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旗揚げゲーム

 エリシアは古の魔神との勝負に挑むことになった。


「ふん!我にできぬことなどない!」


 魔神は自信満々に宣言する。その表情に、エリシアはニヤリと笑い返した。




「言いましたわね、できぬことなどない、と。」




 その瞬間、エリシアの手のひらから発せられた魔法の力が、場の空気を一変させる。何も知らない魔神の目の前で、突如として旗揚げゲームが始まった。




「いきますわよ!」

「え、ちょ!」




 驚きの声を上げる魔神をよそに、エリシアはすかさず宣告する。


「スタート!」


「赤上げて!」


 魔神は戸惑いながらも、赤い旗を高く掲げた。エリシアはその様子を見て、心の中で小さく笑った。


「ふん……」


 魔神は、ただの人間の考えたくだらぬ遊びだと思っていた。だが、エリシアは知っていた。この遊びの裏には、魔神を翻弄するための巧妙な策略が隠されていることを。


「次は白上げて!」




 魔神は再び、言われるままに白い旗を掲げる。しかし、エリシアのニヤリとした笑みが彼にとっての悪夢の始まりであることを、まだ理解していなかった。




 「赤上げて!」




 魔神は一瞬戸惑った。


「え?」


 赤は最初に上げたはずだが、エリシアは平然と続けた。




「聞こえませんでしたの?——赤上げて。」




 ——我にできぬことなどない!


 魔神は誇り高く腕を伸ばし、赤い旗をさらに高く掲げる。


「ふん……容易い!」


 しかし、エリシアはその挑発を見逃さなかった。




「赤上げて。」

「はああぁ?」




 魔神は一瞬、エリシアの言葉に驚愕する。だが、彼女の目に宿る冷静な光を見て、魔神のプライドが刺激された。




「ですから、赤上げて。」




 ——この小童が!




 魔神は怒りを覚え、肩に力を入れて赤い旗をさらに高く上げた。彼の心の中には「人間ごときに、我が力を試されてたまるか」という思いが渦巻いていた。


「赤上げて!」


 その瞬間、エリシアは勝ち誇ったように微笑む。魔神は一体何をしているのか、今更その意図に気づくことはなかった。彼女の策略が、すでに彼を虜にしていたのだ。


 「ふんぬ!」


 魔神は踵を上げ、さらに赤い旗を高く掲げた。周囲の空気がピリピリと張り詰める。


 ——だが


「赤上げて!」




 今度は少しだけジャンプして、さらに赤い旗を高く掲げる。




「赤上げて!」




 今度は強めにジャンプ!




——ドシン!


地面が揺れる音が響く。魔神の目がギラリと光る。




「赤上げて!」

「この……!」




 魔神は怒りに駆られ、近くの岩に乗り上がると、さらに力強く赤い旗を持ち上げた。


「ふん!」


 彼の力強い姿は堂々としていたが、心の奥底ではエリシアの策略に翻弄されていることを感じ取っていた。周囲の風が吹き、彼女は冷静に魔神の様子を見守りながら、次なる指示を待っていた。エリシアの微笑みは、まるで勝利を確信しているかのようだった。




 「赤上げて!」


 魔神は近くの建物によじ登る。


「赤上げて!」


 彼は建物の上でジャンプした。


「赤上げて!」




 ムカつくので、彼は「世界一高い塔」へエリシアを連れて行った。




「はぁはぁ……」




「赤上げて!」

「くっそ!」




 ——その瞬間、魔神の怒りが頂点に達した。




 ——空中浮遊!




 エリシアの目の前で、魔神が浮遊し始める!彼の怒りが力となり、彼は空中で高く舞い上がった。


「赤上げて!」


 彼はさらに上昇し、周囲の景色が地上から遠ざかっていく。


「赤上げて!」


「さらに上昇!」


「赤上げて!」






 ——キラーン!






 その時、輝く光が魔神の体を包み込む。彼は高く飛び立ち、まるで星のように輝き始めた。


 そして、年月がたって、ある家でお母さんが子どもに絵本を読み聞かせていた。




「で、とうとう魔神はお星様になったとさ。」




 子どもは目を輝かせながら、その話に夢中になり、優しい母の声に包まれた。魔神の姿は遠い星となり、エリシアとの不思議な勝負の記憶は、空に輝く星たちの中に永遠に残るのだった。



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