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【連載版】夫は私を湖に沈め初恋の令嬢を救った――そして私は家族を捨てる  作者: 雛雪


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番外編 エレン

 湖の水面に落ちる直前、私は悲鳴を上げた。

 伯爵夫人を押し、そのまま自分も落ちる。

冷たい波が体を包むが恐怖はない。やがて湖の中で伯爵ーリチャードーが手を伸ばし私を抱き、水面へと引き上げる。

 あの瞬間、優越感が胸を満たした。

彼も彼の息子も、自然と私を守っている――計画通りだ。


 その夜、屋敷に戻れば、私の周囲は思惑通りに動いているように見えた。

 伯爵夫人は部屋に閉じこもり、彼女の息子は私の顔を見るたびに笑みを返す。

 小さな手の仕草も、微笑も、すべて私の掌握下にある気がした。

 誰もが私の味方で、私はこの屋敷の中心。夫人もいつの間にか屋敷から消えていた。


 だが、その優位は長く続かなかった。

 船頭の告白、侍女の証言。そして前夫から届いた伯爵宛の書状――

 離婚の事情、虚言、策略のすべてが赤裸々に記され、私の完璧な計画は崩れ始める。


 伯爵が書状を読み上げる声が、静かに、しかし確実に私を責めた。

 「エレン、君は不妊を理由に追い出されたと言ったが……この書状には別の理由が並んでいるな。不貞、放蕩、使い込み、そして虚言癖。これでもまだ、被害者を装うつもりか?」

 言い訳を重ねても、微動だにしない瞳に打ち砕かれる。

 彼の息子も黙っていない。小さな体で肩を震わせ、怒りの眼差しで私を見つめる。


 口元に微笑を浮かべようとしても、震えが止まらない。

 湖で感じた掌握感、屋敷で味わった優越感――すべて束の間だった。

 私を守っていた伯爵は、もはや背を向けるだけ。手を差し伸べてくれることも、耳を傾けることもない。


悔しい、悔しい、

なぜ上手くいかなかった?

どこで間違えた?


 屋敷の門を出ると風が髪を荒く揺らした。冷たく、孤独で、あのときの水の感触と同じだ。

 策略は暴かれ、優位は崩れ、味方だと思った二人も私をもう信じない。

 これが私の全ての計画の結末――ざまぁ、だろう。


 振り返ることもできず、ただ門の外へ歩く。

 上手くやってた自信は、今や波紋のように消え去った。

 孤独と恥だけが、冷たい風と共に残った。

エレン視点なので、本編と少し差異があるかも?です。

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