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第4話 恋人募集中?


「失礼します」


 どう考えても怪しい。夢を見たからじゃないけど、初対面の僕に住み込みの仕事を持ってくるなんておかしすぎる。僕は一礼してその場を去ろうとした。


「あ、待って待って。その反応は重々理解できるけど慌てないでくれ。ほら、これを見て。教授から推薦されたんだよ」


 男はなにやら紙を見せる。どうやらメールを印刷したものみたいだ。


 ――――TO Mr.JYONAN


 彼の名前はじょなん? じょうなんかな。その下のFROMの位置に、知った名前があった。


「榊教授……」


僕が取っている法律学の教授だ。『貴殿の依頼に対する返答』というタイトルのもと、色々お世話になってる礼とかが続く。そして肝心な箇所。


『貴殿の言われる条件では、二年生の相模原涼君が一番良いと思う。彼は優秀なのだけど、家庭の都合で生活に苦労している。君の助けがあれば、彼にも悪い話ではないだろう』


 とあった。うーむ……確かにアドレスはドメインが大学のだから間違いはなさそうだ。無下に断ることはないのかも。僕もこんな状況だし。


「それなら……話だけは伺います……仕事内容はどのようなことでしょう。榊教授のメールにあるように、僕はまだ二年生で。法律のお仕事は……」


 教授の紹介なんだから、法律事務所かなにかかも。それは僕にとってもやってみたい仕事だけど、さすがに役に立つとは思えない。


「ああ、いやいや。確かにうちは法律事務所なんだけど、キャリアは問題じゃないんだ」

「と言うと……」


 でも法律事務所なんだ。それならお茶くみだって嬉しいよ! 僕は思わず身を乗り出した。


「俺の恋人になって欲しいんだ」


 一瞬にして僕のテンションはだだ下がった。何を言ってるんだ、こいつは。しかも教授はこの職種も知って僕を推薦したのか? 頭がおかしいとしか言えないっ! 大体、百歩譲ってそういう依頼があったとしても、法学部には女子学生がいるだろうがっ!


「失礼します」


 聞くまでもなかった。時間の無駄だ。僕は彼の横をさっと通り抜けようと歩を進めた。


「待って……君を助けるためにも悪い話じゃないはずだ」


 男は僕の腕を取る。力強く引かれ、僕はぎょっとした。


「な、僕に何をさせるつもりか知りませんが、僕は体を売るつもりはありませんよ!」

「あ……ああ。いや、そんなつもりは……。あ、でもそうか」


 男は掴んだ手を少し緩め、口角を上げる。その笑顔は屈託がなくて、思わず騙されそうになるよ。


「フリでいいんだよ」

「フリ?」

「事情は後で話す。日給2万円。住み込みでどうかな。もちろん君が興味あるなら、法律事務所の仕事も手伝ってくれたら助かる」


 日給2万円!? しかも住み込み!? 

 居酒屋のバイト四日分だ。法律事務所の仕事は給料外だから、実質見学みたいなものか。いや、美味しすぎないか。でもフリってどういうことだろう。話を聞いてみるだけならいいかな。


「あ、でも一つだけ条件があるんだ」

「なんでしょう?」


 既に僕は聞く体制になっている。


「寝室は一緒だ」


 僕は何も言わず、腕を振り払った。




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