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第8話 城南家の人々


 夜の食事には、僕たち二人と晄矢さんの妹、やはり弁護士の城南陽菜あきなさんが同席した。

 多忙を極める彼らは滅多に食事を共にしないらしい。今日は僕が来たということで、陽菜さんは仕事を切り上げてくれたのだ。晄矢さんに似て、彫りの深い美人。やはりハーフっぽい。


 と言うか、晄矢さんのお母さん自体がカナダ人とのハーフだった。壁に掛かった家族写真を見れば、ブロンドの髪を持つ彼女がどれほど美しかったはわかる。だが、10年前、癌で亡くなったと晄矢さんは言った。


「だからまあ、親父が俺たちに結婚を急がせるのはわかる気がするけどね。母さんの分も自分がやらなきゃという謎の焦りがあるみたいだ」

「そうね。でも、兄弟そろって、父さんの思わぬ相手を連れてきたからこっちも風当たりがきついわ」


 美人なうえに聡明な妹さんはずけずけとものを言う。彼女も良く雑誌やテレビに登場しているらしいが、あいにく僕は知らなかった。


「すみません」

「あら、あなたが謝る必要はないわ。それに私、気づいていたもの」

「何をだ」


 生意気な妹に晄矢さんが突っ込む。


「晄兄さんがゲイだってことだよー! あんなにモテるのに全然彼女もいなかったしね。輝兄さんの年上好きもだけど、二人とも性癖駄々洩れなのよっ」


 な、なにっ! 僕は思わず晄矢さんの顔を見た。そんなことは聞いてない。


「なにをわかったふうを言うか……」


 晄矢さんは何食わぬ顔で返している。ううむ。どっちを信じたらいいんだ。




 食後の珈琲を飲んでいたところで、家の中の空気が変わった。立花さんの合図でお手伝いさんたちがぱたぱたと玄関に走る。


「親父、帰ってきたな。涼、書斎に行くぞ」

「は、はい」


 いよいよだ。お父さんである、城南祐矢さんに挨拶をしなくてはいけない。


「頑張ってねえ」


 背後で手を振る陽菜さん。お気楽がうらやましいよ。


「晄矢さん、相模原さん、祐矢様がお呼びです」


 立花さんが階段のところから僕らを呼んだ。僕は緊張で背筋が伸びた。


「大丈夫だから」


 でも、彼がそっと手を握ってくれたおかげで気持ちが少し落ち着いた。


「父さん、入ります」

「ああ」


 祐矢氏の部屋は二階の、僕らの部屋とは反対側の奥にあった。晄矢さんからは、自分とあまりよそよそしくしないようにと言われてるけど、昨日会ったばかりなのにそんな器用なことできるだろうか。


 目をつぶるようにして部屋に入る。目の前の革張りのソファーに踏ん反りかえる、城南祐矢氏の姿が見えた。

 部屋着なのか、重厚な柄ガウンを着ている。どこかのマフィアの親分のようだ。そんな彼は胡散臭そうな表情で僕を見上げている。口ひげの下の唇を片方だけ捩じ上げて。







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