さよならの季節、離婚しました。
今日、3月21日、めでたく協議離婚が成立した。
離婚原因は妻である畑村玲子の精神的な病気の悪化による、子供達への影響を心配してのことだった。
いや、向こうだって負けじど暴力振るってたじゃん。
そう思いはしたが、離婚が成立してしまえば意味がない。
玲子は春の日差しと心地よいはずの風に少し苛立ちを感じた。
離婚が成立してしまえば、自宅からは出ていかなくてはならない。
急いで夫も子供も外出している自宅に戻って、荷物をまとめなくてはいけない。
整然としている自宅の一室に入れば、混沌とした荷物が散乱している。
玲子の自室だ。
一週間前、玲子はADHDと診断された。
子供を出産し、一息ついた頃、片付けができないことを夫から糾弾され、同居していた義理の両親からも言われたのだ。
「夫婦喧嘩を見る子どもが可哀想だ!」
そう義理の父親が叫び、私はまともじゃない思考で叫び返した。
「納得できないなら離婚してって言ってるのに、拒み続けている慎太郎に言ってください!」
もっといろいろなことがあったが、思い出しただけで涙が出てきそうになるからやめた。
その思いを抱えながら、隠すように段ボールに荷物を詰め込んだ。
自分の趣味の革小物を作るための道具。
子供が生まれたときに撮った写真。
今まで続けてきた仕事道具。
あらかた片付け終わると、ちょうど夫が、元夫になる、畑村慎太郎が帰ってきた。
いつもならすぐ自室に篭るはずなのに、私の部屋を訪れた。
「今日は午後に休みを取った。引越しの手伝いしようかと思って。」
「そうだったの。ありがとう。もうあらかた終わったから車に運んで欲しいわ。」
部屋を見回していた慎太郎がうなづいて、テープで止めた段ボール箱を持って行ってくれた。
ーーーーーー慎太郎と結婚したのはちょうど、7年前の3月21日だった。
そんな感傷に浸りながら、最後のダンボールの蓋を閉じた。
今日から少しづつ更新していきます。よろしくお願いします。