第2話 策謀の糸
さらになんとなく書きました。お目汚し、申し訳なく……。
「では、私からの条件をお聞きになりますか?アルフレッド様」
私は上品に微笑みながら、崩れ落ちたアルフレッドを見下ろした。彼の顔からは血の気が失せている。
「条件……だと?」
「ええ。三つありますわ」
私はゆっくりと指を立てながら、一つずつ告げていく。
「一つ目。貴方の家が管理している北部鉱山の採掘権を、私たちロートシルト家に譲渡していただきます」
「な、なんだと!? それは家の重要な収入源だぞ!」
アルフレッドが声を荒げたが、私は平然と続けた。
「二つ目。レイチェル・ブラウン子爵家との縁談は、貴方から断っていただきます」
「エリザベス! それは……!」
「最後に」
私は意図的に間を置いた。
「貴方から婚約破棄を申し出ていただきます。理由は、私が貴方の家格に相応しくないから、ということで」
アルフレッドは呆然と私を見つめている。
その目には恐怖と怒りが混ざっていた。
「……狂っているぞ、エリザベス。そんな条件、誰が……」
「受け入れないのですか?」
私は懐から、もう一枚の封筒を取り出した。
「では、これを陛下直々にお渡ししようかしら」
封筒の中身を見たアルフレッドの顔が、さらに蒼白になる。そこには彼が国庫から横領した証拠が収められていた。
「まさか……どうやって…………」
「秘密です。ただ、これはほんの一部。すべての証拠は既に安全な場所に保管してありますわ」
私は軽やかに椅子から立ち上がり、窓際まで歩いた。外では春の陽気が庭園に降り注いでいる。
「考える時間は明日の正午まで差し上げます。それまでに返答がなければ、この証拠は然るべき場所に届けられることになりますわ」
アルフレッドは唇を噛みしめたまま、震える手で自分の膝を掴んでいた。
「あ、そうそう」
去り際に振り返って付け加える。
「レイチェル嬢との関係も、彼女のご両親にお知らせすることになりますわ。彼女の父上は、そういう事に関してはとても厳しい方だとか」
部屋を出る直前、私は後ろ髪を優雅に撫でながら言った。
「それでは、良いご判断を」
扉の向こうに消えた後、私は小さく微笑んだ。すべては計画通り。これは私の復讐の第一歩に過ぎない。
真の標的は、まだその先にいるのだから——。