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ネタ詰め合わせ

 アパートの合鍵を作ろうと思った男性は、「超スピードでお渡しします」という看板に目を留め、その文言に惹かれて店に入った。店内は少し暗く、埃っぽい雰囲気が漂っていた。




 カウンターの向こうには、金髪の女性――エリシアが肘をついて雑誌を読んでいた。




 表紙には「めっちゃええ感じvol3」と書かれており、彼女はその内容に夢中になっているらしく、ゲラゲラと笑い声をあげていた。


 男性は少し戸惑いながら、カウンターに近づいて声をかけた。




「あの……すみません、合鍵を作りたいんですが……」




 エリシアは笑いをこらえながら顔を上げ、男性を見た。


 エリシアは男性にほとんど目もくれず、手を差し出して無言で代金を要求した。男性は戸惑いながらも財布からお金を取り出し、彼女の手に渡した。




 エリシアはお金を受け取ると、カウンターの下から無造作にバールを取り出し、ドンとカウンターに置いた。




「はい、合鍵」




 エリシアは満足げに微笑んで、再び「めっちゃええ感じvol3」を手に取って読み始めた。男性は呆然とした表情でバールを見つめ、どうすればいいのか分からずに立ち尽くすしかなかった。


 おわり



**********




 パソコンの動作が重くなって困っている老人が、机の上に散らばった書類の中から一枚のチラシを見つけた。「お悩み解決!」と大きく書かれた文字に引かれ、彼は迷わず電話をかけた。




「すみません、パソコンが重くて困ってるんですが……」




 電話の向こうから、やたら元気な女性の声が返ってきた。




「はい、パソコンが重いんですのね?すぐいきますわよ!」




 その声は、妙に勢いがあって、まるで今すぐにでも飛んでくるかのようだった。老人は少し驚きながらも、助けが来ることに安心して電話を切った。


 しばらくして、老人の家に勢いよく玄関のチャイムが鳴った。




 老人がドアを開けると、そこにはエリシアが立っていた。




 しかし、彼女の後ろには、筋肉ムキムキの屈強な男たちがずらりと並んでいた。




 エリシアは満面の笑みを浮かべ、胸を張って言った。




「で、どこまで運びますの?」




 老人は目の前の光景に唖然とし、言葉を失った。男たちは今にもパソコンを運び出そうと待ち構えていた。


 おわり



**********




 エリシアは薄暗い部屋の中で昼寝をしていた。


 窓から差し込む柔らかな光が、彼女の顔を優しく包んでいたが、外から聞こえる選挙カーの声が次第に大きくなり、彼女の安らかな眠りを妨げ始めた。




「〇〇候補、〇〇候補をどうぞよろしくお願いいたします!」




 エリシアは眉間にしわを寄せ、寝返りを打つ。

 だが、選挙カーの音は止むことなく、外をぐるぐると回り続けていた。


 そのうち、今度は拡声器からの声が響き渡った。




「いしや〜きいも〜……、お・い・も」




 その声が耳に届くと、エリシアの眉間がピクッとなる。しかし、彼女は何とか我慢して、目を閉じ続けた。


 だが、次に聞こえてきたのはさらに耳障りな声だった。




「わらび〜もち、わらび餅だよぉ〜ん。甘くて冷たい、わらび餅!……プルプルプル、っぷるぅ~ん!」




 エリシアの目がぴくぴくと動き始める。

 寝続けようと必死に耐えるが、音はどんどん大きくなっていく。


 それに加えて、焼き芋の屋台とわらび餅の屋台が競うように音量を上げ、声が重なり合い、騒音が一層ひどくなる。まるで外で音のバトルが繰り広げられているかのようだ。




「いしや〜きいも〜!」

「わらび〜もち!」

「〇〇候補をどうぞよろしくお願いいたします!」




 さらに、そこに加わるように新たな拡声器の声が響いた。




「こちらは不用品回収です。ご家庭でご不要になった、テレビ、エアコン、洗濯機、壊れていてもかまいません」




「竹や〜竿だけ〜!」




 エリシアはついに限界を迎え、勢いよく窓を開けようとしたその瞬間、外で思いもよらない展開が繰り広げられているのが聞こえてきた。




「おい、お前、うっさいねん。選挙妨害やぞ!」




 選挙カーに乗っている候補者がマイクを通して、焼き芋の店主に向かって声を荒げた。


 焼き芋の店主は顔を真っ赤にして、怒りを露わにしながら選挙カーに向き直った。




「お前こそうっさいわ!営業妨害やんけ!焼き芋売ってるんやぞ!」




 二人の声はますます大きくなり、街中に響き渡った。


 選挙カーの候補者と焼き芋の店主が、互いに言い争い始める中、わらび餅の屋台がその様子を見てニヤリとし、さらにボリュームを上げて売り声を響かせる。




「わらび〜もち、わらび餅だよぉ〜ん!プルプルプル、っぷるぅ〜ん!」




 混乱が広がり、街の静寂は完全に破壊された。騒音がますます大きくなる中で、エリシアは怒りを抑えつつ、事態の収拾がつかなくなっている様子に呆然と立ち尽くしていた。




 外の騒音が収まるどころか、ますますエスカレートしていった。


 選挙カー、焼き芋屋、わらび餅屋、不用品回収業者が互いに競い合うように音量を上げ、誰もが一歩も引かない状態になっていた。




 エリシアも我慢の限界を超え、窓を開け放ち、怒りの声を張り上げた。




「うるせえええぇ!」




 それを聞いた他の住民たちも次々と窓やドアを開け、同じように叫び始めた。




「うっせえええぇええ!」

「お前がうるさいんだよ!」

「いい加減にしろ!」




 近隣の全ての住民が互いに怒鳴り合い、まるで街全体が一つの大きな喧嘩に巻き込まれたかのようだった。




 通りは「うっせえええぇええ!」という大合唱で埋め尽くされ、混乱はピークに達した。




 その時、警察がパトカーで現れ、サイレンを鳴らしながら、必死に騒ぎを鎮めようとマイクを手に取り叫んだ。




「お静かに!お静かに!」




 しかし、その声さえも騒音にかき消され、誰も聞く耳を持たなかった。むしろ、住民たちはその警察の声にさらに反応し、警察にも文句を言い始めた。




「お前こそ、うるせえんだよ!」


「何なんだよ!お前らが一番騒いでるじゃねえか!」




 警察官が怒りを抑えきれず、顔を真っ赤にして応戦する。


「あ゛ぁん!?公務執行妨害やぞ!逮捕すんぞ!」




 誰も彼もが怒鳴り合い、街中は完全にカオスと化した。通りは怒声と叫び声で溢れかえり、誰が何を言っているのかさえ分からない混沌とした状況に。エリシアも周囲の喧嘩の中心に巻き込まれ、事態は収拾がつかなくなっていた。




 街中が騒音と怒号で混沌としている中、誰もが怒鳴り合い、何が起こっているのかさえ分からないような状態だった。




 その喧騒のただ中を、突然、まるで何事もなかったかのように「雪やこんこん、アラレやこんこ〜♪」と灯油販売のトラックが通り過ぎていった。




 おわり

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