うっさいねん!こら!
エリシアがサッカー世界大会のチケットを手に入れたのは、まるで運命の巡り合わせのようだった。
彼女は心躍る興奮とともに、サッカーの本場であるボルジルに向かう準備を整えた。ボルジルの地に足を踏み入れると、街全体がサッカー一色に染まっているのが感じられた。
エリシアは現地の空気を胸いっぱいに吸い込みながら、スタジアムへと向かう道を歩いた。
道中、サッカーファンたちが旗を振り、応援の歌を歌っている様子が見られ、エリシアもその熱気に包まれていった。
スタジアムに近づくにつれ、歓声と興奮が増していくのが感じられた。
スタジアムの外観は圧巻で、その大きさに目を見張るばかりだった。エリシアはチケットを手に、少し緊張しながらも期待でいっぱいの表情を浮かべていた。
「ここがサッカーの本場……!」
エリシアは感慨深い思いを抱きながら、入場ゲートをくぐった。
スタジアム内に入ると、その広大なピッチと客席の広がりに圧倒された。観客席はほぼ満席で、各国のサポーターたちが色とりどりのユニフォームを着て、応援の声を上げていた。
エリシアはスタジアムの熱気に圧倒されながら、キックオフの瞬間を迎えた。
サッカーの試合が始まると、スタジアム全体が一斉に沸き立ち、興奮の声と歓声が巻き起こった。
エリシアも応援しようと意気込んでいたが、彼女の心配はすぐに現実となった。
「どっちのチームがどれなのですわ?」
エリシアは周りのサポーターたちの様子を見て、必死にどのチームがどれなのかを把握しようとした。
しかし、その瞬間、スタジアム内に響き渡る音の嵐が彼女を完全に圧倒した。
ブブゼラという楽器がスタジアム全体に響き渡り、その音は尋常ではないほどの大音量であった。エリシアはその音を初めて体験し、その壮絶さに驚愕した。
「ブオオォオおおぉぉおおぉ!」
「ブオオオオォォォオオおぶううぶうううううううぉおぉおぉう!」
その音は、耳をつんざくような不協和音で、まるで巨大な風洞が一斉に吹き荒れているかのような感覚だった。
ブブゼラの音は鋭く、しかも持続的で、エリシアの耳を突き刺すような感覚が続いた。さらに、その音が集団で発せられるため、まるで全身を包み込むように、空気が震えるほどの振動を伴っていた。
「何が何だかわからない!」
エリシアは、ブブゼラの音の洪水に飲み込まれ、試合の展開や周りのサポーターの応援の仕方がさっぱりわからなかった。
耳を塞いでもその音が容赦なく響き続け、エリシアはただただ圧倒されるばかりだった。
エリシアは、ブブゼラの音に完全に圧倒されながらも、試合の状況を理解しようと必死に実況解説を聞こうとした。
しかし、スタジアム全体が発するその音の洪水は、実況解説の声を完全にかき消していた。
「ブオオオオオォオオオォオォ!」
「ブオブオブおおおおお!!!」
ブブゼラの音は、まるで巨大な風が吹き荒れるかのような音波で、エリシアの周囲の空気を激しく震わせた。
実況解説の声が微かに聞こえるものの、その声がブブゼラの音に飲み込まれてしまい、内容を理解するのは困難を極めた。
「ぶぶぶぼおおおおオブオボボボボ!」
ブブゼラの音が続く中、実況の声はかすかなノイズとなり、エリシアはその音の中で試合の展開を把握しようとした。
実況が何か重要なことを伝えているかもしれないが、その内容が全く聞き取れない。音の洪水が耳を打つ中、エリシアはただただ困惑するばかりだった。
「何を言っているのか、全くわからないのですわ!」
彼女は自分が試合の状況に全くついていけないことを痛感し、ブブゼラの音の中でただひたすらに場面を見守るしかなかった。周りの人々の興奮や応援の声もすべてブブゼラに押し流され、エリシアは完全に孤立したような気持ちになっていた。
エリシアは、周囲の喧騒の中で疲れた様子で巡回しているスタッフに近寄り、手を振ってビールとポテトを注文しようとした。
しかし、その時のスタジアム内のブブゼラの音は、まるで嵐のように周囲を圧倒していた。
「ブオオオオオオォ!!」
エリシアは声を張り上げた。
「すみません、ビールとポテトをお願いします!」
しかし、ブブゼラの音がその声をかき消し、スタッフには全く届かなかった。
「ブウウウウウウウぉおおおぉん!」
スタッフは完全にブブゼラの音に気を取られ、エリシアの声に反応することなく、そのまま通り過ぎてしまった。
エリシアはさらに大声で「ビールとポテト!」と叫んだが、その叫び声もただの雑音に埋もれてしまった。
「オオオオニイッポー!」
「オーニッポー!!おいおいおい!」
周囲の観客の声援や応援も一層激しくなり、エリシアの周りでは何が起こっているのか全く見当がつかない状態だった。
彼女は再びスタッフに近寄り、何度も呼びかけようとしたが、その度にブブゼラの音にかき消されてしまい、注文は一向に通らなかった。
「これではどうにもならないですわ!」
エリシアは、イライラしながらも、無駄に叫ぶのをやめて、そのままブブゼラの音に圧倒されながら座席に戻るしかなかった。彼女は場の混乱の中で、何もできずにただただ困惑するのみだった。
エリシアはスタジアムの一角に腰を下ろし、場の雰囲気に流されて適当にどちらかのチームを応援していた。
しかし、その周囲の騒ぎは一層激しさを増していた。
ブブゼラの音は、まるで耳をつんざくような連続的な轟音を放ち続けていた。
「ぶおおおおおおおお!!」
「ボボボボオオオオオォー」
その音は一瞬たりとも途切れることがなく、耳の奥にまで響き渡るほどの強烈さだった。
エリシアはその音に圧倒され、試合の展開を把握するどころか、何が起こっているのかさえ理解できない状態だった。
さらに、その騒音の中で、近くにいたフーリガンたちが突然暴れ始めた。彼らは誤審に腹を立てていたようで、怒りのままにスタジアム内で暴れ回っていた。
「クソ審判がぁ!!」
「ふざけんなよ!」
「なに見てんだバカ!」
フーリガンたちは席を飛び越え、周りの観客に迷惑をかけながら暴言を吐き、手近なものを叩きつけていた。
その激しい動きと怒声が、ブブゼラの音と相まって、場内の混乱は一層ひどくなっていった。
エリシアはその混乱の中で、声を出しても誰にも聞こえず、ただただ周囲の騒音とフーリガンたちの暴力的な行動に圧倒されていた。
彼女は何とか落ち着こうとするものの、周囲の状況は一向に改善せず、混乱と不安が募るばかりだった。
エリシアは、ようやく巡回スタッフからビールとポテトを手に入れ、少し安堵の息をついた。
彼女はビールを肘掛けのスペースに慎重に置き、ようやく手にした安らぎのひとときを味わおうとした。
しかし、その瞬間、ブブゼラの音がさらに激しさを増して、スタジアム全体に轟き渡った。
「ブオオオオオォオオオ!!」
「ブーブーブウブッブブブブ!」
音の振動が容赦なくエリシアの周囲を襲い、肘掛けのスペースが震えた。
ビールの瓶がその振動でグラグラと揺れ、やがて不安定になり、床に向かって滑り落ちてしまった。
「ピギャアぁああぁぁ!」
エリシアは慌てて手を伸ばすが、遅すぎた。ビールの瓶は床に落ちて砕け散り、中身が周囲に広がってしまった。冷たい液体が床に広がり、エリシアの新たなストレスの源が加わった。
ポテトも無事ではなかった。ビールの勢いでポテトも振り飛ばされ、スタジアムの床に散らばってしまった。彼女は肩を落とし、目の前の惨劇に呆然と立ち尽くすしかなかった。