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成敗致す

 川辺の薄暗い場所で、悪代官の手下たちは城の後継者を拉致し、闇の組織と取引の最中だった。


 後継者は縄でしっかりと縛られ、口には布がかませられている。背後には木々が不気味に揺れ、川のせせらぎだけが静かに響く。




「これで城の後継者はお前たちのもんだ。金は用意してるんだろうな?」




 手下の一人が薄笑いを浮かべ、闇の組織のメンバーに近づく。組織のリーダーは、黒いローブに身を包み、冷たい目で手下たちを見下ろしている。


「心配するな、報酬は用意している。だが、確かに後継者か確認させてもらおうか。」


 組織の一人が後継者の顔を覗き込み、確かに本物であることを確認すると、頷きながら袋を差し出した。袋には小判がぎっしり詰まっているようで、重みでずっしりと揺れている。


 川辺で行われるこの取引は、邪悪な企みが実行されようとしている暗示をはらんでいた。




 ——ガサッ!




 突然、茂みから音がして、手下たちが振り返る。


「何者だ!」

「怪しいやつ!」




 姿を現したのは、エリシアだった。




 彼女は底冷えするような殺意を漂わせながら、冷静に歩みを進める。川辺に佇む彼女の目には、どこか鋭い光が宿っていて、手下たちと闇の組織のメンバーは思わず身を固くする。


 エリシアはゆっくりと、しかし確実に距離を縮めていき、微かな微笑みを浮かべながら一行を見据える。緊張の糸がピンと張り詰めたその場に、彼女の一挙一動がまるで刃のように鋭く突き刺さっていた。




 エリシアは静かに口を開き、冷ややかに詠み上げる。




 一つ、人の世の生き血をすすり




 二つ、悪徳不埒な悪行三昧




 三つ、月の光は全てお見通し




 その言葉に、悪代官の手下たちは身震いする。


 エリシアの視線は月光を反射し、鋭く光っている。彼女の宣告に、手下たちは動揺しながら一歩後ずさりした。エリシアの存在が、月明かりの下で悪事を働く彼らに対する、静かな怒りそのものに見える。




 エリシアは冷酷な笑みを浮かべながら、さらに詠み上げる。




 四つ、三途の川はいささか冷たかろう




 五つ、来世は犬畜生に落ちる




 六つ、——がなくて




 七つ、明るい家族計画〜




 悪代官の手下たちは、その奇妙な詠みに怯え、完全に硬直してしまった。


 エリシアはひょうひょうとした態度で彼らを睨みつける。月光に照らされたその姿は、どこか滑稽でありながらも、一行を圧倒する凄まじい迫力があった。




 エリシアは、まさに悪代官の手下たちの眼前まで迫っていた。彼女は詠みの続きを思い出すように、少し迷いながらも口を開く。




 八つ、……、えっと八つ……あぁ、八橋……




 九つ、塩分の取りすぎは高血圧のもと〜




 手下たちは呆気に取られた表情でエリシアを見つめている。彼女はそれには気づかないふりで、詠みを締めくくる。




 十、終わりよければすべてよし




 そう告げると、エリシアは悪代官の手下たちの間を悠々と通り抜け、そのまま背を向けてどこかへ歩き去っていった。




 手下の一人が、茫然とした表情で呟いた。




「……何奴じゃ?」




 川辺には静寂が戻り、エリシアが去った後の緊張感がまだ漂っていた


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