


お父さんの工具を使って一生懸命直してくれてる、手元と横顔を交互に見てしまう…


「……そういえば、部活は?」


なんとなく恥ずかしくなって話題を探してたらちょっと気になった、浅倉は野球部、いつも日曜日は活動していた筈だ


「……………午後からあったんだけどいいや」


「えっ?始まってるの?」


「あぁ、でもここ携帯圏外だから、確信犯って事で」


しししって笑ってごまかす浅倉、私の気にしてる家のウィークポイントを言われたけど気にならなかった……


明らかに浅倉の目が泳いでいたから…


「…ありがとう…」


「ま…まだ直ってないぞ?」


「…うん」


それからなんとなく二人共黙ってしまったけど…なんか暖かかった…例えるなら浅倉との壁が取れた様な気がした



「よし、直った!」


家の庭で試し乗りしながら浅倉が言う


「すごいすごい!」


私も大はしゃぎだ


「多分もう大丈夫だと思うぞ」


自転車を停めてぽんぽんとサドルをたたく


「すごいね、自転車屋さんになれるよ」


「ははは……じゃあ…俺は帰るよ」


「えっ…お茶くらい出すよ?」


「い…いや、さすがに少しだけでも部活に出とくよ…」


「あ…うん、ごめんね?」


「いいって!」


にかって笑って言う浅倉


無駄にでかい田舎の家の門まで見送る


「じゃあ遠野、また明日な!」


「うん…ばいばい浅倉」


………………


自転車で駆け降りて行く浅倉を見送る


浅倉が停めたままの自分の自転車


古くて汚い自転車だったけど…


嫌じゃ無くなってた


不思議だ…なんでだろ?


読んで頂いてありがとうございました、結構気に入っている作品なので好評であれば続きを書きたいと思っています。

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― 新着の感想 ―
[一言] とりあえず、短編は全部読ませていただきました!!! すっごい良かったです。読んでてほんわかしてきました。 これからも頑張ってください。ではでは
[一言] ふふふふ、良い作品ばっかりだ・・・ なぜだ!!何故こんなに面白いんだぁぁぁ!! ↑壊れたww
2008/03/20 14:05 退会済み
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