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小説家になろう!

 エリシアは「小説家になろう」で投稿している『エリシアの大冒険〜ハートフルストーリー〜』の執筆に行き詰まっていた。




「ふぅむ……」




 パソコンの前で腕を組み、唸る。




 それっぽいBGMでも流せば気が乗るかと思い、「ディスカバリーチャンネル_エド編」を再生した。だが、野営用ナイフの紹介を聞いているうちにますます迷子になっていく。




 ジャルジャルのコントで気分を切り替えるも、くだらなすぎて笑った拍子に構想がどこかへ飛んでいった。




 仕方なくマクドナルド公式サイトを開く。

 ふと「エリシアがダブルチーズバーガーを2個食べる話」でエタる将来が脳裏をよぎる。




「……だめですわね」




 首を振って、デスクに突っ伏す。




 タブが散乱するブラウザの隅には、開きっぱなしの「なろう」投稿画面。未送信のまま空欄が続く。




 そんなある時、x(旧Twitter)でフォローしている小説家アカウントの投稿がタイムラインに流れてきた。




【ハードルを下げよう】


 小説を書く習慣を身につけるには、まず「ハードルを下げる」ことが大切です。完璧な物語を仕上げようと構えると、筆が止まりがちになります。大事なのは「続ける」こと。たとえ内容が拙くても、書くという行為を日常に組み込むことが第一歩です。




【一日一行でOK!】


「一日一話」と構える必要はありません。「一日一行」でも十分です。ほんの一行でも書けば、その瞬間に“創作をした自分”になります。空白の日をつくらないことが、最大のコツです。




【とにかく習慣化!】


 そして、机に向かうこと自体を習慣化しましょう。文章が出てこなくても構いません。椅子に座り、ノートやパソコンを開く。その時間を繰り返すうちに、脳が“創作モード”を覚えます。小説は才能よりも、座る回数でできあがるのです。




 *




 翌朝、彼女のタワマンの一室は妙に静まり返っていた。




 カーテンは半分しか閉められておらず、射し込む朝日が床に斜めの影を落としている。




 ベッドの下からはモンスターエナジー(ピンク缶)の空きが一本、コロリと転がり出ている。




 机のそばのゴミ箱には、潰れかけたマクドナルドの紙袋が突き刺さるように突き立ち、はみ出したポテトの匂いが部屋に滞留していた。




 立ち上げっぱなしのパソコンは、数時間前に熱を持ったまま、スクリーンセーバーすら起動せず、ただ光っている。


 投稿画面はそのまま。カーソルが空白の行で虚しく点滅を繰り返していた。




 一方、エリシアはうつ伏せの姿勢でソファに沈み、片手にスマホを持ったまま動かない。





 画面には「美味しんぼ」——海原雄山が爆笑するという、マニアックな切り抜き動画がループ再生されていた。






 沈黙のあと、彼女はようやくぼそりとつぶやいた。






「くそだる」






 おわり。



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