こんな展開は望んでない!
アパート暮らしが始まったかと思うと、急に異動もきまり、バタバタしていた。
挨拶回りもできないまま、毎日が過ぎていった。
ご飯作りをして、ふと、LINEから通知がきているのが目にはいった。
『こんばんは。今日は金曜日ですが、飲みにきませんか。久しぶりに同期も誘っているのですが』
飲み会のお誘いが入っていたが、出る気力にもなれず、一眠りした。
起きると22時を回っていた。
LINEの追い通知はなかったが、メールが一件来ていた。
好きなアーティストのツアーライブのチケットだ。
「うっしゃー!2件当たってるー!!」
活気が湧いてきたかのように、みなぎってきた。
夜中だが、コンビニまで走って行こうと決めた。
推し命!その一心で着替えて外に出た途端。
「あら、こんばんは。」
目に前に藤山さんと北由さんが立っていた。
「こんばんは!LINE入れてくださってたの、今見て、伺おうと思ってました!」
咄嗟に嘘をついたが、
「うそつけ、お前絶対どっか行こうとしていただろう。どう見てもランニングの格好で飲み会に来たりしない。」
2人の後を追ってきたのは、同期の南と郡司だった。
「きゃー!久しぶりー!元気だったー?畑村さんってば、いきなりいなくなっちゃって寂しかったから、ライン入れても返信くれないしさー!」
元気が取り柄な郡司が肩を組んでくれたが、お酒の匂いと豊満なお胸が当たって、気が気でなかった。
久しぶりのプライベートの仲間たちに会うことができて、やっぱり行けばよかったなと後悔した。
「ごめんね、いきなり異動の辞令があって。急に産休に入った人のピンチヒッターだったみたいで、てんやわんやしてたんだよ。」
「寂しかったんだからー、まぁ見れたからいいけどさー、北由さん、もうちょっと飲みましょうよーせっかく畑村さんが出てきてくれたんだからぁ〜。」
管を巻きながら北由さんに話しかける郡司を、支えている南がバランスを崩した。
近くにいた私と北由さん、南、郡司が倒れてしまった。
しまったのはいいけれど!
なんで南に胸触られながらチューされてんねん!
ラッキースケベにも程がある!
「ご、ごめん!!すぐ起きるから!」
全員起き上がったところで、明らかに顔が真っ赤になっているあろう自分を想像すると途端に恥ずかしくなってしまった。
「さよなら!」
そう言い去ってしまった。
しかたない、混乱しているこんな時は走ろう。
そしてついでにコンビニでお支払いを済ませて、ライブに意識を向けていこう。
いや、でもチューはさぁ。
「きついってええええええええぇえ!」
夜中に近所迷惑なのは分かったが、どうしても抑えきれなかった。
南も郡司も美男美女なのだ。
その美男にチューされたなんて社員に伝わってしまえば終わる。
半分くらいの社員に睨まれる。
平和に過ごしたい!!
くうう、明日にはこのドキドキがおさまれ〜
そう思いながら初夏の道を全力疾走した。