ちょっと落ち着け
遅くなり申し訳ありません。
「家を出てすぐに北由さんと出会って、話をしたと思ったら後から出てきた同僚とちゅーした!?」
大きな声で近所の同級生、池下桃が叫んだ。
「なんのドラマだっつーの!」
「桃さん、どう、どう、落ち着きたまえ、鎮まりたまえ」
頭を掻きむしりながら桃は続ける。
「どうやったらそんな美味しい状況になるのよ!私なんて外でバリバリ働いているのに!そんな気配全くないわ!」
うおおおおんと泣き始めた。
桃の部屋で出してもらった麦茶を飲みながら、雑談をしていた時に、ふとした拍子で言ってしまった。
「でも、桃ももうすぐ結婚するんでしょ?おめでただし、いいじゃん。」
「何がいいじゃんですか!バツイチ!」
「いやいやバツイチ関係ないから」
話をしていて、今度桃は5つ上の上司と結婚するらしい。
彼は桃の同期だが、途中入社したキャリア組らしく、将来有望である。
なんと羨ましい。
気持ちのコントロールができない今は、人と一緒になるのは考えられないけれど。
時々同僚たちといろいろな経験をすることがとても楽しい。
この間は、漆器づくりに行き、綺麗なお椀が出来て、大満足して帰ってきた。
「それにしてもさ、チュウした相手と気まずくならなかったの?」
「そりゃ気まずいけど、基本的に部署異動した後だったから、気持ちを落ち着かせてから、謝りに行ったよ。向こうも大人だし、無かったことにしようって合意して終わったよ。」
はあぁと、桃はため息をつきながら椅子にもたれかかった、
「責任とって!なんてならなくてよかったわね。」
「ならんから」
そのような些細な話も、とても幸せだった。
時々、ふと思い出す。
子供達が色々とできるようになってきた時。
私が一人目を産んだ時。
二人目を妊娠する前。
三人目が生まれる前。
いろいろなことがあった・・・。