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エリシア・アソート(短編の詰め合わせ)

 エリシアと戦士は強力なボスモンスターと激闘を繰り広げていた。




 戦場は荒れ果てた廃墟、瓦礫が散乱し、空には雷雲が渦巻いている。ボスモンスターの咆哮が轟き、戦士が鋭い一撃を食らって地面に倒れ込む。




「エリシア……早く俺に……薬草を!」




 戦士の声は弱々しく、瀕死の状態だった。




 エリシアは口をもごもごと動かしながら、戦士に振り返る。




 しかし、彼女の口には最後の一個の薬草が入っていた。




 エリシアはクッチャクッチャと噛みながら、ためらうことなく口の中から涎まみれのぐちゃぐちゃになった薬草を無言で取り出し、戦士に差し出す。




 戦士は驚きと混乱の表情を浮かべる。




「——ッ!」




 ——教会の神父が戦士の亡骸の前で悲しい声で告げる。




「おおぉ……戦士よ!なぜ……」




 ちなみに、このあと復活した。



¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥



 エリシアは倒した魔物の肉を焼こうとしていた。しかし、彼女は着火用具を忘れてしまったことに気づく。




「どうしましょう……」




 そこへ、怪しげな男が現れた。男は薄暗いマントを羽織り、怪しい笑みを浮かべている。




「ふふふ……お困りのようですな」




 エリシアが返事をする前に、男はいきなり何かを取り出した。




「火吹きトカゲを壺の中に入れて、火を吹かせる。これを炎のツボと呼ぼう……」




 男は壺を持ち上げ、得意げに火吹きトカゲを見せつける。


 エリシアは一瞬男に目を向けるが、すぐに彼を無視して自分の魔法を使うことにした。




「……面倒ですわね。」




 エリシアは静かに呪文を唱え、手のひらから炎を生み出して炭に向けて放った。炭は瞬く間に燃え上がり、肉を焼く準備が整った。


 男は驚いた表情を浮かべるが、エリシアは気にも留めず、肉を炭火に乗せて焼き始めた。




 ——あくる日。




 エリシアは巨大なモンスターと激しく戦っていた。剣と魔法を駆使し、全力で攻撃を繰り出す中、不審な男が近づいてくる。




「ふふふ……お困りのようですな」




 エリシアは男の声を無視し、戦いに集中する。


「どけ、邪魔ですわ」




 男は懐から何か取り出して、得意げに説明を始めた。




「ここに嘆きの亡霊がいる。こいつを壺の中に入れて呪詛を唱えさせる。これを死のタコツボと呼ぼう」




 男が話し終える前に、エリシアは一撃でモンスターを片づけ、その場を去った。




「もう少しまともなタイミングを選んでほしいものですわね」




 エリシアは呟きながら、次の冒険へと足を進めた。



¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥



 エリシアは世田谷の住宅街を歩いていると、公園に子供たちが集まっているのを見かけた。何やら賑やかな声が聞こえてくる。




「おじちゃん、カミシバイやってよ!」

「面白そう〜!」




 エリシアは興味をそそられて足を止め、少し離れた場所から様子を伺った。




 エリシアは子供たちに混じって紙芝居を見ていたが、突然おっさんがめんどくさそうに言った。




「一人千円」




 エリシアは驚いて眉をひそめた。


「はぁ?千円!?」




 子供たちも困惑しながらお金を出した。エリシアも仕方なくお金を渡すと、おっさんはニヤリと笑いながら受け取った。




「これで倍にできるわ」




 おっさんが訳のわからないことを呟きながら、紙芝居を始めた。




「キービィとドドド帝王の物語ぃ〜!」




 エリシアは少し不満げに腕を組んで紙芝居を見つめた。子供たちはおっさんの声に引き込まれ、物語に夢中になっている。




「ペペペランドにはキービィが住んでいました」




 おっさんは紙芝居の次のページをめくった。




「お腹すいたな、そうだ、スシゼンマイにいこう!」




 キービィが空腹を感じて、近所の寿司店に向かうシーンが描かれていた。




「しかし、キービィがお店に行くと何もありませんでした」




 エリシアは目を見開いて子供たちと一緒に続きを見守った。




「なんとドドド帝王がペペペランド中の食べ物を盗んでしまったのです」




 おっさんが劇的な声で説明すると、子供たちは驚きの声を上げた。




「お腹がすいて力が出ない……でも、なんとかしなくちゃ!」




 キービィは食べ物を取り戻すために旅に出ることを決意した。エリシアも、物語の展開に引き込まれ、次のページを期待して見つめていた。


「よし、僕がドドド帝王を懲らしめる!」と、可愛らしいキービィが意気込む姿を見て、子供たちは期待に胸を膨らませた。


 エリシアも興味津々に次のページを見つめた。




 おっさんが次のページをめくると、場面が一転し、寂れた定食屋に転がり込むナカクラ・ケンがリアル調で描かれていた。




「醤油ラーメンと、……カツ丼」




 ナカクラ・ケンは、疲れた様子で注文をした。店主がぶっきらぼうに「あいよ」と返事をする。




 エリシアは急な展開に戸惑いながらも、続きを見守った。子供たちも少し困惑しながら静かに耳を傾けている。


 ナカクラ・ケンは帽子を目深く被り、出されたビールを手に取る。10年ぶりに口にするビールに、彼の目にわずかに光が宿る。




「刑務所での過酷な日々、それが今やっと……」




 おっさんが情感を込めてナレーションを続ける。ケンが過去を思い出しながら、ビールを一気に飲み干すシーンが描かれていた。




「えっと……これ、キービィの話じゃないですわよね?」


 エリシアが困惑した声を漏らす。




 おっさんが次のページをめくると、キービィが勇敢に切り株に話しかけている姿が現れた。




「僕を通してくれないと困るんだ」


「ここを通りたければ、試練を乗り越えねばならん!」




 おっさんは大げさに声を低くして切り株のセリフを読み上げた。


 おっさんがページをめくると、切り株の前に謎の魔法使いが立ちはだかるシーンが描かれていた。




「その試練は…私との戦いだ!」




 エリシアが興味津々で見守る中、おっさんは再び紙をめくった。キービィが勇気を振り絞って魔法使いに立ち向かう姿が描かれていた。




「行くぞ、キービィ!負けるな!」




 子供たちの声援が響く中、おっさんはさらにページをめくり、次の展開を語り始めた。




 次は劇画タッチで描かれた港のシーンが現れた。二人のヤクザが話している。




「五智いぃ!おどれは人殺しを楽しんどるんかああっ!?」




 組織の首領(ドン)「桜田」が五智を一発殴る。五智の口から血が滴る。




「兄貴ぃ、わしは兄貴のためやったら鬼にも蛇にもなる……!死神にさえ魂売りまっせ!わしは兄貴に日本一の組織の首領(ドン)になって欲しいんや!」




 子供たちは困惑し、エリシアも目を丸くする。


「これ、子供向けじゃないですわよ!」




 おっさんは無視して、さらにページをめくる。




 おっさんが次のページをめくると、可愛らしいキービィが大きな城の前に立っているシーンが現れた。




「ついにキービィがドドド帝王の城に到着しました。『ここがドドド帝王の居城か……。必ず倒してやる!』」




 おっさんがまたページをめくる。




「ドドド帝王が現れました。『ほう、小さなキービィよ、我が城に何の用だ?』」




 キービィが勇敢な姿勢で立ち向かう。




「ドドド帝王、ペペペランドの食べ物を返せ!」




 ドドド帝王が大きな笑い声を上げる。




 おっさんが次のページをめくると、突如タワマンのチラシが現れた。




「青き静寂の調べ。高層の天へと昇るその姿。まるで天空へと手を伸ばす塔のごとく。青い空を切り裂き、白き雲を友とする。」




 エリシアは驚きながら突っ込む。




「えぇ!?紙芝居に不動産のチラシ!?どういうことですの!」




 おっさんは気にせず続ける。


「3LDKで1億1千万」




 子供たちも困惑の表情を浮かべる中、おっさんは淡々と次のページをめくった。




 おっさんが何故か「今日はここまで」と言いながら紙芝居を片付け始める。子供たちが不満の声を上げる中、エリシアはその光景を見つめていた。




「え、ちょっと待ってくださいまし。お話はまだ途中ですわ!」




 しかし、おっさんは子供たちの声もエリシアの抗議も無視して、自転車に乗り、あっという間に去っていく。




 その後、すぐに誰かが公園まで走ってきた。




「待てぇ!ドロボー!ドロボー!」




 エリシアはその方向を見て驚いた。




「いや、誰やねんあいつ」




 おっさんが盗んだ自転車で逃げる方向を見て、エリシアは思わず突っ込んだ。

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