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収集癖

 エリシアは冒険の一時的な拠点として格安のアパートをオーナーと見に来ていた。




 エリシアは格安アパートの外観を見上げた。老朽化した建物の壁には、所々にヒビが入っている。


 オーナーは微笑みながら説明した。




「まあちょっと賑やかなところですけど、住めば都と言いますしね」




 エリシアは怪訝な表情を浮かべながら尋ねた。


「トイレは共用ですの?」




 オーナーは頷いた。




「ええ、各階に共用のトイレがあります。清掃もちゃんとしていますから、安心してください」




 エリシアは一瞬不安を感じたが、冒険の拠点としての利便性を考えて、頷いた。




「なるほど……。他に何か問題はありますの?」




 エリシアとオーナーが建物を外から見上げていると、突然、建物の中から大声が響き渡った。






「あんた、またこんなの拾ってきてええええぇ!」


「うっさいなぁ、ええやんけ!」






 エリシアは驚いてオーナーに目を向けた。




「今のは一体……?」




 エリシアとオーナーが外から建物を見ていると、突然二階の窓が開き、変なババアが何か大きなものを窓から放り出した。




「こんな拾ってきて、どうすんのおおおおおぉ!こらあああっ!」


「売ったら高いねん!売ったら高いねん!やめえや!」




 エリシアとオーナーが見守る中、二階の窓から投げ捨てられたのは、何かの「腸」だった。




 信じられないほどの大きさで、腸からは黄色い粘液がぼたぼたと落ちてきた。




「あんた、こんなもんどうすんのおおおおおぉ!こらあああっ!」


「売ったら高いねん!売ったら高いねん!」




 ババアとジジイが腸を窓から捨てようとして揉み合いになり、腸がぶらんぶらんと揺れた。その拍子に変な粘液がエリシアとオーナーの方に飛び散る。




「ピャアアぁあ!?」




 エリシアは思わず叫び、服の袖で顔を拭った。オーナーも困惑した表情で腸の方を見ていた。




「こんなもん売ってどないすんねええええぇん!」


「ええやないか!」


「べちゃべちゃやないかああああぁ!こんなもん、いらああああああぁんっ!」




 ババアは勢いよく腸を窓から次々と放り投げていく。その腸は信じられないほど長く、ババアの金切り声とともに、どんどんと外に出て行った。




「あぁ!放ったらあかんちゅうねん!」


「売ったら高いねん!」


「なんやこれえええええぇええぇ!」




 ババアは腸にくっついたブツブツをちぎって放り投げ始めた。その一つがエリシアの方に飛んできた。




「ピギャあああぁああぁ!?」




 エリシアは驚愕し、急いでその場から飛び退いた。粘液が彼女の服に付着し、強烈な匂いが漂ってきた。




「こんなもんなぁ!なんぼにもなれへんねんっ!!」




 ババアはヒステリックに叫びながら、腸を次々と外に放り投げていく。その力はまるで怪力のようで、巨大な腸が窓からどんどん出て行った。




「あああぁ!やめえいうてんねん!」




 ジジイの叫び声もむなしく、腸は放り出され続け、黄色い粘液がそこらじゅうに飛び散っていた。エリシアとオーナーは必死に避けようとするが、粘液が飛んでくるスピードは予想以上だった。




「ぴゃああああああぁ!?」




 エリシアは再び粘液を浴び、さらに驚愕の表情を浮かべた。服はもう粘液まみれで、強烈な臭いが鼻をつく。


 エリシアとオーナーは、腸の粘液を避けようと必死だった。




 だが、ババアの視線がこちらに向けられた。




「なにみとんねん!見せもんちゃうぞぉおおおおおお!」




 ババアは二人を指差し、声を荒げた。


「夫婦喧嘩がそんな面白いかこらああああ!」




「どっか行けやああああぁ!」




 その叫び声の直後、ババアはハサミを持ち出し、窓から垂れ下がっているもう一本の腸を無理やり切り落とし始めた。ハサミの刃が腸に食い込む音が響き渡る。




「あぁ!やめえいうてんねん!」




 ジジイが必死に止めようとするが、ババアの勢いは止まらなかった。最後に腸が切り落とされ、窓から地面に落ちた。粘液が地面に飛び散り、辺りに異様な臭いが漂う。




 ジジイは急いで階段を駆け降り、切り落とされた腸を抱え込んだ。




 そのまま、エリシアとオーナーにぶつかってきた。




「うわぁ!なにすんですの!」




 二人は驚いて後ろに倒れ、植え込みに派手に転がり込んだ。


 泥と葉っぱが服に付着し、二人はあたりを見回しながら起き上がった。ジジイはそのまま腸を抱えてどこかへ走り去って行った。




 エリシアは泥だらけの服を見てため息をついた。




「こんなところで落ち着けるわけがないですわ!」




 オーナーは苦笑いを浮かべ、肩をすくめた。




「申し訳ありませんね。少々賑やかすぎましたかねぇ。」




 エリシアは頭を振りながら、泥を払い落とそうとした。これは一筋縄ではいかない冒険の予感がした。

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