金属探知機
エリシアは優雅な足取りで、ある施設の入口に立っていた。
前には金属探知ゲートが設置され、警備員が待機している。
彼女は微笑みを浮かべ、特に気にする素振りもなくゲートを通り抜けようとした。
だが、次の瞬間――
——ピンポーン!
金属探知ゲートが反応する。警備員が困惑した表情でエリシアに声をかけた。
「えっと、金属品は外してもらって……」
エリシアは少し眉をひそめ、けれどもすぐに微笑みを浮かべて答えた。
「失礼しましたわ。」
彼女は手首に嵌められたブレスレットを外し、優雅に手渡した。
だが、再びゲートを通り抜けた瞬間――
——ピンポーン!
今度はエリシアが少し驚いたように立ち止まる。
「ええ? まだ何か反応しているのかしら?」
彼女は小さく首を傾げ、目を細めた。警備員は困惑しながら、さらにお願いした。
「もう一度、念のため他の金属も外していただけますか?」
エリシアは優雅にもう片方の手首に付けていた腕時計を外し、今度こそ問題ないだろうと自信を持ってゲートを通ろうとした。しかし――
——ピンポーン!
エリシアの顔に、ほんの一瞬、苛立ちの色が浮かんだ。彼女はふっと小さく鼻で笑い、歩みを進めようとした。
「もういいですわ。通りますわよ。」
彼女が無理やりゲートを通過しようとすると、警備員が慌てて手を伸ばして彼女の肩に軽く触れた。
「あちょ、ダメですんで! ちょっと待ってください!」
引き戻されたエリシアは、露骨にため息をつきながら元の場所に戻され、ゲート前で再び足を止めた。
「もう何なんですの?一体何が反応しているのかしら?」
イライラし始めたエリシアが考え込んでいると、突然、彼女の顔に閃きが浮かぶ。
「……あっ、イヤホンですわ!」
そう言うと、彼女は髪の中に隠れていたワイヤレスイヤホンを両耳から外し、優雅に差し出した。
エリシアはイヤホンを外し、ようやく問題解決かと思いきや――
——ピンポーン!
彼女の目が一瞬鋭くなったが、すぐに冷静さを取り戻し、ふっと微笑んだ。
「なるほど、イヤホンということは…スマホですわね〜。」
まるでそれが初めから分かっていたかのように、優雅な手つきでスマホを取り出し、トレイに静かに置いた。
「これで終わりですわ。」
自信満々でゲートを再び通過しようとするエリシア。しかし――
——ピンポーン!
彼女は一瞬立ち止まり、微かにピクっと眉が動いた。
エリシアは、ついに耐えきれなくなった様子で腕を振り上げ、声を張り上げた。
「もう知りませんわよ!」
そう言うが早いか、彼女は勢いよくゲートを通り抜けようとする。だが、警備員は慌てて彼女を追いかけ、なんとかその場で引き戻した。
「ああぁ!ダメですって!ダメダメ!もう一度、お願いします!」
エリシアは、やや不機嫌そうに引き戻されるが、仕方なく再びゲート前に立ち直る。そして、ふと何かを思い出したように目を見開いた。
「ああ…そうでしたわ、小銭入れ!そりゃそうですわ!」
彼女は小さな革の小銭入れをカバンから取り出し、トレイに放り込んだ。
「これで完璧ですわ!」
自信満々で再びゲートを通り抜けようとしたが――
——ピンポーン!
エリシアは信じられないという表情で、呆然と立ち尽くした。
エリシアは深い溜息をつき、指先を見つめた。
次に目に入ったのは、彼女の指にはめられたガボールのスカルリングだった。
「これが原因でしたのね。」
彼女はその重厚なリングを外し、トレイに入れる。
警備員はちらりとリングに目をやり、心の中で呟いた。
(なんでこんなの付けてんだこの人……)
エリシアは自信満々でゲートを通過するが――
——ピンポーン!
彼女の目が再び鋭くなる。エリシアはイライラした表情で、今度は胸元に手を伸ばす。
「ふむ…クロムハーツのネックレスも、当然反応するわけですわね。」
彼女はその豪華なネックレスを外し、トレイに静かに置いた。
再びゲートに向かうが――
——ピンポーン!
エリシアの表情が今度は完全に不機嫌になった。
次に、腰元に手を伸ばし、ウォレットチェーンをゆっくり外した。
「これもですのね…。」
無言でトレイに入れ、今度こそ、と再びゲートを進む――
——ピンポーン!
ついに、エリシアは苛立ちを隠せなくなり、手早くサングラスを外す。
「サングラスも反応するんですの!?」
そのサングラスもトレイに入れると、彼女はゲートを再び通り抜けようとした。
——ピンポーン!
彼女は大きくため息をつき、ついに冷静さを失いかけながらも、優雅な微笑みを浮かべて警備員に向かって言った。
「ちょっと、見ないでくださいましね〜。」
警備員は戸惑いながらも、背を向ける。
すると、背後からガチャンという金属音が響いた。
警備員が恐る恐る振り返ると、目の前にはなんと防弾チョッキがトレイに置かれている。
(ッ〜!?)
警備員の頭の中で疑問符が飛び交う中、エリシアは不機嫌そうに、再びゲートを通り抜ける――
——ピンポーン!
「……まだですの?」
エリシアは次に腰元のバックルのついたベルトを外し、トレイに無造作に投げ入れた。
「これでいいでしょう?」
自信満々で進むが――
——ピンポーン!
彼女はもはや苛立ちを隠し切れない。
最後にバッグからアーミーナイフを取り出し、トレイに叩きつけた。
「これもですの!? なんでこんなに反応するんですの!」
彼女はゲートを再び通り抜けようとするが――
——ピンポーン!
「あぁ!もう!急いでますのよ!」
エリシアは完全にイライラし、強引にゲートを突破しようとした。
「ダメダメダメ!戻って戻って!」
警備員は焦って彼女を引き戻し、再び元の位置に戻されるエリシアは、ついにプライドを傷つけられたような表情を見せた。
エリシアは、これまでに見せたことのないほど苛立ちを露わにしていた。だが、それでも彼女は優雅さを失わず、冷ややかに微笑みながら次のアイテムに手を伸ばした。
まずは――特殊警棒。
「これもですわね…」
彼女は淡々とトレイに置いた。だが、再びゲートを通ろうとした瞬間――
——ピンポーン!
エリシアの目が鋭く光った。次に取り出したのは、腰に巻かれていた弾丸ベルト。
「これが原因ですの?」
警備員の顔が完全に引きつり、心の中で混乱が増していた。
(?????)
エリシアはそれに気付くこともなく、ベルトを外してトレイに投げ入れ、再びゲートを通り抜けようとするが――
——ピンポーン!
今度はエリシアも一瞬ためらったが、すぐに手を伸ばし、トレイに無造作に置いたのは――Enfield Mk.l。
警備員は目を疑いながら、それでも何も言わずに見守るしかなかった。エリシアはため息をついて、ゲートを再び通過する――
——ピンポーン!
「まだですの!?信じられませんわ!」
次に取り出したのは、まさかのダブルバレルショットガン(ソードオフ仕様)。
エリシアはショットガンをトレイに置き、警備員は完全に口を開けたままフリーズしていた。
「これで通れますわね?」
そう言ってゲートを通るも――
——ピンポーン!
エリシアはもはや半ば狂気じみた笑みを浮かべ、最後にUzi MP2を取り出し、トレイに投げ入れた。
「これもですの!?どういうことですの!?」
警備員は何も言えず、ただ立ち尽くすばかりだった。
エリシアはもはや怒りと疲れが交錯し、渋々金具がついた革ジャンを脱ぎ捨てた。革ジャンがトレイに投げ入れられると、重い音を立てて――
——バシャン!
(…………)
場が静まり返る中、エリシアは何事もなかったかのように次に進もうとしたが、やがて、革パンツの中からベレッタ21Aボブキャットを取り出し、トレイに置いた。
「もういいですわ、これも原因でしょう?」
だが、やはり――
——ピンポーン!
彼女の表情はさらに険しくなり、次にマルチナイフをトレイに放り投げる。
——ピンポーン!
「まだですの!?」
続いてポケットの中から変な白い塊が現れ、これもトレイに置かれる。警備員は顔を歪めるが、何も言わない――
——ピンポーン!
さらにエリシアは冷静さを失いつつ、何かの基盤を取り出し、置く。
——ピンポーン!
続いてケーブルを引っ張り出してトレイに乗せ――
——ピンポーン!
そして最後に、カシオF91Wを外し、トレイにそっと置いた。
「え? もう全部ですわよ!?どうなってますの!?」
それでも、ゲートは再び音を鳴らした。
警備員はもはや言葉を失いながらも、経験からくる直感でエリシアの足元を指差し、小型の金属探知機を取り出して慎重に確認した。
「もしかして……安全靴では?」
彼の指摘にエリシアはハッとし、足元を見下ろした。確かに、彼女の安全靴には鉄製の芯が入っていた。
「あっ……。」
エリシアは小さくため息をつき、仕方なく安全靴を脱いでトレイに置いた。彼女はもう何も言わず、ただ期待するようにゲートを再び通り抜ける。
エリシアがゲートを通過し、ついに警報が鳴らなかった瞬間、彼女は深く息を吐き出した。
だが、次の瞬間――
カチ、カチ、カチ
チャキ……チャキチャキ!
トレイに置かれていたベレッタ21Aボブキャットを素早く手に取り、ホルスターに戻す音が鳴り響く。
サングラスを優雅に顔にかけ直す。
ガシャ……バチん!
安全靴のバックルをしっかり締めて、足元がカチリと固定される。
パチ、パチ、パチ
革ジャンを素早く羽織り直し、金具を手早く留める。
エリシアは目にも止まらぬ速さで全てのアイテムを元通りに装着し、完全な姿に戻ると、何事もなかったかのように一息ついた。
「ふぅ、疲れますわね!」
彼女はそう言いながら、優雅に髪を整え、涼しい顔で去っていった。その姿は、先ほどの混乱がまるで幻であったかのように、完璧なエリシアだった。
警備員は疲れ切った表情で、エリシアを見送りながらため息をついた。彼女が去っていく背中を見つめながら、安堵の息を吐いたが、その瞬間、何かに気づいた。
「……あっ。」
脳裏に駆け巡ったのは、彼女が大量の武器を再び装備してゲートを通過していった事実。
顔が青ざめた警備員は、すぐに背後の緊急ボタンに手を伸ばした。
ガシャッ!
次の瞬間、場内に響き渡る緊急アラームが鳴り響いた。
「緊急!緊急!場内に武装した不審者が侵入!セキュリティは直ちに急行せよ!」
サイレンが高らかに鳴り響き、警備員たちが一斉に駆け出す音が響く。場内は一瞬にして混乱に包まれた。




