お望み通り
「おい、酒を持ってこい」
「おい、飯を作れ」
「おい、マッサージをしろ」
命令をするだけでなんでもしてくれるこの状況に男は満足していた。しかし命令すればなんでもしてくれると言っても別に男は使用人を雇っているというわけではない。
しかしある意味では使用人がいるとも言えるかもしれない。
男が命令している相手は、ロボットなのだ。
金属質の肌を持つ以外は人によく似たこのロボットのことを男は買い取ったのではない。ロボットを作る会社からレンタルしているのだ。
会社では上司や客先に良いように使われるだけのこの男は、こうしてロボットに命令をできる状況を心から楽しんでいた。
ロボットを作る会社では、社員同士がこんな会話をしていた。
「だけどこのロボット、そんなに高いお金を出してレンタルしたいものなんですかね。酒はただ缶をそのまま持ってくるだけ、飯を作るといっても冷凍食品を温めるだけ、マッサージをするといっても軽く体を押すだけじゃないですか」
新入社員の言葉に先輩社員が答える。
「レンタルしてる奴らは命令をできる権利を楽しんでるのさ」
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