開けろ!開けてくれ!
——ゴンゴン!
雨が降りしきる夜、騎士団の一人が重い扉を力強く叩いていた。
「騎士団だ!」
外からは、嵐に紛れて足音がかすかに聞こえる。おそらく住人が玄関へと近づいているのだろう。団員は苛立ちを募らせ、再び拳を扉に叩きつける。
「おい!開けろ!」
雨がさらに激しさを増し、彼の鎧には無数の水滴が叩きつけられる。
握りしめた紙には罪状が書かれており、彼はそれを無意識にぐしゃぐしゃに握りつぶしていた。湿った紙からは、嵐の冷たさ以上に、団員の怒りと焦りが伝わってくる。
彼は、紙を握りしめる手に力を込め、再び扉を叩いた。
扉の向こうから、どこか優雅で落ち着いた声が響いた。
「どなたですの〜?」
団員はさらに苛立ちを隠せず、怒鳴り返す。
「騎士団だ!開けろ!早くしろ!」
その言葉に反応がないまま、団員はますます強く扉を叩きつける。
——ドンドンドン!
雨はますます激しくなり、騎士団員の鎧を濡らして冷やしていく。その冷たさとは裏腹に、彼の内側には不安と焦燥が募り、じっと待つのを許さない。
扉の向こうから、信じがたい返答が返ってきた。
「え〜?私は騎士団じゃありませんわよ〜」
団員は一瞬、言葉を失い、呆気にとられた。しかしすぐに我に返り、強い口調で応じる。
「違う!お前じゃない!俺が騎士団だ!早く開けろ!」
——バンバン!
彼が再び拳を叩きつけた瞬間、遠くで雷鳴が轟いた。
雨はさらに勢いを増し、騎士団員の声がかき消されるようだ。
通りすがりの市民たちは、騒ぎに気づきつつも、冷たい雨を避けるように足早に立ち去っていく。団員はその場に取り残され、焦りと苛立ちで拳を握りしめる。
「おい!聞いてるのか!?早く開けるんだ!」
しかし、扉の向こうからの応答はない。団員の中に不安が徐々に広がっていく。
扉の向こうから、相変わらずの間延びした声が響いてくる。
「え?どちらさんですの〜?」
団員は怒りを押さえきれず、拳で扉を強く叩きつけ、声を張り上げた。
——ドンドン!ガンガン!
「騎士団だ!いい加減にしろ!開けろ!」
すると、再びのんびりとした返答が返ってくる。
「え?なんて?」
団員は大きく息を吸い込み、さらに強く怒鳴る。
「き・し・だ・ん、だ!騎士団!」
彼の声と共に、拳が扉をドンドン!ガンガン!と叩き続けるが、返事はなく、ただ嵐の音が重たく耳に響くばかり。団員は苛立ちを押し殺しながら、雨に濡れた拳を再び振り上げた。
団員はついに懇願するように声を震わせた。
「たのむ!開けてくれ!それだけでいいから!あとは何もしないから!開けろおおお!」
しかし、扉の向こうから返ってきたのは、相変わらずののんびりとした間延びした声だった。
「え〜?……どちらさんですの〜?」
団員は怒りと焦りで声を限りに叫ぶ。
「騎士団だああああああぁああぁ!」
その声に合わせて、団員は扉を激しく叩きつける。
——ガコンガコン!
しかし、返事はまたしても曖昧なもの。嵐は一層激しさを増し、通りはほとんど無人に。彼の叫びと扉を叩く音だけが虚しく響き続けていた。
扉の向こうから、再びのんびりとした声が響く。
「でもここは騎士団じゃありませんわよ〜!」
その言葉に団員はついに堪忍袋の緒が切れたかのように叫んだ。
「違うううううぅ!お前じゃねええ!俺が騎士団だあああ!俺が騎士団から来たんだ!」
彼の声が嵐の中に消されることなく、あたりに響き渡る。しかし、扉の向こうからの返事はない。団員の叫びが虚しく反響し、雨音だけが強まる中、彼は一人、ずぶ濡れのまま扉の前に立ち尽くしていた。




