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スマホがない!

 エリシアはソファに座って、何気なくテレビを見ていた。画面にはニュースが映し出され、アナウンサーが深刻な顔で話している。




「今日のニュースです。半グレ集団が置き引きやスリで盗んだ品物を、フリマアプリや質屋を通じて売り捌いているという情報が入っています。警察はこの手口を悪質と見て、捜査を強化する方針です」




 エリシアはそのニュースを聞きながら、画面に映る映像に目を細めた。


 盗まれた品物が次々と質屋やアプリで売られている様子が映し出される中、彼女は何かを思案しているかのように、静かに考え込んでいた。


 ニュースに対する興味が薄れたエリシアは、リモコンを置いてスマホゲームをしようと手を伸ばした。




 しかし、いつも手元にあるはずのスマホが見当たらない。




「……あら?」


 エリシアは少し眉をひそめ、周りを見回した。ソファのクッションの間やテーブルの上を探してみたが、スマホはどこにも見つからない。


 エリシアは次第に焦りを感じ始めた。


 スマホが見つからないことに気づくと、慌てて部屋中を探し始めた。ソファの下やクッションの間、テーブルの下、カバンの中――あらゆる場所を掘り返すようにして探すが、スマホはどこにもない。


「嘘でしょ!?どこにいったんですの!?」


 エリシアは焦りを隠せず、立ったりしゃがんだりしながら必死に探し続けた。心臓がバクバクと高鳴り、額に冷や汗が滲む。普段は冷静な彼女が、今では完全に慌てふためいている。


「あぁ、もう!どこに消えたんですの!?」


 エリシアは部屋中を探し回りながら、頭の中で今日の出来事を思い返した。


 コンビニで買い物をしたとき、電車に乗ったとき、デパ地下でスイーツを買ったとき……そのどこかでスマホを落としたか、盗まれたかもしれないと、彼女の焦りは一層強くなった。


「ああもう、これは一大事ですわ!」


 エリシアは急いで手にしていたスマホを耳に当て、ヴァイに電話をかけた。数回のコールの後、ヴァイが電話に出た。




「何だ?」




 エリシアは息を整えながら、急いで状況を説明した。




「ヴァイ、大変ですの!スマホが盗まれましたの!今すぐ何とかしてほしいですわ!」



 エリシアの言葉を聞いたヴァイは、冷静さを失いかけた。


 彼女が「スマホが盗まれた」と言った瞬間、事態の深刻さを過剰に想像し、慌てて電話を切ると、すぐにアジトを飛び出した。


「スマートじゃねえな!」


 ヴァイは冷徹なプロフェッショナルの仮面をかなぐり捨て、必死にエリシアのスマホを探すべく街中を駆け巡る。


 彼の頭の中は、盗まれたスマホが敵の手に渡り、何かしらの情報が漏れるのではないかという最悪のシナリオでいっぱいだった。


 一方、エリシアはそのままスマホを握りしめ、しばらく放心していた。




 アジトを飛び出してからしばらく街中を駆け回っていたヴァイは、ふとさっきのニュースを思い出した。


 半グレ達が置き引きやスリで盗んだ品物をフリマアプリや質屋で売り捌いているというニュースだ。


「そうか……」


 ヴァイはその可能性に思い至り、すぐに次の行動を決めた。


 彼は一度アジトに戻り、見た目にもわかりやすいカバンを用意した。カバンには、あたかも貴重な品物が入っているように見せかけるため、わざと少し膨らませておいた。




 ヴァイはカバンを手に持ち、わざと注意散漫な様子を装って街を歩き始めた。




 彼の動きは一見すると雑で隙だらけに見えたが、その実、周囲を警戒しながらいつでも反撃できる準備を整えていた。半グレたちがカバンに目をつけ、接近してくるのを待ちながら、ヴァイは冷静な心を取り戻しつつ、計画を進めた。




 ヴァイが街中を不注意を装って歩いていると、視界の端に怪しい動きが映り込んだ。




 半グレの一人が、何気なく通りかかった老婆に近づき、そのポケットから素早く財布を抜き取ったのだ。


 ヴァイはその瞬間を見逃さなかった。半グレが老婆に何気ない風を装って接近し、手際よく財布を奪い取る様子をしっかりと捉えた。彼は一瞬の躊躇もなく、素早く行動に移った。




 ヴァイは素早く半グレに接近し、その肩をがっちりと掴んだ。

 驚いた半グレが振り向くと、ヴァイはニヤリと笑いながら言った。


「今日の運勢占い、見たか?」




 半グレが何が起きているのか理解する前に、ヴァイは素早く鳩尾に強烈なパンチを繰り出した。




 一瞬で意識を失った半グレはその場に崩れ落ち、完全に気絶してしまった。


 ヴァイは倒れた半グレを片手で持ち上げ、近くの路地裏にある誰もいない雑居ビルの扉へと向かった。彼は無造作にビルの扉を蹴り壊し、開いた隙間に半グレを力任せに放り投げた。


 半グレは重い音を立てて雑居ビルの中に転がり込み、そのまま床に倒れ込んだ。ヴァイは冷ややかな目でそれを見下ろし、静かにビルの中に足を踏み入れた。




 半グレが気絶から目を覚ますと、目の前にはヴァイが立っていた。




 暗い雑居ビルの中で、ヴァイのシルエットが不気味に浮かび上がり、その顔には狂気的な笑みが浮かんでいる。




「思わぬ出会いがあるらしいってよ!」




 ヴァイの言葉が耳に入ると同時に、半グレの心には恐怖と混乱が広がった。彼の笑顔は狂気に満ちており、まるで次に何をされるのか全く予測できない恐ろしさを感じさせた。


「おい、誰でもいいからスマホを盗んだやつを教えな」


 ヴァイは半グレの襟を掴んで持ち上げ、締め上げた。


 力強く、冷徹な声で問い詰める。

 半グレは呼吸が苦しくなり、必死に息を吸おうとするが、ヴァイの圧力から逃れることはできない。


「教えろ。でなきゃ、次はもっと厄介な出会いが待ってるぞ」


 半グレは恐怖に支配され、なんとか言葉を絞り出そうとした。彼の頭の中はパニック状態で混乱していたが、ヴァイの冷徹な目から逃れる術はなかった。




 ヴァイは半グレから必要な情報を引き出せないと判断すると、ためらいなく彼を肩に担ぎ上げた。


 そして、そのまま交番へと向かい、扉を勢いよく蹴り開けると、中にいる警察官たちに向かって大声で叫んだ。




「マッポども、餌の時間だぞぉ〜」




 ヴァイは交番の床に半グレを投げ捨て、無造作に立ち去った。


 警察官たちは呆気に取られつつも、投げ込まれた男を取り囲み、何が起こったのかを理解しようとした。


 一方、ヴァイは再び街に戻り、次々と他の半グレたちを拉致しては締め上げていった。


 どこにいる半グレも彼の手からは逃れられず、彼は容赦なく彼らを追い詰めていった。しかし、何人捕まえても、何度問い詰めても、エリシアのスマホは一向に見つからなかった。




 ヴァイはついに諦めの境地に達し、ため息をつきながらエリシアに電話をかけた。電話が繋がると、彼は冷静を装って提案した。


「もう新しいの買えばいいんじゃないか?」


 しかし、エリシアの返事は予想外のもので、彼の耳に大声で飛び込んできた。




「見つかりましたわ!」




 ヴァイは驚いて返した。




「どこにあったんだ?」




 エリシアはさらに自信満々に答えた。






「私の右手ですわ!」






 ヴァイは一瞬言葉を失い、電話の向こうから聞こえてくるエリシアの誇らしげな声に呆れながらも、もう何も言えずにただ電話を切るしかなかった。

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