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第5話 城南国際法律事務所


 男の名前は『城南晄矢じょうなんみつや』。城南国際法律事務所(城南法律事務所と略されることも多い)の副所長だ。

 法律関係者ならだれでも知ってる城南法律事務所は、関東でも屈指の大手法律事務所だ。法曹界でも名だたる弁護士が何十名も所属している。

 所長の城南祐矢は彼の父親で、しょっちゅうテレビのコメンテーター等でご活躍だ。そういえば、どことなく似ている。


「それで、どうして恋人の……しかも相手が男性の……フリが必要なんですか?」


 僕は結局、大学近くのカフェで話を聞くことになった。お金に釣られたんじゃない! と言いたいところだが、がっつり釣られた。美味しい話には裏があると、ばあちゃんに言われてたのに。


「俺は次男でね。法律事務所は兄の輝矢てるやが継ぐはずだったんだ。ところが、あいつったらある女性と駆け落ちしちゃってさ」

「はあ……」


 長男、輝矢さんのお相手はバツイチ子持ちの人だったらしい。晄矢さんはお相手はいい人だし賛成してたんだけど、父親の祐矢氏は許さなかった。


「駆け落ちって言っても、親父の気持ちが収まるまでの冷却期間のつもりなんだよ。いずれ親父も折れるって俺たちは踏んでた」


 ところがだ。祐矢氏は次男である晄矢さんに跡を継がせると息まいている。あげく、見合いしろとどこかのご令嬢の写真を山のように持ってくるのだという。


「俺、まだ28だよ? 大体、兄貴の代わりに親父のお気に入りと結婚するなんて絶対ごめんだ」


 まあ、それが嫌でお兄さんも反発しちゃったんだろうけど。


「でも、どうして僕……男となんですか?」

「女なら、ほんとに結婚させられるじゃないか。しかも、女性にとってもこんな美味しい話はない。容姿端麗、性格もよくて金持ちの俺と、結婚したいと願うだろ? フリなんて無理な話だ」

「はあ……そうですか」


 自分で容姿端麗、性格もいいとか言うんだ。前者はともかく、後者については僕は何も言えない。


「ま、それだけじゃないけど……」

「え?」

「あ、いや、いいんだ。で、どうかな。君は何もしなくていいんだけど、それでは嫌だというなら、支障がない範囲で俺の仕事を手伝ってくれればいい。最初は来客のお茶出しだっていいんだ。司法試験の勉強も思う存分やれるし、絶対損な話じゃない」


 榊教授も『悪い話じゃない』って書いてあったな……。確かにそうかも。


「期間も兄貴たちが戻ってこれるまでだよ。親父も俺がゲイだって思えばあきらめもつくだろうし」


 ――――うーん。聞けば聞くほど悪くない話だよ……。居酒屋でバイトしてた時は、睡眠時間を削って勉強してた。苦にはならなかったけど……。期間も一ヶ月くらいかな。


 すぐにはバイト先見つからないかもだし、ここで短期間でもしっかり稼げば助かるよな。それに勉強時間が取れるのはありがたい。僕は決断した。


「わかりました」

「やってくれる?! 良かったぁ。あ、ベッドはダブルベッドだからよろしく」


 僕の決意を覆す、最後の爆弾発言を晄矢さんは放った。





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