表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/103

第77話 刺激が強すぎる


 バスルームに連れ込まれて? 十数分。僕はドアの向こうを気にしてたのもつかの間、すぐに晄矢さんの責めに陥落してしまった。

 今、目くるめく瞬間の余韻が全身を包んでる。僕は壁に凭れ大きく息を吐いた。


「どうだった?」


 目の前に、いたずらっ子のような顔をした晄矢さんがいる。どうだったって、どう言えばいいんだよ。


「し……刺激が強すぎるよ……」

「え? ははっ。確かに」


 晄矢さんは鏡の前、慣れた手つきで着衣や髪の乱れを直すと、僕に場所を譲ってくれた。僕もそそくさと恰好を元に戻す。

 今日はスーツでなくて良かったかも。でも、晄矢さんはスーツでも平気なのね。上着はいつの間にか脱いでた。


 バスルームにはハンガーラックもあるから、着替えも出来るようになってる。なんか、こういうことのためにあるのかと疑ってしまうよ。


「これも社会勉強だな」

「こんな勉強はいらないよっ」


 いつだったか、晄矢さんのお父さん、祐矢氏に言われたことがあったっけ。『いろいろ勉強してもらわんとな』。まさかこういうことも含まれるんじゃないよね?


「ああ、すっきりしたな。じゃ、仕事するか」


 ほんとにスッキリしたような笑顔だ。僅か20分足らずのことでも僕はものすごく疲れた。経験値の差なんだろうか。思うところあったけど、仕事はしなくては。ふう、と息を吐いて執務室に戻った。



「今日は秘書さんお休みなんだね」

「そう。ま、別のパートナーの秘書が掛けもってくれるから平気だ」


 晄矢さんがどすんと音を鳴らして椅子に座る。僕用の事務机はその隣にまだあった。なんだかやっぱり嬉しい。

 その後は気だるさを感じる暇もなく、次から次へと出されるデータ処理の作業に、暗くなるまで忙殺された。




「今日はここまでにしておこうか」


 気が付くと、もう窓の外は夜の世界だ。周りのビルや車のライトが綺麗。


「このあと、なにもないだろ? どう、我が家へ来ないか?」


 晄矢さんは、サクサクと事務机の上を片づけ、上着を着こんでる。


「え? マジで言ってる?」


 我が家、つまり城南家に行くってことだ。僕はあの日、誰にも挨拶せず、あの家を出てしまった。祐矢氏や陽菜さんはもちろん、立花さんや三条さん、二宮さんにだってあんなにお世話になったのに……。


 ――――ものすごく行きづらい。


「マジさ。涼が来るとき電話してたの。あれ、立花だよ。夕食準備しておいてくれって頼んでおいた」

「ええっ!」


 そうか。『来ないか?』なんて誘ってる風で実は拒否できないようになってるんだ。


「そうだね……こればっかりは逃げててはダメだね」


 ちゃんと顔を合わせてお詫びとお礼を言おう。敷居を高くしてしまった城南邸だけど、機会を与えてもらったことに感謝するべきだな。


 ――――それに、シェフの料理食べるの、やっぱり嬉しい!


 絶賛節約料理の日々、僕の正直な気持ちだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ