最終話 真実の勝利
とりあえず最終話です。
宮廷社交界の季節が始まった日の夜会。
私は露台から、華やかな大広間を見下ろしていた。
「これで全て揃いましたわ」
後ろから近づいてくる足音。振り返ると、そこには私の父——ロートシルト公爵が立っていた。
「よくやってくれた、エリザベス」
父は穏やかな笑みを浮かべながら、私の隣に立つ。
「北部鉱山の採掘権、枢機卿の協力、そして……」
「ええ」
私は頷く。
「そして、これです」
懐から取り出したのは、一枚の古い羊皮紙。かつて王家から我が家に与えられた、ある特別な権利を記した文書だった。
「二十年前、母上が暗殺されたとき」私は静かに言葉を紡ぐ。
「犯人を裁くことができなかったのは、証拠が足りなかったから」
父の表情が険しくなる。
「でも、今なら違います」
大広間の中央では、皇太子殿下が貴族たちと歓談していた。その傍らには、グレゴリー枢機卿の姿もある。
「北部鉱山の聖遺物は、本物ですわ」
「そうだったのか」
「ええ。でも、それを最初に発見したのは母上。そして、その情報を握っていたのが...」
「皇太子殿下」
父は呟くように言った。
「正確には、当時まだ若かった殿下の側近たちですわ。母上の暗殺を命じたのも彼ら」
露台の向こうで、グレゴリーが皇太子に何かを告げている。殿下の表情が次第に青ざめていく。
「枢機卿が証言を始めましたわね」
「奴らの権力を守るための暗殺。そして二十年に渡る隠蔽工作」父は拳を握りしめた。「だが、もう終わりだ」
「ええ。この古文書によって、我が家には王族に対しても直接裁判を求める権利がある。証拠も証言も、すべて揃いました」
宮廷内が少しずつざわめき始める。
皇太子の側近たちが、慌てて大広間を後にしようとしている。しかし、既に衛兵たちが全ての出口を固めていた。
「エリザベス」
父が私に向き直る。
「よく母さんの仇を……」
「いいえ」
私は首を横に振った。
「これは、正義のための裁きです」
華やかな社交界に、新たな幕が上がろうとしていた。
かつて理不尽に奪われた命の重さを胸に、私は晴れやかな表情で大広間へと歩み出た。
母上、見ていてください。
これが、あなたの娘の選んだ道——。