仕事は変わらずありますから。
次の日、朝はどこかで太鼓を鳴らす音が聞こえてきて目が覚めた。
私が小さい頃から近所で朝の7時ごろに太鼓を鳴らす施設があり、それを目覚ましがわりにしていた。
久しぶりの実家の天井には木のシミのようなものがよく見えた。
子供の頃から変わらない天井である。
「うー、仕事休みたいくらい、体が痛い。」
仕方なく体を起こして、変わり映えのないキッチンに降りて行った。
朝のコーヒーを入れ、トーストを作って食べていると、母が降りてきた。
「今日はそんだけでいいんかい?ヨーグルトあるで?」
「いいよ、体動かすことあんまないから。おおきに。」
そう言って母親の分のトーストも焼いてやった。
歯磨きをしてから、車に乗り込み仕事に出発した。
車で40分、田舎の出勤あるあるだ。
信号は止まり、流れていく車の波、途中には本物の海を眺めながらドライブしていく。
職場に着くと、昨日会った北由さんの車と、副社長の車が止まっていた。
副社長はお子さんを送っていくときに車に乗っているが、職場から自宅までが徒歩5分ということで、いつも車はない。
「おはようございまーす。」
そう言って部屋に入れば、チラホラ出勤している同僚がいた。
北由さんの隣に座り、カバンを下ろした。
「やぁ、昨日はお疲れ様。引っ越し作業は終わったかい?」
デスクのパソコンを触る手を止めて、話しかけられた。
「そうですね、あらかた終わりました。今度は新しい家探しです。北由さんは何に重点を置いて探しましたか?」
うーんと見上げながら北由さんは考えていた。
「僕は利便性の良さかな。駅にも近くて、駐車場もある、買い物に困らないところにしたくって、そしたら君の家の裏のアパートさ。あそこいいよね。」
「そうですね、とてもいいと思います。実家じゃなければそこに住もうかと思ったんですけど、あまりにも近すぎて。」
ははっと笑うと、またパソコンの画面に向き直り、仕事を再開した。
自分も出勤カードを押して、仕事をしよう、と鞄を整理した。