かましたれ!エリシアちゃん!
勇者と闇の魔術師が、暗い森の奥深くにある静かな池の前で向き合っていた。勇者は剣を構え、鋭い目で闇の魔術師を睨みつける。
「これ以上、無意味な戦いを続けるつもりか?ここで終わりにしろ!」
しかし、闇の魔術師は不敵な笑みを浮かべ、杖を掲げた。声は低く、冷ややかだった。
「終わりだと?まだ始まってもいない。この池には恐るべき悪魔が潜んでいるのだ。今、そやつを呼び覚ましてやろう」
闇の魔術師が呪文を唱え始めると、周囲の空気が一変した。
空は急に曇り、暗い雲が低く垂れ込める。雷鳴が遠くから響き渡り、池の水面がざわざわと揺れ始めた。波紋が広がり、やがて水が渦を巻きながら中心に集まり、激しく飛沫をあげる。
勇者は息を呑み、後退した。水中から何かが現れる予兆に、背筋が凍る思いがした。
その時、池の水が爆発するように飛び散り、何者かがゆっくりと浮かび上がってきた。
それはエリシアだった。
彼女は上半身だけを水面から出し、湿った髪を垂らしながら、無表情で周囲を見回した。
闇の魔術師は不気味な期待を込めて声をかける。
「お前が……この池に潜む悪魔か?」
しかし、エリシアは彼を無視し、ぽつりと呟いた。
「私、紙ストローだけは許せませんの」
その瞬間、勇者も闇の魔術師も何が起こったのか理解できなかった。
エリシアは再び池に向かって沈んでいき、ぼこぼこと音を立てながら、水面に消えていった。
辺りは再び静寂に包まれた。雷鳴も止み、波立っていた水面も穏やかに戻った。勇者と闇の魔術師は、しばしその場に立ち尽くしていた。彼らの間には、言いようのない虚無感が漂っていた。
勇者がようやく口を開く。
「……なんだったんだ、今のは」
闇の魔術師はただ呆然と池を見つめ、答えなかった。




