かましたれ!エリシアちゃん!
闇の魔術師が勇者たちを睨みつけ、薄暗い洞窟の奥で対峙していた。
その手には、不気味な模様が描かれた古いツボが握られている。魔術師の声が低く響いた。
「このツボには、かつて世界を恐怖に陥れた悪魔が封じられている。貴様らにこれを扱うことなどできはしない……!」
ツボからは、かすかに闇の気配が漂い、見る者に不安と恐怖を植え付ける。その威圧感に、勇者たちも思わず一歩後ずさりしてしまった。
闇の魔術師は、にやりと冷たい笑みを浮かべながら、ツボを掲げた。闇の魔力がその手に集まり、ツボに宿る悪魔を解放する準備をしているのだ。
「さあ、この恐るべき力を目にするがいい。お前たちの運命はここで終わるのだ!」
しかし、その瞬間、ツボがかすかに揺れ、中から奇妙な音が響いた。
勇者たちは息を呑み、魔術師も動揺を隠せないまま、そのツボを見つめた。
ツボから漂う闇の気配が一瞬濃くなり、ついに中から何かが現れた。
その姿を目の当たりにした勇者たちと闇の魔術師は、次に起こる恐怖を覚悟して身構えた。
——しかし、現れたのはエリシアだった。
彼女はツボから上半身だけを出して、何か不機嫌そうな顔をしている。
場の緊張は一気に凍りつき、一行は全員沈黙し、目を見開いたままその光景を見守った。
エリシアは全員を一瞥すると、何とも言えない表情でぽつりと呟いた。
「油が少ないんですの、油が!」
その一言に場の空気は完全に崩壊し、勇者たちも闇の魔術師もただ唖然として立ち尽くすしかなかった。
エリシアはそのままツボの中に戻っていき、ツボの蓋がカチリと閉まる音が洞窟内に響いた。
一同はしばらく沈黙し、何が起こったのか理解できないまま立ち尽くしていた。




