エリシアの大冒険〜ハートフルストーリー〜

企画会議

　ビルの一室で、企業の企画会議が進行していた。

　会議室には数名のスーツ姿の社員が集まり、真剣な表情で資料を見つめている。

　プロジェクターからは次のプロジェクトの計画がスクリーンに映し出され、プレゼンターが説明を続けていた。

「次に進めるべきは、この新商品についてのマーケティング戦略です。ターゲット層の分析から、広告展開のスケジュールまでを決定する必要があります」

　プレゼンターの声が部屋に響く中、参加者たちは黙々とメモを取り、次々と質問や意見を出し合っていた。

　室内には緊張感が漂い、全員がこのプロジェクトの成功に向けて集中している様子が伺えた。

　ホワイトボードにはいくつかのアイデアが書き込まれ、各部署からの提案が議論されていく。今後の市場動向や競合他社の動きなど、さまざまな視点からの意見が交わされ、会議はさらに白熱していった。

　会議が進行している最中、突然、会議室の扉が勢いよく開いた。

　全員が驚いて扉の方を見やると、そこに現れたのはピエロの格好をしたエリシアだった。

　エリシアは不機嫌そうな顔をしながら、なぜかあまりにも大きな靴を履いていた。

　その靴はカラフルで滑稽なデザインだったが、異様に大きく、彼女が一歩歩くたびに足元でガンガンと音を立てた。

「っち……せめぇですわ！」

　エリシアは靴がオフィスの机やプリンターにぶつかるたびに舌打ちしながら、狭い会議室を無理やり歩き回った。

　机の角に靴が当たって大きな音が響き、その度に参加者たちはギョッとしながらエリシアを見つめた。

　会議室内の空気は一瞬で異様なものに変わり、参加者たちは状況を理解できずに困惑した表情を浮かべていた。

　エリシアはまるで自分の存在が当然であるかのように振る舞い、会議の進行など気にせず、狭い空間でその大きな靴をガンガンと当て続けた。

　彼女が不機嫌な顔で歩き回るたびに、部屋中に奇妙な緊張感が広がっていった。

　エリシアは不機嫌そうな顔をしたまま、社員が座っている椅子の後ろを通ろうとした。しかし、会議室は狭く、大きな靴を履いたエリシアが通れるスペースはほとんどなかった。

　彼女は一瞬立ち止まり、狭いスペースを見つめると、さらに苛立った表情になった。

　そして、突然、椅子の背もたれを力強くバァン！と叩いた。

　その音が部屋中に響き渡り、椅子に座っていた社員は驚きのあまり体を強張らせた。エリシアはそのままじっと社員を睨みつけ、威圧するような態度を見せた。

　彼女に恐怖を感じた社員は、急いで椅子をずらし、エリシアが通れるようにスペースを空けた。

　エリシアは何も言わず、また不機嫌そうな表情を浮かべながら、ガンガンと靴を鳴らして狭い空間を通り抜けた。

　会議室内の空気は完全に張り詰めており、他の社員たちもただ息を飲んでエリシアの動きを見守るしかなかった。

　エリシアは狭い会議室をなんとか通り抜け、ホワイトボードの前に立った。

　彼女は一言も発せず、周囲を見回すことなく、突然お手玉を取り出した。

　誰もが予期しない行動に、会議室内の全員が驚きと困惑の表情を浮かべた。

　エリシアは無言のままお手玉を始めたが、その技術はどうやらお粗末なもので、玉が高く上がるたびにバランスを崩し、すぐに一つ、また一つと床に落としてしまった。

「っち……」

　エリシアは不満げに舌打ちし、ため息を吐きながら床に落ちたお手玉を拾い上げる。再び挑戦するも、またすぐに失敗してしまう。

　部屋には彼女の苛立ちを表す舌打ちと、ため息が響き渡った。

　社員たちはその様子を目の当たりにし、唖然としてエリシアを見つめるしかなかった。会議室に広がるのはただただ奇妙な沈黙と、エリシアの不機嫌そうな表情だけだった。

　エリシアは不満そうにため息をつきながら、床に落ちたお手玉を最後に拾い上げた。そして、無言のままそれを投げ捨てると、突然、呆然とした表情で座っている課長の方に目を向けた。

　一瞬の間があった後、エリシアは課長に歩み寄り、何も言わずに彼の頭にそっとリンゴを乗せた。

　課長は驚いて固まったまま、何が起こっているのか理解できずに目を見開いていた。会議室の全員が緊張感に包まれ、次の展開を息を飲んで見守っていた。

　そのままエリシアは、どこからか弓矢を取り出し、課長の頭上にあるリンゴに狙いを定めた。

　会議室の空気は一瞬で凍りつき、誰もがこれから起こるであろう惨状に恐怖を覚え、目を背けたくなる思いでいっぱいだった。

　しかし、エリシアは表情を一切変えることなく、冷静に狙いを定めて弓を引いた。

　そして、次の瞬間――矢は音もなく飛び、見事にリンゴの中心を貫いた。

「……！」

　リンゴは真っ二つに割れ、その果汁が一気に飛び散った。書類やスーツに飛び散ったリンゴの汁は、予想外の惨状を引き起こし、会議室内はある意味でカオスに陥った。

　課長は何が起きたのか理解するのに数秒かかり、頭に乗っていたリンゴの残骸が落ちてきたことでようやく状況を把握した。

　周囲の社員たちも、エリシアの驚くべき腕前と、その結果引き起こされた惨状に目を見張りながら、何も言えずにただ立ち尽くしていた。

　会議室がリンゴの汁で混乱に陥っている中、エリシアは一切動じることなく、静かに新しい行動を始めた。

　彼女はどこからか大きな風船のようなボールを取り出し、それを膨らませ始めた。空気を送り込む音だけが響く中、会議室内は不気味な静けさに包まれた。

　ボールが十分に膨らんだところで、エリシアは突然その上に乗り、玉乗りを始めた。

　社員たちは、何が起こるのか息を飲んで見守った。

　だが、予想通りというべきか、エリシアの玉乗りはうまくいかなかった。

　最初はバランスを取ろうとしていたものの、すぐにボールが不安定になり、彼女はホワイトボードに激突。ボードがガタガタと音を立てて倒れかけた。

　エリシアはそれでも諦めずにバランスを取り直そうとするが、今度はボールが机にぶつかり、上に乗っていた書類が床に散乱した。さらに、勢い余ってコピー機に激突し、そのまま機械の上を転がりながら再びバランスを崩す。

　会議室内は次第に混乱の渦に巻き込まれていった。

　ボールが勢いよくあちこちにぶつかるたびに、エリシアが舌打ちし、物が飛び散り、会議室の中は完全にめちゃくちゃになった。

　書類が床に散らばり、リンゴの果汁にまみれたスーツを着た社員たちは、どうしていいか分からず、ただ呆然とその光景を見つめていた。

　ついにはエリシアもバランスを崩してボールから落ち、ボールが壁にぶつかって跳ね返り、机の脚に絡まって転がった。会議室はすでに収拾がつかないほどの混乱状態に陥っていた。

　エリシアは何事もなかったかのように立ち上がり、ボールをひょいと手に取ると、周囲を見回し、満足げな表情を浮かべた。

　エリシアは、完全にめちゃくちゃになった会議室を見渡し、軽く舌打ちした。

「っち……狭いですわね！」

　彼女は不満げにそう言い放つと、大きな靴を鳴らしながら、何事もなかったかのように会議室のドアに向かって歩き出した。

　机や椅子に再びガンガンとぶつかりながら、エリシアはようやく扉にたどり着き、無造作にドアを開けて外に出ていった。

　エリシアが去った後、会議室には一瞬の静寂が訪れた。

　社員たちは混乱と疲労の入り混じった表情で、破壊された会議室を見回し、何が起こったのか理解するのにしばらく時間を要した。

　部屋中に散乱した書類、リンゴの汁で汚れたスーツ、倒れたホワイトボードと机――その惨状に、誰もが言葉を失ったまま立ち尽くしていた。