かましたれ!エリシアちゃん!
闇の魔術師と勇者たちは、古代の遺跡の最深部で対峙していた。
そこには巨大な石棺が静かに佇み、無数の古びた呪文が彫られている。棺の周囲には黒い霧が漂い、冷たい空気が辺りを包んでいた。
「この棺の中で眠っているのは、かつて世界を恐怖に陥れた魔王だという…」
「恐怖を超えた存在…魔王が蘇れば、この世界は再び闇に覆われるだろう。」
闇の魔術師は冷笑を浮かべながら、ゆっくりと棺の前に立った。
彼の背後には禍々しい魔力が渦巻き、空気が歪んでいるのがはっきりと見て取れた。
「我々が来たからには、そんなことはさせない!」
勇者のリーダーが剣を握りしめ、前に出た。その剣には神聖な光が宿り、闇を切り裂く力を秘めている。
「私の目的はただ一つ。魔王を復活させ、この腐った世界に真の絶望をもたらすことだ!」
彼は高らかに叫び、呪文を唱え始めた。棺を覆っていた封印がバリバリと音を立てて崩れていく。
棺の蓋が重々しい音を立てながら、ゆっくりと動き始めた。
闇の魔術師は狂気じみた笑みを浮かべ、勇者たちは剣を構え、緊張で息を呑んだ。
古代の恐怖が、ついに目を覚ます――そう信じていた。
「ついに…ついに魔王が…!」
魔術師の声が震えるほど高揚していた。
だが、棺から姿を現したのは――エリシアだった。
彼女は上半身だけ起こし、周囲を見回す。そして突然何かを言い出した。
「え!?もう長袖ですの!?」
勇者たちも魔術師も、その場で固まった。
全員が状況を飲み込めないまま、ただ呆然と彼女を見つめるだけだった。
一瞬の沈黙が場を支配し、空気が凍りつく。
その間、エリシアは欠伸をし、再び棺の中にゆっくりと横たわった。
何事もなかったかのように、彼女は再び目を閉じ、静かに蓋が閉まっていく。
重たい音が最後に響き渡り、棺は再び静寂に包まれた。
全員が、何も言えずにその場に立ち尽くした。




