エリシアの大冒険〜ハートフルストーリー〜

ちょ、ちょび髭えええええぇ！

　エリシアは冒険の途中、山間の小道を進んでいた。

　日が沈みかけた夕暮れの空の下、険しい岩肌と古びた木々に囲まれた一角で、騒がしい声が耳に入ってきた。彼女は足を止め、音のする方に目を向けた。

　そこには対立する二つの山賊団が、激しい口論を繰り広げている姿が見えた。

　一方のグループはごつい体格の大男たちが中心となり、もう一方は若い戦士たちが挑発的な態度を取っていた。言葉の応酬が激しさを増し、周囲の緊張感が高まっている。

　大男の一人が、眼鏡をかけた青年を指さしながら大声で叫んだ。

「お前のヒゲ野郎は、所詮時代に取り残された敗北者だなぁ……」

　青年は怒りに満ちた表情で、一歩前に踏み出しながら声を張り上げた。

「取り消せ！今のセリフ！」

　エリシアはこの挑発の意味を理解し、心の中でため息をついた。この挑発がどれだけ危険で、どのような結末を迎えるかが明白だった。

　エリシアはすぐに駆け出し、対立する山賊たちの間に割って入った。

　大男の挑発に対し、青年が感情的になって突進しようとしているのを見て、彼女はすぐに行動を起こさなければならないと感じた。

「ちょ、安い挑発に乗ってはいけませんの！」

　エリシアは青年の肩を掴み、彼を引き離そうとした。しかし、青年は激昂していて、エリシアの手を振り払おうとする。

「はなせ！はなせこら！」

　青年は力強く叫びながら、大男に向かって突進しようとする。

　しかし、その動きは明らかに感情に流されており、冷静さを欠いていた。エリシアは青年の腕をしっかりと掴み、そのまま彼を引き戻そうと必死になった。

「そんなことで自分を危険にさらしてはいけませんの！冷静になりなさい！」

　周囲の山賊たちも、エリシアの突然の介入に驚きながらも、彼女の言葉に耳を傾け始めた。大男も、エリシアの意図を察してか、少しだけ冷静さを取り戻した様子を見せた。

　エリシアはその隙に、青年の目を真剣に見つめながら語りかけた。

「あなたの命はそんなことで失われるべきではありませんの。冷静になって、状況を見つめ直すべきですわ。」

　青年はエリシアの言葉を受け、少しずつその怒りを鎮め始めた。彼の周囲には、いくぶん緊張がほぐれ、空気が変わりつつあった。

　青年が納得し、大男に背を向けた時、大男の冷笑が再び響いた。

「ふん！俺の挑発には乗らなかったか。だが、お前のボスのチョビひげは所詮敗北者であることには変わらんぞ！」

　大男の言葉に青年が反応した。彼は振り向き、怒りに燃えた目で大男を睨みつけた。

「あぁん！？お前、今なんか言ったか！？」

　青年の声は険しく、再び感情が爆発しそうな気配が漂った。エリシアは状況を見て、再び慌てて青年の肩を掴み、その前に立ちはだかった。

「ちょ、待ちなさい！また挑発に乗ってどうするのですわ！」

　エリシアは青年の目を真剣に見つめ、必死に抑え込もうとする。

「あなたがこんなことで感情的になっても、状況は何も変わりませんの。冷静に、そして賢く対処するべきですわ。」

　青年はエリシアの言葉に少し動揺しながらも、彼女の手を振り払うのではなく、冷静さを取り戻そうとする努力を始めた。大男は挑発的に笑いながら、状況を観察していたが、エリシアの介入に対して少しずつ興味を失っていった様子だった。

　エリシアは再び深呼吸し、青年に向かって穏やかに話しかけた。

「もう一度言いますわ。感情的になっては、かえって自分を危険にさらすだけですの。ここは冷静に状況を見極めるべきですわ。」

　青年はエリシアの助言を受け入れ、少しずつ怒りを収め、視線を大男から外して周囲の状況を見つめるようになった。

　青年が仲間たちに向かって強い口調で言った。

「こんなやつ相手にするな！」

　しかし、その言葉が大男の挑発を引き出してしまった。

「だがチョビひげは所詮、時代遅れの生臭野郎の水虫インキンたむしの敗北者じゃのう……」

　大男の侮辱が、青年の怒りを再び引き起こした。青年は顔を真っ赤にして叫んだ。

「て、てんめぇ……やってやるよ！」

　エリシアは再び慌てて青年の前に飛び出し、両手を広げて阻止しようとした。

「や、やめるのですわあああぁ！いくらあなたのボスがチョビひげで足が臭くてヌードル亭メンキチみたいなクソキモオタクのような薄汚れた敗北者の中の敗北者のさらにその下の下の腐った汚いゴブリンだったとしても——」

　エリシアの言葉は少し混乱していたが、彼女の必死さが伝わった。周囲の山賊たちはその場の雰囲気に気圧され、青年はエリシアの制止を受け入れた。

「…わ、わかったよ。言い過ぎた。」

　青年は肩を落として言った。エリシアは安堵のため息をつき、冷静さを取り戻そうと努めた。

「それが賢明ですわ。無駄な争いは避けるべきですの。」

　エリシアは再び青年を見守り、大男に向かって冷静な口調で言った。

「あなたも、挑発に乗るのは無駄ですわ。どちらも冷静に、理性的に行動するべきですわ。」

　大男は少しばかりの驚きと共にエリシアを見たが、怒りを抑え込むように息を吐き、何も言わずにその場を離れた。青年も仲間たちと共にその場を離れ、エリシアは少し安心した表情で彼らの後ろ姿を見守った。

　大男は冷静な態度を取っていたエリシアに対し、再び挑発的な言葉を投げかけた。

「なかなか冷静だな。だがお前のボスのチョビひげは、」

　エリシアはその言葉を聞き、再びイラッとした表情を見せた。

「な、何ですのそのくだらない挑発は！？」

　大男はニヤリと笑い、冷たい視線をエリシアに向けた。

「だがな、チョビひげは時代遅れの化石だ。あいつがいかに古臭いか、我々にはもう十分にわかっているんだ。」

　エリシアは怒りのあまり、顔が真っ赤になった。彼女は拳を握り締めて、大男を睨みつけた。

「いい加減にしなさい！あなたの挑発には乗らないわよ！さっさとどこかへ行って、私たちに関わらないでください！」

　エリシアはその場に立ち尽くし、怒りを抑えられずにいた。

　しかし、そんなエリシアに対して青年が急いで駆け寄り、必死に制止しようとする。

「やめろ！こんな安い挑発に乗るな！」

　エリシアはその声に振り向き、驚いた表情を浮かべた。

「でも、あの男の言葉が気に入らないですわ！」

　青年は冷静にエリシアを見つめながら、力強く言った。

「挑発に乗っても、ただ無駄な争いを生むだけだ。ああいう奴らはただの煽り屋なんだ。君が冷静でいることで、彼らの意図を打ち破ることができるんだ。」

　エリシアは青年の言葉を聞き、少し考え込んだ。やがて、彼女は深く息をついて、頷いた。

「わ、わかりましたわ。冷静さを保つことが重要ですね。」

　青年は安心した様子で微笑みながら、エリシアの肩に軽く手を置いた。

　大男がその挑発を繰り返しながら無情に笑っていた。彼は再び口を開いた。

「ふん、なかなか威勢のいい女だな。じゃがそこにいる青年のボスのちょび髭は所詮時代遅れの賞味期限切れの男よのう。」

　青年はその言葉に激しく反応し、顔を真っ赤にして立ち上がった。

「何だとこら！」

　青年は拳を振り上げ、怒りに震えながら大男に突っかかろうとした。エリシアはまたもや彼を引き止めようと必死で手を伸ばす。

「待って！これ以上挑発に乗るのは無駄ですわ！」

　だが、青年はすでに大男に向かって歩みを進めていた。エリシアは焦りながら声を張り上げる。

「お願いですから！冷静でいることが大切ですわ！彼の挑発に反応しても、結局は自分たちが損をするだけです！」

　青年はエリシアの言葉を振り返り、一瞬躊躇するも、心の中で葛藤が渦巻いていた。しかし、最終的にはエリシアの説得に応じ、ゆっくりと拳を下ろした。

「ふん、わかったわい。今回はお前の言う通りにしてやる。」

　大男は冷ややかな笑みを浮かべながらも、青年が引き下がるのを見て満足げな表情を浮かべた。そして、ゆっくりとその場を立ち去った。

　青年はエリシアに向かって、小さく息をついた。

「ありがとう、エリシアさん。君のおかげで無駄な争いを避けることができた。」

　エリシアはほっとした表情で微笑み、青年の肩に軽く手を置いた。

「いえ、あなたが冷静になってくれたおかげですわ。これからも気を付けてくださいね。」

　こうして、一行は再び旅を続けることとなり、無用な争いを避けながら目的地へと向かって歩き出した。